『都市計画家 徳川家康』谷口 榮(MdN新書2021年)
■ 書店で平積みされていたこの新書が目を引いた。MdN新書は昨年(2020年)4月に創刊され、本書には021という番号が付けられているから21冊目の刊行ということだろう。エムディエヌコーポレーションという全く知らない出版社の新書だが、書名や帯の**天下人の地形利用術**というコピーに惹かれ、買い求めた。
著者は**家康の江戸入部以前の中世の江戸に注目するが、具体的には、江戸低地や江戸前島、日比谷入江の形成過程を概観し、江戸やその周辺がどのような地形・地質なのかを押さえた上で、江戸やその周辺で営まれた開発の様子を読み取っていきたい。**(4頁)と本書の「はじめに」で書いている。
中世江戸の地形は現在とはかなり違っていて、現在の有楽町と霞が関の間は日比谷入江と呼ばれる入江だったこと、また、この日比谷入江の東側に当たる東京駅から新橋駅辺りまでは江戸前島と呼ばれる岬だったことが知られている。私も日比谷入江と江戸前島という名称だけは以前本で読んだことがあり、知っていた。著者はこのような江戸の地形が川の流路を変えたり埋め立てたりするなど、人為的変えられてきたことを他説を検討しながら論じている。なかなか興味深い内容だった。川の付け替えには物流や治水の他に堀と同様、防御的な意味もあったことを本書で確認した(43頁)。
江戸は凹凸地形や川を上手く活かした都市計画を実践することで造られてきたことを本書で改めて確認した。類書を読んで理解を補いたい。