透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

ブックレビュー 0905

2009-06-02 | A ブックレビュー



 5月に読んだ本のレビュー。

間宮林蔵が樺太が島であることを確認してから、ちょうど20年後、播隆上人は槍ヶ岳初登頂を果たした。二人はほぼ同時代を生きた偉人。

基本的に読む本は買っている。図書館を利用することはまずないし、人から本を借りて読むこともない。が、5月は友人から借りて読んだ本が3冊。

『プリンセス・トヨトミ』万城目 学
『阪急電車』有川 浩
『恋文の技術』森見登美彦

3人とも今人気の作家だが、貸してもらわなければ、読む機会はなかった、と思う。友人に感謝しなくては。

その友人に「『ぼくらの時代』読みました。『グイン・サーガ』あります!」と言われた。「Mさん、あなたはすごい! また僕が読みそうにない本を「押し付けて」下さい」

さて、次は『ハチはなぜ大量死したのか』だ。


理由

2009-06-02 | A あれこれ

『槍ヶ岳開山』新田次郎/文春文庫 を読み終えた。

百姓一揆にまきこまれて、誤って愛妻のおはまを殺してしまった(その真相は単純ではない。物語の最後、ある人物によって死の床にある播隆に真相がドラマチックに語られている。)ひとりの男が、一生をかけて亡き妻に許しを請う物語。 

**おはまだと播隆は思った。おはまの最期の姿が雲の中に再現されたのではなく、おはまが最期の姿のままでそこに現れたのだと思った。(かなり中略)光を失せはじめていた光輪は播隆の名号に答えるかの如く再び明るさを増したけれど、一度崩れかかったおはまの姿勢を元どおりにすることはできなかった。七色の虹の光輪は急激に色あせていって、その中のおはまは一塊の陰影になり、風に乗ったような速さで遠のいていった。** 

**槍ヶ岳がおはまの消えた方向に浮かんでいた。虹の光輪に乗って、おはまは槍ヶ岳の方に去ったのだと播隆は思った。**

いまで言うブロッケン現象だが、この神秘的な体験によって播隆はおはまに会うために槍ヶ岳の頂上をめざした・・・。

『利休にたずねよ』では千利休がひとりの女性のために生涯美を求め続けたとされている。そしてこの小説では播隆は亡き愛妻に生涯許しを請い続け、それが槍ヶ岳開山の個人的な動機になっていた。

男ってそういう生き物なのだな・・・。