透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

「脳の風景」

2012-01-22 | A 読書日記



 『脳の風景 「かたち」を読む脳科学』藤田一郎/筑摩選書 を読んだ。脳の内部の様子をいろんな方法で可視化して、その形や模様、つまり「脳の風景」を観察することで脳の機能を解明するという「脳科学」を紹介した本。

脳は複雑だ。だが、決して無秩序な構造ではない。

本書には初めに、ネズミの個々の洞毛(センサーのはたらきをしているほおひげ)に対応するバレル皮質が大脳皮質領野にあることが紹介されている。興味深いのは個々の洞毛とバレル皮質とがトポロジカルな関係を保持しているということだ。体表のひげの配置が脳の中のバレルの配置にそのまま(と書けば誤解されるかもしれないが)再現されているのだ。この「体部位再現」はヒトの大脳皮質でもされているという。

本の帯に「まるで現代アート!?」とあるが、マウスのバレル皮質を染めて出現した模様やヒトの側頭葉の錐体細胞、虹のように彩られたマウスの海馬などのカラー写真が載っている。

可視化されたはるか彼方の宇宙の様子も美しいが、これら口絵の写真も神秘的で美しい。造物主はマクロからミクロな世界まで、その造形には美に対するこだわりがあったのだろう・・・。


 


庚申塔

2012-01-22 | B 石神・石仏

 道祖神の隣に二十三夜塔や庚申塔が建てられていることがよくあります。二十三夜塔については既に数回書きました。今回は庚申塔についてです。

「おこうしんさま」 

最近はあまり耳にすることがなくなりましたが、昔は時々このことばを耳にしました。集落内の隣近所何軒かで(5から10軒くらいでしょうか)、互助組織をつくって冠婚葬祭を扶助しあい、そして庚申信仰に関る行事も行っていたんですね。

手元の資料(*1)によると、庚申信仰というのは中国の「道教」の教えから起こったものだそうで、60日ごとにめぐってくる庚申の夜(かのえさる 十干十二支のひとつですから10と12の最小公倍数で60日ごとになるわけです。庚申の年は60年ごとにめぐってきます。)になると、体の中に宿っている「三尸(さんし)の虫」が本人が眠っている間に体からぬけだして天に昇り、天帝にその人の罪やあやまちを報告するといわれていて、そのために生命を奪われてしまうから一晩中眠らずに善行をしなければならない、ということなんだそうです。(資料136頁による)

道教の教えは奈良時代には既に日本に伝わっていて、平安時代には貴族の間で「守庚申(しゅこうしん)」が行われていたそうで、詩歌管弦の宴を開いたり、語り明かしたりしていたそうですが、これが次第に民間にも広まったということで、江戸時代以降いっそう広まったと資料にあります。

庚申の夜には当屋の座敷の床の間に庚申画像を掛け、供物をあげ、庚申塔にお参りをし、その後料理を囲んで一晩語り明かす、ということがあちこちで行われていたんですね。これは宗教的な意味合いは薄く、変化に乏しい田舎の暮らしに楽しみをつくったということではないのかなと思います。隣近所助け合って仲良く暮らしましょう、ということだったのでしょう。

 
長野県東筑摩郡朝日村西洗馬の庚申塔(庚申碑)とその案内板

ところで庚申塔は庚申の年に建てられることが多かったそうです。例えばこの庚申塔は万延元年(1860年)に建てられたことが案内板に記されていますし、石碑の裏面をみても確認できますが、この年は調べてみると確かに庚申の年です。

庚申塔の他にも大黒天や馬頭観音などが祀られているのを見かけます。それらについても取り上げようと思います。 


*1 『安曇野 道祖の神と石神様たち』西川久寿男/穂高神社