■ 安部公房の『箱男』新潮社文庫。
単行本で読み、文庫本で読み、そして今回また文庫で読み終えた。安部公房の前衛的な実験小説といったらいいのか、なかなか解釈が難しい。
『砂の女』は要するに人間が存在することとはどういうことなのか、という問いかけだったように思う。最後のページに「不在者仁木順平を失踪者とする」という家庭裁判所の審判書が載っているのが印象的だった。
『箱男』のテーマもこれとそう差異はないのではないか、と思う。箱をかぶることで自己を消し去るという、実験的行為。他者との違いは何に因るのか・・・。他者と入れ替わるということは可能なのか。自己の存在を規定(アイデンティファイ)するものは何か・・・。
表向きはエロティックな小説ではあるが、読者に問うているテーマは難しい・・・。
さて次は『方舟さくら丸』新潮文庫 再読。