映画とライフデザイン

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必死剣鳥刺し 豊川悦司

2011-02-12 06:00:37 | 映画(日本 2000年以降主演男性)
「必死剣鳥刺し」は藤沢周平原作の時代劇である。
豊川悦司が主人公の剣士、仕える女性を池脇千鶴が演じる。「たそがれ清兵衛」「隠し剣鬼の爪」同様のタッチで描くが、今回は平山秀幸監督がメガホンをとる。ストーリーの流れはいかにも藤沢時代劇らしいながれで個人的には大好きだ。最終に向けての展開は実に楽しめた。


いきなり城中で主人公兼見三左エ門こと豊川悦司が、藩主の妾連子を刺し殺すシーンからスタートする。
江戸時代、東北の海坂藩で藩主の妾が藩政に口を出すようになった。もともと苦しい財政状況だったにもかかわらず、ぜいたく三昧で自分に逆らう勘定の長老に切腹を言いつけるなどしたい放題であった。城下の空気は重苦しさを増していた。豊川が妾を刺殺したのはそんな時だった。

最愛の妻を病気で亡くした豊川にとって、切腹覚悟の行動だったが、下されたのは意外にも寛大な処分であった。1年の閉門の扱いを申し伝えられた豊川は、亡き妻こと戸田菜穂の姪こと池脇千鶴に支えられていた。一年の閉門後、藩の権力者こと岸部一徳の配慮で再び藩主の傍に仕え、近習頭取となった。しかし、藩主は豊川になじまない。自分を再度ひきたててくれた岸部の屋敷に行き相談したら、藩主は別家の主こと吉川晃司に地位を脅かされていると聞かされるが。。。

藤沢作品に登場する剣の達人は物静かである。大はしゃぎして自分の実力を誇示するようなタイプはいない。そして自ら対決を申し出るのではなく、周りにやむなく仕向けられるという特有のパターンである。
ネタばれになるので、控えたいが、今回も同様のパターンである。「鳥刺し」も「隠し剣」の一つだという。「たそがれ清兵衛」「隠し剣鬼の爪」はいずれも大好きである。甲乙つけがたいが、「隠し剣鬼の爪」の秘技にしびれた。今回もラスト30分にわたる展開は実にすばらしい。


豊川悦司の剣の達人は、そもそもの物静かなキャラから言って、適役だったと思う。ラストの演技には御苦労さんと言ってあげたい。今後同様の活躍をすることを期待したい。
あとは脇役陣にはおそれ入った。岸部一徳はなんてうまいんだろう。悪役を演じさせたら当代きっての名手。切腹せざるを得ない状況にあった豊川を救うなんて、珍しく善人なのかと思しき動きを見せたところは迷彩か?吉川晃司もいい役者になってきた。「チームバチスタの栄光」の医者役も堂に入っていたが、今回もよくやったと思う。「たそがれ清兵衛」「隠し剣鬼の爪」の宮沢りえ、松たか子に比べると池脇千鶴は地味である。でもそこにリアリティがあるのかもしれない。徐々に成長していく姿を感じた。

藤沢周平映画はやっぱりいいなあ!

コメント
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