■ 第140回直木賞に天童荒太氏の『悼む人』と山本兼一氏の『利休にたずねよ』の2作が決まりました。『利休にたずねよ』は読んでみたい作品です。
歴史に疎いので歴史小説を読むことはあまりありません。例外的に吉村昭氏の作品はかなり読みましたが、教科書に載るような人物が主人公でない作品が多い、というのがその理由です。
でも、日本の伝統美について少し勉強してみようと思うと、どうしても歴史に入り込まざるをえないのですが、歴史の教科書のような本より小説の方が面白いと思います。
この小説がどんな内容なのか、利休の美意識をどのように捉えているのかなどは分かりませんが、とにかく近々読んでみようと思います。
小説の方が面白い・・・
■ 建築ファンとして「新建築」は目を通さないわけにはいかない雑誌です。巻末には前号に掲載された建築作品についての4人の建築家による評論、月評が収録されています。
今月号から林昌二さんがトップバターに座りました(原広司さんのピンチヒッターではないと思います)。林さんが最初に取り上げているのは前号の表紙を飾った妹島和世さんの集合住宅です。
賃家では部屋が四角いことが大原則、と林さんは指摘し、この集合住宅の出現は「革命的な事件」と述べています。**妹島ブランドだからこその仕事ではあるに違いないのですが、それにしても・・・。**と、最後は私がよく使う「・・・」で結んでいます。林さんのこの作品の評価が伝わってきます。
次に林さんが取り上げたのは構造家川口衛さんの「オリンピック建築の夢と危うさ」と題する特別記事。
川口さんは前号で北京オリンピックの「鳥の巣」を取り上げ、構造的に不合理なシステムだと指摘しています。
建築的に外周も内周も閉じた境界を形成しているから、立体性を発揮できるような軸力系の構造で屋根を形成することが自然な手法なのに、曲げを主体とした構造効率の悪いシステムを選択している。その結果、膨大な資材とエネルギーを浪費する建築になった、と指摘しているのです。鳥の巣に使われた鉄骨量42,000トン、確かに膨大な量です。
林さんは鳥の巣について**何らかの理由で鉄材を保存したかったのかもしれない気もしてきます。**とし、続けて、**もう相当昔の話になるのですが、明らかに余計な量の煉瓦を積み上げた塀を見て、理由を質したところ、次の工事に使うための材料を塀という形で備蓄してあると教えられた覚えがあったのです。**と書いています。
こう書かれると、しばらく「?」となりますが、そのあと「!」となるから不思議です。本気なのか、おふざけなのかよく分かりませんが、いかにも林さんらしい見解です。
「新建築」0901号のどの作品をどのように評するのか、次号の林さんの月評が楽しみです。