透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

小野駅の跨線橋

2014-06-11 | A あれこれ

 

 
駅舎側の柱のディテール

 小野駅は中央本線(辰野支線)の小さな駅だ。ホームを繋ぐ跨線橋の柱に注目。今なら角型鋼管を使うだけで、味もそっ気もないが、この柱はすごい。 

駅の開業が明治39年(1906年)とのことだから、この柱もその時に造られたものかもしれない。 いや、少し時代は下るのかな・・・。ブレースに用いられているターンバックルは火の見櫓でもおなじみのリング式だが、肉厚だ。今なら鋼管をカットしてつくるだろうが、昔は平鋼を曲げてつくっていたようだ。 

階段を支える側桁にも注目。今ならH形鋼を用いるのが一般的だろうが、この跨線橋はラチス梁を用いている。 

コスト縮減と工期短縮最優先。今は本当に豊かな社会などとはとても言えないのではないか、このような工作物を観察しているとそう思えてならない。 


 


― 似ている・・・

2014-06-11 | A 火の見櫓っておもしろい

 

 左は辰野町小野に、右は朝日村西洗馬に立っている火の見櫓です。どうでしょう、立ち姿の印象が似ていませんか?辰野の火の見櫓は4角形、朝日の火の見櫓は3角形と平面形は違っていても両者とてもよく似ています。 

 

屋根のてっぺんの飾り、見張り台の手すり、方杖、見張り台床の開口。これらのデザインもよく似ています。 

 

脚部もよく似ています。アーチ部材と横架材を繋ぐプレートの形は瓜二つです。

                     

梯子も似ています。手すりの使用部材、丸鋼を2本並べたステップ。1本の場合の方が多いかもしれませんが、滑りにくさが格段に違うでしょう。1本の場合は靴の裏とは線接触、2本の場合は面的な接触になりますから。

実はこの2基の火の見櫓、同じ鉄工所で造られたことが分かりました。実に誠実な造りだと思います。人柄が出るんですね~。共に昭和30年の8月に完成しています。建設費も分かりました。どのようにして分かったのか、そのことを書く機会が後日あるかもしれません。  


 


― 動く鉄 動かない鉄

2014-06-08 | A 火の見櫓っておもしろい

 
夏のフォトアルバム 鉄のある風景  塩尻市宗賀牧野にて 撮影日140608 

 松本市内のとあるカフェのYさんから、火の見櫓と列車のツーショットを撮ってくださ~い、とリクエストされた。なぜ、そうなったのか、ことの成り行きは覚えていないが・・・。その時直ちに浮かんだのがこの場所だった。

地元の農家の方によるとこの火の見櫓は昭和55年(1980年)に、すぐ近くにある火の見櫓(昭和25年頃の建設)の後継として建てられたそうだ。

火の見櫓は動かないから好きなアングルをじっくり探して何枚でも撮ることができるが、列車はあっという間に通り過ぎていってしまう。シャッターチャンスは一瞬だ。撮り鉄の人たちってスゴイな~、と思った。

シャッターを押すのが一瞬遅いと、火の見櫓にかかってしまうから、上の写真はタイミング的にはOKだったと思う。前の列車の時はシャッターを押すタイミングが早すぎた(下の写真)。



本当は3脚を立てて待ち構えていなければならないのだろう。今回は、手持ちで撮った。この写真を撮り終えて、車を停めておいた場所に戻る時、踏切の警報機が鳴り始めた。 



塩尻方面に向かう特急しなのの頭だけが写っている。シャッターを押すタイミングがほんの少しだけ早すぎた・・・。

何回も撮っているうちにタイミングが分かってくるだろうが、撮り鉄でもない私にはかなり難しかった・・・。こんな近くで撮るのは「素人」には至難の技(などと、言い訳を言う)。まあ、列車の先頭部分が写っているだけで、良しとしておこう・・・。


追記:もじもじさんから、連写すればいいじゃないですかという指摘をいただいた。 そうか・・・、高速連写ね。いままで使ったことがなかったから気がつかなかったけれど、確かにそれはいい。


490 上田市下之郷の火の見櫓

2014-06-08 | A 火の見櫓っておもしろい

 
490 上田市下之郷

 東信地方(*1)によく見られる姿・形の火の見櫓。直線的に広がる細身の櫓、上部の平鋼ブレース、カンガルーポケット、4角形の小さな屋根と4角形の見張り台、そしてがに股。

  

屋根と見張り台の端正な造り。このようなデザインも好み。

 

 

  

下から見上げる・・・ 


*1 長野県は地形的、地理的状況から北信、中信、南信、東信の4つのブロックに分けられている。 


「眺める禅」を読む

2014-06-07 | A 読書日記


『眺める禅』 枡野俊明/小学館

 このところ火の見櫓の記事を続けたので、「また火の見櫓、つまんない」という閲覧者の声が聞こえる・・・。で、今回は本。

4月に東京した際、代官山の蔦屋で買い求めた本。積読状態が続いていたが、先日ようやく読むことができた。著者の枡野氏は曹洞宗の寺の住職にして庭園デザイナー、多摩美大の教授も務めておられる。

本書は枡野氏がデザインした禅の庭、枯山水が心安らぐ文章とともに何例も紹介されている。

以下本書からの引用(51頁)
**
心の在り様が違えば、受けとり方も違うのです
そのときどきの偽りのない心を知る
「禅の庭」はそういうものでもあるのです
**

幕の内弁当のような足し算な暮らしをしていていると、枯山水の引き算の美学に惹かれる。 どこか枯山水の庭を観にいこう、京都か・・・。
 


 


487~489 小海町豊里の火の見櫓 3基

2014-06-06 | A 火の見櫓っておもしろい

  南牧村から佐久市に向かって国道141号線を移動中に見かけた火の見櫓のうち、3基を写真に収めた。(487、488、489)


487 小海町豊里 



屋根の頂部、避雷針に付けてある飾りのデザインがユニーク。下端が屋根に固定されておらず「くるりんちょ」な処理をしてある。

見張り台にモーターサイレンとスピーカーが設置してあるのは残念だが仕方無い・・・。


  
488 小海町豊里

 

 


  
489 小海町豊原

 

  

こんなにエレガントな踊り場、観たことない。手すり子の曲線が美しい。手すりのすぐ下の装飾の曲線も優美。見張り台や脚元にいろんなものが付いているが、これらがなければ、「超」をつけてもいいくらい美しい火の見櫓。 櫓のどこにも錆も傷もない。


 

3基は全体的な印象は似ているが、部分的にはそれぞれ違っている。例えば屋根の装飾、頂華(フィニアル)のデザインが違う。3基とも見張り台は円形だが、手すりのデザインが違う。 脚部のデザインも違う。

火の見櫓 みんなちがって みんないい  


 


486 川上村樋沢の火の見櫓

2014-06-05 | A 火の見櫓っておもしろい

  
486 南佐久郡川上村樋沢
  

 見張り台の大きさに比して屋根が小さい。よく見ないと小さな蕨手には気付かない。屋根を支える柱材が細い!鋼板張りの床。

 

櫓の外側に設けられた踊り場。小屋根の下に半鐘を吊るしてある。平鋼を踊り場の床を支える方杖に使っている。まさか人の体重(荷重)程度で平鋼が座屈することはないだろうが、取り付け方を上下反転して手すりの付け根のあたりから、引張り材として付けた方が構造的な違和感を感じないですむのかもしれない。



脚元。アーチ材と柱材をガセットプレート(部材接合用鋼板)で接合している。このような脚元を見るのは初めてかもしれない・・・。


 


485 川上村御所平の火の見櫓

2014-06-05 | A 火の見櫓っておもしろい

  
485 南佐久郡川上村御所平 

■ 県道68号線沿いに立つ火の見櫓。 4角形の櫓と、同じく4角形の屋根(ともに平面形)に円形の見張り台という構成。櫓は直線的に下方に広がっている。東信地方では櫓の上半分のブレースに平鋼を使っているものが多いが、この櫓は全てリング式ターンバックル付きの丸鋼を用いている。平鋼よりスケスケ感がある。

  

屋根が変形している。頂部の避雷針にはやや大きめの飾り、下り棟の先には小さなくるりんちょ(蕨手)がついている。見張り台の手すりはしもぶくれ。下を広げることに機能的な理由は見い出せない。単なる意味の無いデザインか。蕨手同様細い丸鋼の飾りがついている。床を支える方杖は反っている。

  

中間のカンガルーポケット踊り場(と勝手に命名した)は東信によくあるタイプ。手すりは見張り台と同じデザイン。ここにも半鐘が吊り下げてある。半鐘の表面はつるりんちょ(平滑)。踊り場側のブレースは2段抜いてある。消防団員の昇降を考えればこれは当然のこと。

   

 

脚は短い。やはり末広がりの櫓でないと美脚にはならない。信号表示板が吊るしてある。アーチ部材が基礎まで伸びているのは構造的にも意匠的にも好ましい。


  


― 道路をまたぐ火の見櫓

2014-06-04 | A 火の見櫓っておもしろい



■ 茅野市金沢の道路をまたぐ火の見櫓は新聞にも取り上げられ、また先日はテレビでも紹介されました。 長野県内には他にも道路をまたぐ火の見櫓があります。私が知っている道路またぎ火の見は他に南牧村と飯山市にあります。下は南牧村海尻の生活道路をまたいで立っている火の見櫓です。 

  



反対側から見るとこんな様子です。茅野の火の見櫓と比べてこの火の見櫓はごく自然に道路をまたいでいます。


 


ブックレビュー 1405

2014-06-03 | A ブックレビュー

 5月の読了本は3冊。   


『集合知とは何か ネット時代の「知」のゆくえ』 西垣 通/中公新書

本書のあとがきからポイントを引用しておく。**二〇世紀は、専門家から天下ってくる知識が、「客観知」としてほぼ絶対的な権威をもった時代だった。(中略)
二一世紀には、専門知のみならず一般の人々の多様な「主観知」が、お互いに相対的な位置をたもって交流しつつ、ネットを介して一種のゆるやかな社会的秩序を形成していくのではないだろうか。それが二一世紀情報社会の、望ましいあり方ではないのだろうか。**

専門的で理解の及ばないところも少なくなかったが、二一世紀の知とはどうあるべきか論じた本書はなかなか興味深い内容だった。


  

『自然界の秘められたデザイン 雪の結晶はなぜ六角形なのか?』イアン・スチュアート/河出書房新社

何年か前に読んでいる本。入院中に再読しようと持っていったが、病室で読むことはできなかった。麻酔の影響だと思うが、入院中頭痛が続いて安静にしていたから。で、退院後に読んだ。 

自然のデザイナーは数学が好き。多種多様な形は数学的なルールに基づいてできている。 

自然科学に関しては、海外の研究者の書いた本の方が総じて面白い。あることを説明するときの喩え話は巧みで分かりやすいし、専門以外のことに関する話題も豊富だと思う。専門領域に限定された説明より、読んでいて楽しい。この本には建築家のバックミンスター・フラーが考えたジオデシックドームがでてくる。話題は広く内容は深い。                




『ときめき昆虫学』 メレ山メレ子/イースト・プレス

この本の著者、メレ山メレ子さんのことは今まで全く知らなかった・・・。硬軟織り交ぜた文章で綴る虫のはなし、虫好きの人たちとの楽しい交流。

**造網性のクモが網から外され、棒の上にとまらされて同族と戦うというのは、人間でいうとオフィスで内勤していたらUFOによって緑色の光で吸い上げられ、気がついたら火星でタコ型宇宙人から「星々に火星ゴルフ会員権を売りこんできてクダサイ。トップ営業になるまでは地球に帰れマセン」と言われるくらいハードモードだ。**(59頁)  

以上クモの章から硬軟の「軟」の文章の引用。これは鹿児島県始良市加治木で毎年行われているクモ合戦観戦記。 

**ホタルの光り方には(中略)産地ごとにわずかな差があるという。違う地域の異なる言語でコミュニケーションを取っているホタルを人為的に混ぜると、オスメスの交信まで混乱するので、結果的に共倒れとなってしまう可能性があるのだ。地域的絶滅に至らないまでも、人為的な移入による遺伝子汚染を問題視する生物学者も多い。**(74頁) 

以上ホタルの章から、硬軟の「硬」の文章の引用。

この本を読めば虫スイッチON間違いなし。そしてメレ子さんにもときめいてしまうかも。

メレ山メレ子さんのブログ ← どの記事もユーモラスに綴られている。旅行記は特におもしろい。


 

 


482~484 筑北村の火の見櫓 3基

2014-06-02 | A 火の見櫓っておもしろい

 
482 東筑摩郡筑北村東条立川

 旧本城村の山あいの集落を結ぶ道路沿いに火の見櫓が3基立っていた。道路沿いに細長く集落が形成されていて、その集落を俯瞰するところにこの火の見櫓は立っている。



3角形の櫓に6角錘の屋根、見張り台は3角形だが、手すりは少し外側に広がっていて、椅子の背もたれのような形になっている。床面と手すりの平面形が一致していない見張り台を見たのは初めてかもしれない。

 


 
483 筑北村東条岩戸

 主要道路を下っていくと次の集落、岩戸にも道路沿いに火の見櫓が立っていた。これは予想通り。立川の火の見櫓とデザインは基本的に同じ。

 

 

見張り台の床面と手すりの形の違いがこの写真では分かりやすい。分かりやすいアングルを探して撮ったから当然だけど。



脚元はこんな様子。



484 筑北村東条竹之下

 

 3角形の櫓に6角形の見張り台。床を支える方杖を受ける水平材を架けている。このためにごちゃごちゃしていてすっきり感に欠ける。

     

脚部はトラス。ホース格納箱と屋外消火栓が設置されている。合併前の村名がそのまま残っている。 


 


― 狛犬と火の見櫓

2014-06-01 | A 火の見櫓っておもしろい

 

上田市浦野 (再)

 この火の見櫓を取り上げるのは2回目。青木村の先、上田市浦野の皇太神宮の境内に立っていて狛犬もあったことを覚えていたので、今日(6月1日)再訪して狛犬と火の見櫓のツーショットを撮った。

ヤグラーにして狛犬研究家、のぶさん垂涎の、かどうか分からないが、彼にツーショットスポットを知らせたかった。昭和35年に祀られた狛犬だから新しくてごくありふれたものだろう。

火の見櫓について前回は全形写真を載せただけで、特に観察録も書いていなかったから、今回書くことにする。

  

反りのついた4角錘の屋根に円形の見張り台。

屋根の下り棟の先に丸鋼の蕨手(先日放送されたテレビ番組でもこの名称は紹介していた)が付いている。蕨手などという硬い表現より、「くるりんちょ」とでもしておいた方がいいかも・・・。屋根の頂部、避雷針につけられた飾りも端部はくるりんちょ。

見張り台の手すりは飾りが無く、機能に徹している。シンプルで好ましい。床を支える方杖の形には「直線」、「反り」、「はらみ」とあるが、このような「反り」がたぶん構造的に合理的。
細身の櫓、上部の平鋼ブレース、カンガルーポケット踊り場は東信地方の火の見櫓によくあるタイプ。

 



脚部はきちんとトラスにして欲しかった・・・。アーチ部材を脚の途中で止めないでコンクリート基礎まで伸ばしてあるのは好ましい。



上田市の高田鉄工所が建てたことが銘板から分かる。残念ながら建設年は記されていないが警鐘ローという呼称や電話番号から古いものだと分かる。