透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

信毎メディアガーデン

2018-05-09 | A あれこれ


撮影日180508 伊勢町通りから

■ 信濃毎日新聞の松本本社「信毎メディアガーデン」1階のオープンなホールで、この建築の設計者である伊東豊雄さんの講演会が開催された。「みんなの家」から「みんなの建築」へ と題した講演で、伊東さんはまず下諏訪で暮らしていた子どものころの様子を紹介し、続いて「下諏訪町立諏訪湖博物館・赤彦記念館と「まつもと市民芸術館」の解説、それから信毎メディアガーデンの設計プロセスと設計意図の解説があった。信毎メディアガーデンは始めから回遊式の庭園のようなイメージだったという。せんだいメディアテークは箱だけれど、こちらは庭。それから3.11の後や熊本地震の後に何棟も計画した「みんなの家」、瀬戸内海の大三島のプロジェクト、「ぎふメディアコスモス」、「台中オペラハウス」の紹介があった。

やはり3.11の後、「みんなの家」でみんなで考えてみんなでつくりあげていくというプロセスの経験が伊東さんの建築観の転換になったのかもしれない、と感じた。講演の最後のことば、「建築はおおらかなところがないと楽しくない」。


「信毎メディアガーデン」は地下1階、地上5階建てで、延べ床面積8,143㎡。外観の特徴は1、2階の外壁に付けられたGRC製のルーバーだ。





このルーバーを見て私は菊竹清訓さん設計の「出雲大社庁の舎」(ネットで画像を検索して確認してください)を思い出した。出雲大社庁の舎は「いなかけ」がモチーフであることは知られている(菊竹さんは著書『代謝建築論』彰国社にこのことを書いている)。

信毎メディアガーデンは正面が西向きだからルーバーは、機能的にはよしずと同じ、夏の西日を遮るように計画されたことは分かる。では、この形は何から発想したのだろう・・・。

  

講演の中で伊東さんから説明があった。

斜めに設置されているルーバー(高さ12m)は、櫓の外壁からイメージしたとのことだった。櫓の外壁の押縁下見板張りか・・・、なるほど。川越の「時の鐘」もそうだが、江戸の火の見櫓の壁は斜めで、押縁下見板張りだった。伊東さんは櫓のように4面ともルーバーを設置することを検討していたそうだが、敷地の大きさなどの制約から正面(西側)と裏面だけになったそうだ。


江戸深川資料館 再現された深川佐賀町の火の見櫓

これからは信毎メディアガーデンの前を通るたびに江戸の火の見櫓を想うだろう・・・。



1階内観