常念通りから残雪の常念岳を望む 撮影日2021.04.22
■ 松本は周りを山に囲まれた城下町。城下の道路計画には、山当て、すなわち道路のヴィスタに特徴的な山を当てる(山を真正面に据える)手法が採られていたという。現在も周囲の山の景観も道路もほとんど変わっていないから、今でもこのことは確認することができる。美ヶ原や乗鞍岳、袴越山などを当てている道路があることを何年か前に知った。
このことについては松本は山に囲まれているのだから、道の真正面に山が座っているのは当然であって、意図的なものではない、という指摘もあるようだが、山のピークが外れていないことからやはり偶然ではないと思う。
江戸の街でも富士山と江戸湾をヴィスタに据えた道路計画がなされたことが知られている。私が昔住んでいた東京の国立市には富士見通りと名づけられた通りがあるが、アイストップとして通りの正面に富士山があった。計画的につくられた国立にもこの手法が使われたのだろう。
ただし上掲写真の常念岳を正面に見る通りには常念通りという名前が付けられてはいるものの、上記のような山当てによって計画されたわけではないようだ。
**夕ぐれに日が沈むあまりに荘厳な北アルプスの峰々。すぐ正面の常念岳は三角形をなして親しみやすかったし、その左方の島々谷の彼方にのぞく雪の精とも見まがう乗鞍の姿。ずっと右方の白馬連峰は夕映えにいつもうす桃色に染まるのであった。**(「神々の消えた土地」北 杜夫 新潮社 161頁)