透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

ドイツのことわざ

2009-06-21 | A あれこれ

古い建物のない町は思い出のない人間と同じだ

「タウン情報」というタブロイド版のローカル新聞があります。週3回発行のこの新聞のコラム担当者の一人に安曇野ちひろ美術館と長野県信濃美術館の館長を兼務している松本猛さんがいます。

先日掲載された「南ドイツの旅」と題するコラムで松本さんは先月(5月)末から今月のはじめにかけての旅行(ドイツ南部に東山魁夷の取材地をトレースすることが目的だったそうです)について書いていました。

およそ40年前、東山魁夷はドイツを旅して数々の名作を描いています。そのうちの何点かを信濃美術館の東山魁夷館で観ることができます(油絵も何点かあって大変興味深いです。全て油絵だったかな?)。

松本さんは、魁夷の取材地の多くを特定することができたそうです。魁夷の絵と符合するポイントが見つかったんですね。

40年前と景観がほとんど変わっていない、いや、魁夷が学生時代に訪れた75年前と変わっていない、ということが文中に書かれています。

第二次世界大戦で破壊された中世の町をドイツの人々が見事に復元したことはよく知られています。

ドイツには「古い建物のない町は思い出のない人間と同じだ」ということわざがあるそうですが(*1)、このような意識を持っているドイツの人々にしてみれば、先のことは当たり前なのかも知れません。日本では考えられないことです。伊勢神宮の式年遷宮、あれは例外的な「儀式」でしょう。



時計の針がありません。ちゃんと保管されているんでしょうか、気になります。

東京駅前の東京中央郵便局の保存問題にについて鳩山前大臣は取り壊すことは「トキを焼き鳥にして食っちゃうようなものだ」と発言しました。「それより剥製にして残すほうがいいだろう」と。

この発言に対してある政治評論家が「あんなものはカラス、剥製にする価値などない」という趣旨の反論をしていました。この建築の魅力が分かりにくいことも確かだとは思いますが。

古い建築を何のためらいもなく次から次へと取り壊してしまう、都市を記憶喪失状態にしてしまう・・・。

悲しいことです。


追記:*1 どうもこれは画家の東山魁夷の言葉のようです。