透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

雨の日に阿修羅を語り合う

2009-06-06 | A あれこれ

「こんにちは。お久ぶりです」
「元気そうだね」

  

「そのファション、最近流行っているけどなんていうの」
「え?」
「胸元に下着がのぞいている・・・」
「え?これですか。知らない、なんていうのかな」



「この記事見た?」

「ええ。興福寺の中金堂の再建が始まってるんですね。基壇が完成したってありますね。写真に撮ったんですか? あ、ブログ? ということはこの会話もアップするんですか」
「そう」
「別に、いいですけど」
「この模型、阿修羅展で見たけれど、木造だからね、材料がそろうのかな。柱は相当太いから」
「難しいんですか?」
「国内になければ台湾桧を使うとか。でもどうするんだろうね」

「国内産でないとなんだかね・・・

「そうだよね。ところでKちゃん、仏像がいまブームらしいけど、好き?」
「U1さんのブログを読んでいて私も仏像ファンになりました、なんて♪」
「んな、わけない」
「実は前から好きだったんです。友だちと京都とか行くでしょ。結構時間をかけて仏像観ますよ」
「そうか、Kちゃん、そういう雰囲気あるよね。ちょっと古風というか落ち着いた雰囲気。和服が似合いそう・・・」
「そうですか、前もそう言われましたけど、着たことないです。ところで阿修羅が安置されていた中金堂って7回も焼失してるんですね」
「そう。この記事を読むまで知らなかったけど。失火すると燃えるよね。木造だから」

「阿修羅はずっと無事だったってことですよね」
「そうだね。阿修羅像って内部が空洞だから、軽いんだね。だから火事の時は抱きかかえてお堂から運び出したんじゃないかな。6本の腕があるけれど、そのうち2本が欠落している写真を雑誌で見たけれど、明治時代に修理されるまでは、そんな姿だったんだね」
「え? 腕が欠損していたんですね。知らなかった・・・。細いし折れやすかったんでしょうか。仏像を特集した雑誌に出てましたけど、阿修羅って粘土で形を作っておいて、麻布を漆で張り重ねていくんですね」
「詳しいね」
「ええ。阿修羅がどのようにつくられたのか興味がありますから。でね、乾燥させてから中の粘土を背中からかき出して、中に木の心材を入れて補強するんです。顔の表情なんかは、木屑と漆を混ぜたものを塗ってつくるんですね」

「で、何の木の木屑だったか知ってる?」
「え~、知りません。何の木なんですか」
「しばらく前に、テレビで阿修羅を当時の技法でつくるところを観たけれど・・・。で、何の木屑か分からなくていろいろつくってみるところをやってたけど、たしか桜とか桧とか。でも何の木だったか忘れた。聞いたことのない木だったな」
「ええ、ちゃんと覚えていて教えて下さいよ」

「無理無理、覚えているなんて。ところでさ、阿修羅って修羅場って言葉の語源になっているんだね」
「知ってます。阿修羅ってもともと戦いを好む悪神だったんですよね。それで、繰り返し戦争したあと、釈迦の教えに帰依して守護神になった、って。そういう、なんていうのか経歴?があの阿修羅の人気の秘密かも」

「かわいい!とか、かっこいい!ってだけじゃなくて? でもね、Kちゃんとこうして阿修羅のことを話すなんて、ね」
意外ですか・・・」
「僕の方は仏像に興味をもったのは最近だからね。手にいろんなものを持っているとか、手の形にも意味があるなんてこと、知らなかった・・・。如来、菩薩、明王、それから・・・天か。そんな種類があることすら分かっていなかった。いろんな仏像がごちゃごちゃあるな、と思っていただけ。それぞれ役割があるんだね。今まで京都に行っても、仏像をゆっくり観るなんてことしたことなかったし」
「建築とか、庭とか、路地とか・・・?」
「そう。仏像は抜けてた」

「U1さん、ときどきバーに行ってるみたいですけど、私を誘ってくれないじゃないですか。今度行きましょうよ。居酒屋で飲むのも好きですけど」
「居酒屋では何回か飲んだよね、みんなで。じゃ、今度バーに行こう。この後、下の書店で本を探そう」
「村上春樹の新刊『1Q84』が話題になってるそうですね、読んでみようかな」