透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

目視検査で分かること(加筆)

2012-12-07 | A あれこれ

■ 本稿も笹子トンネルの事故について


コンクリート躯体からテストピースの抜き取る作業の様子


圧縮強度試験機によるテストピースの強度試験の様子

コンクリート躯体のテストピースの表面がピンク色しているのは後述のフェノールフタレイン液を吹き付けたから。よく見ると表面(上下両端)近くがあまり赤変せず、中性化していることが分かる。表面の目視だけでこのようなコンクリート躯体の内部の診断をすることは出来ない。

新聞報道によると笹子トンネルの定期点検では目視によるチェックしか実施していなかったという。目視でコンクリートやアンカーボルトの異常の有無を検査することは、健康診断で医者が受診者の裸の上半身の様子を目で診て、内臓に異常があるかどうかを判断するようなものではないのか。

コンクリート躯体が健全かどうか、建築の場合は①の写真で示すようにコンクリート躯体からテストピースを抜き取って②の写真のように試験機で圧縮強度を調べる。また、テストピースの表面にフェノールフタレインを吹き付けて中性化の程度を調べる(強アルカリ性のコンクリートは空気に触れている表面から中性化が次第に内部に進行する)。コンクリートが健全で、中性化が進んでいなければテストピースは赤変する(フェノールフタレイン液を使う実験は中学生のときにしている)。

トンネルのコンクリート躯体が健全かどうかを調べる方法となると土木も建築と同様だろう。このような方法で速やかにチェックする必要があろう。そしてどの程度劣化しているのか、データを公開すべきだ。

ところで笹子トンネルの事故では天井のコンクリート板を吊っている鋼材を支える後施工アンカーがコンクリート躯体からぬけてしまったことによるものと、新聞やテレビの報道から知ったが、そのようなことが起こったのは、後施工アンカー(接着系アンカー)の性能低下によるものだろうが、同様の工法が採用されていて、笹子トンネルのように年数が経過しているトンネルでは、直ちに天井のコンクリート板撤去工事を始めるべきだ。

追記:7日付信濃毎日新聞朝刊に掲載されている記事によると首都高速道路株式会社は首都高速1号羽田線の羽田トンネルについて年内に天井板の撤去作業に着手するという。中日本高速道路株式会社が同様の決断をして、恵那山トンネルで天井板の撤去作業を始めるかどうか。


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