透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

ブックレビュー 2022.01

2022-01-30 | A ブックレビュー

 ネット検索して出版物の売上額の推移を示すグラフを探した。見つかったのは2006年からの棒グラフ。グラフに示された売上額は毎年減少していたが、昨年(2021年)初めて前年より増加していた。コロナ禍による巣ごもりで読書した人が多かったことに因るのだろう。私も今月は休日不要な外出を避けてDVDで映画を観たり本を読んで過ごすことが多かった。そのためか1月の読了本は少し多くて7冊だった。

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『黄色いマンション 黒い猫』小泉今日子(新潮文庫2021年)
カバー折返しに記されている作者のプロフィールに1966(昭和41)年、神奈川県厚木市生まれとある。そうか、キョンキョンも50代半ばか・・・。家族のこと、日々の暮らしのことが飾らない文章で綴られている。昨年末に読み始めた年越し本。

『古都再見』葉室 麟(新潮文庫2020年)
**人生の幕が下りる。
近頃、そんなことをよく思う。何もあわててあの世に行こうというのではないが、還暦を過ぎてから、何かゆっくりと頭上から下りてくる気配を感じるのだ。
今年(二〇一五)二月から京都で暮らしている。
これまで生きてきて、見るべきものを見ただろうか、という思いに駆られたからだ。
何度か取材で訪れた京都だが、もう一度、じっくり見たくなった。古都の闇には生きる縁となる感銘がひそんでいるような気がする。
幕が下りるその前に見ておくべきものは、やはり見たいのだ。**(12、13頁)

葉室さんは2017年に亡くなっている。歴史作家が見る京都と私が旅行で訪れて見る京都とではまったく違う風景だろうなあ。幕が下りるその前に見ておくべきもの・・・、って何だろうと自問する。

『新聞記者、本屋になる』落合 博(光文社新書2021年)
**2010年代になると、本屋は「自己実現/自己表現の手段のひとつ」になったとも。**(192頁)

自己実現、自己表現の手段として本屋を始めた著者の落合さん。セカンドライフでそれを見出すことができるかどうか、だなぁ。

『剛心』木内 昇(集英社2021年)
明治期の三大建築家のひとり妻木頼黄(よりなか)の生き様。日清戦争が始まった明治27年、広島にたった半月!で建設された帝国議会の議院、その設計と工事監理に奮闘する妻木。国の未来を語る国会議事堂の設計をめぐりライバルの辰野金吾との駆け引き。その結末は・・・。

『日常の絶景』八馬 智(学芸出版社2021年)
何気ない日常の風景も見方次第で絶景に変わる。実感!

『清張鉄道1万3500キロ』赤塚降二(文春文庫2022年)
著者の赤塚さんはJR全線を乗りつぶした後、14年から16年にかけて清張作品を集中して読んだ、とエピローグで書いている。その読み方は登場人物の乗り鉄に関する調査、研究というユニークなもので、どの登場人物がどの路線に初乗りしたかを調べるている。登場人物がどこで乗りどこで降りたのか、きちんと書かれていないこともあるし、駅名が変わっていることもある。そこを赤塚さんは鉄道や地理などの知識を動員して推測する。そのような作業も楽しかっただろうな、と思う。そしてすばらしいのはそれをきちんを図表にまとめていること。

『庚申信仰』平野 実(角川選書1969年)
知識がないと物は見えない。庚申塔観察のための基礎知識を得るために再読した。内容充実。


『火喰鳥 羽州ぼろ鳶組』今村翔吾(祥伝社文庫2021年第20刷)を読み進めよう。

 


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