■ 年末年始の休みに本を数冊読んだ。
自分史を書いて自費出版することが流行っているようだが、この『どくとるマンボウ回想記』日本経済新聞社は北杜夫が来し方をふり返ってまとめたもの。「出生」、「幼少期」、「父・斎藤茂吉」、「小学校入学」・・・。簡潔な文章で綴られている。
何枚か写真も載っている。
「祖父が建てた青山脳病院」の写真は今読んでいる『楡家の人びと』に描かれている「楡脳病院」の描写に一致している。カラコルム登山隊に加わった時の写真も載っている。『どくとるマンボウ航海記』は北杜夫を一躍人気作家にした作品だが、この作品の元となった水産庁のマグロ調査船で航海をした時の写真も載っている。遠藤周作とのツーショット、阿川弘之とのツーショット、佐藤愛子とのツーショット。埴谷雄高と奥野健男と一緒に写っている写真。孫を抱く北杜夫などなど。
自作の評価も載っていて興味深い。
**カラコルム登山隊にドクターとして加わった折の作品「白きたおやかな峰」は(中略)まあ高級エンターテイメントのたぐいであろう。(116頁)**「どくとるマンボウ航海記」は、笑いの文学の少なかった日本でマーク・トウェイン流のオーバーなユーモアを持ち込んだものとして納得できる。(117頁)**「楡家の人びと」は、いつか書こうと思っていた長篇であった。大学時代から、私はトーマス・マンの「ブッデンブローク家の人びと」を模して自分の家のことを書きたいと考えていた。(90頁)** この作品については**自分でも納得できる長篇である。(115頁)**と書いている。三島由紀夫はこれこそ小説なのだと絶賛した。(文庫本の下巻カバー折り返しに載っている)
北杜夫ファンにはたまらない本だ。巻末の北杜夫著作目録もありがたい。