史跡訪問の日々

幕末維新に関わった有名無名の人生を追って、全国各地の史跡を訪ね歩いています。

「明治めちゃくちゃ物語 勝海舟の腹芸」 野口武彦著 新潮新書

2012年06月03日 | 書評
同じ新潮新書でシリーズ化された「幕末ロワイヤル」シリーズの続編。いよいよ舞台は明治に移り、戊辰戦争に突入である。
野口武彦氏は、戊辰戦争前後の混乱を「めちゃくちゃ」というキーワードで表現している。「攘夷」を旗印としていた薩長が政権を奪取した途端に、神戸事件を契機に何食わぬ顔で新政府は外国との和親に舵をきった。これも「めちゃくちゃ」。
戊辰戦争では、捕虜が存在しなかったという。官軍も同盟軍も捕えた敵兵は、残虐行為の末に嬲り殺した。これも捕虜には危害を加えないという国際的常識からすれば「めちゃくちゃ」。
恭順を表明する徳川慶喜は助命されながら、同じように藩主容保が御薬園に穏退して恭順の態度を示しているにもかかわらず、新政府は会津に対しては追討令の手を緩めなかった。これも「めちゃくちゃ」であれば、援軍のない中で一方的に攻撃を受けながら籠城を続けた会津藩も「めちゃくちゃ」。
戊辰戦争は経済的な利得を計算すれば、全く採算が合わない事業であった。野口氏は、「何のためにこれほど夥しいエネルギーを費やしてまで、維新の大事業は成し遂げられたのであろう」と疑問を呈する。単に「恨みを晴らす」という目的だけだったのか。戊辰戦争自体が「めちゃくちゃ」な内戦だったという含みを残して、本書は続編に引き継がれる。

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