■ 昨晩(4日)放送されたこの番組を観た。
「日本の美とは何かを語りかける建築があります。桂離宮。単純にして明快。しかし、そこに奥深い精神性があると世界から称えられてきました。」というナレーションから番組は始まった。
京都の西を流れる桂川のほとりにある桂離宮。空からその全景がまず映し出された。続いて茅葺の御幸門を潜って小石を敷き詰めた「あられこぼし」の御幸道を進むシーン。御殿の前庭にアプローチした後、古書院の中へ・・・。簡素で慎ましやかな佇まい。そして池に向かって張り出した月見台へ。広縁からさらに外につくられた月見台、丸竹を敷き並べただけのつくり。
月見台に手摺が無いのは庭との間に一切の結界を置きたくない、書院の生活空間と庭とを直結したいという気持ちの表れだという(中村昌生氏の解説)。
月の名所、桂の地名は中国の故事「月桂」に因んだもの。桂離宮は月見のための壮大な装置。特別に撮影を許可されたという月の夜の桂。
茶屋の月波楼、天井を張らない開放的な空間。池の反射光が天井に揺らぐ。桂離宮の中で最初に月を楽しめる場所。秋、十月。月波楼から眺めた満月、なるほど美しい。
古書院の月見台、その正面でとらえる満月。池の中にも月が映り、ふたつの月を楽しめる贅沢な眺め。深夜、浮月と名付けられた手水鉢に南天の月が浮かぶ。
回遊式庭園に配された茶屋。舟で繋ぐシークエンス。
茶屋のひとつ、笑意軒。口の間の正面軒下の小壁、六連の丸い下地窓。奥に見える中の間、正面に二間の障子窓。窓下の低い腰壁をシャープに斜めに分割する金箔と南蛮渡来のビロード。カメラはゆっくりそこに向かう。
窓の外に望む豊かな自然。ひとつの画面に組み合わされた大胆で斬新な意匠と風景、抽象と自然の融合。
さらに番組は桂の魅力を紹介していく・・・。
王朝文化の復興。江戸時代初期、武家政権の確立した時期と重なる桂離宮の創建。八条宮初代智仁親王と第二代智忠親王が優れた美意識によって桂に表現したもの、それは公家としての「矜持」だと私は思う。
NHKスペシャル「桂離宮 知られざる月の館」