■ 4月に読んだ本は3冊だった。
文化庁が平成25年に実施た調査によると16歳以上の男女で月に1冊も本を読まない人が47.5%だったそうだから、まあ3冊でも多いということになるだろうか。が、他人(ひと)と比較してみても意味がない。読みたいと思う本を読みたいときに読む、趣味としての読書とはそういうものだ。
『日本列島100万年史 大地に刻まれた壮大な物語』山崎晴雄・久保純子/講談社ブルーバックス
地形の成り立ちや成因を知る学問を地形発達史というそうだが、本書では「なぜ日本列島が弓形をしているのか」という疑問をはじめ、列島各地の地形に関する「なぜ」をこの地形発達史によって解き明かしている。長大なタイムスパンの事象はなかなかイメージできないが、時にはこのような本を読んでみるのも楽しい。載っている説明図がカラーなら良かったのに。
『国宝消滅 イギリス人アナリストが警告する「文化」と「経済」の危機』デービッド・アトキンソン/東洋経済新聞社
**少子高齢社会となった日本において、これまでと同様の社会保障制度を継続させていくには、健全な財政が必要であり、そのためには「強い経済」が必要不可欠です。**(2頁) と著者は自身の認識を示し、日本が進むべき道のひとつは「観光立国」だと主張する。本書で著者は観光立国に貢献できる文化財にする方策を述べている。
**文化財の観光資源化を認めないということは、医療費の負担増や年金のさらなる減額を受け入れるということでもあるのです。(中略)これは好む好まざるではなく、少子高齢社会問題に直面した先進国が避けては通れない道なのです。**(4頁)と、文化財を観光の目玉になんかしていいのかと考えてしまう私のような読者にピシャリと言い切っている。
文化財には「建築文化」と「人間文化」という二つの面があるが、建築文化が偏重されて、人間文化が軽視されているとの指摘。人間文化を私は例えば茶室という建築で行われてきた茶道のような文化的な営みを指していると理解したが、確かにその通りだと思う。見学先で入場チケットと共に手渡されるパンフレットは建築文化の説明は詳しいが人間文化の説明が乏しい傾向にある。
**「建築」という「器」にのみ着目して、肝心の「中身」がおろそかになっているのです。**(101頁)
**どんなに古い建物を「冷凍保存」して後世に残しても、そこを舞台にして生まれた「人間文化」というものを受け継いでいけるのは人間でしかありません。(後略)**(280頁)
『ひらかれる建築 「民主化」の作法』松村秀一/ちくま新書
「ひらかれる建築」という書名を目にした時、建築設計における空間構成の傾向、内に閉じた建築が次第に外に開かれつつある、ということを論じているのかと思った。が、そうではなかった。
住まい手が住宅生産に積極的に関わることが次第に可能になってきているという状況、ひらかれる建築の歴史的なプロセスを論じたものだった。
確かに住まい手が住宅を構成する様々な部材や部品をネットカタログで選んでそれを「編集」するという方法、あるいは既存の住宅ストックを自分たちのライフスタイルや好みに「編集」するという設計方法を紹介する記事を目にするようになった。