2層目にあるオープンテラス 7層もある住宅(設計事務所併用)
■ くさる家? 腐る家かと思った。それだけではないことが分かった。くさるに熟成や鏈るという意味も込めてのタイトルだ。
『くさる家に住む。』つなが~るズ/六耀社 には10軒の住まいと暮らしぶりが紹介されている。その内の1軒は私の友人、S君が自ら設計した自宅「白山通りのいえ」。
この住宅は東京の幅員が40mもある白山通りに面しているのにも拘らず、その通りに開いている(中の写真:何年か前に遊びに行ったときに撮影した)が、それは友人の社交的な人柄の反映だと私は思う。建築、ことに住宅の設計には設計者が意識していなくても人柄、性格が反映されるものなのだ。
本では「都市の中に自生する一本の木のような家」という見出しをつけてこの住宅を紹介している。「一本の木のような家」というのはこの家のコンセプト、特徴を的確に捉えていると思う。
支持層が深いために打設した24mの杭を利用して地中熱を取り出し、その熱を冷暖房に活用するというシステム、この杭は木の根っこそのもの。屋上に設置されている太陽熱温水器は木の葉っぱそのもの。そしてS君が好きな左官仕上げの外壁は樹皮だ、と言ったら、こじつけだと言われるだろうか・・・。
このように木の家というのはただ単に木と塔状住宅(右の写真:大きな開口のある3層目から上部)の形態上の類似性を指しているのではなく、機能上のそれをも指しているのだ。
内部は素材の持つ質感をストレートに表現していて、実に住み心地がよさそうな雰囲気。それが本の写真からも伝わってくる。
豊かな暮らしというのは時間がゆっくり流れていると感じることができるかどうか、という指標で測れるのではないか・・・。この本に紹介されている暮らしぶりを読み、写真を見て、ふとそう思った。