映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

映画「紀子の食卓」 園子温&吹石一恵&吉高由里子

2015-01-03 19:03:28 | 映画(日本 2013年以降主演女性)
映画「紀子の食卓」は園子温監督の2006年公開の映画である。


園子温監督の作品では、「冷たい熱帯魚」「恋の罪」「ヒミズ」が傑作だと思っている。「紀子の食卓」は上映時間が長い映画なので、見るのをずっと後回しにしていた。自殺サークルの話かと思っていたが、これまたオタッキーなレンタル家族の話だった。
後半戦一気に盛り上がるところはあれど、ちょっと凡長である。園子温が今ほど注目を浴びていない時期で、数多くの劇場で公開になることを想定していないせいか、編集が大雑把だ。159分を25分以上は少なくても短くできるのではないか。それでも、離れ離れになった父娘が再度対面する場面など見せ場は用意されていて彼の力量は十分発揮している。

吹石一恵の高校生役は若干無理がある部分もあるが、ややこしい役柄を上手にこなす。紅白歌合戦の司会をやるまで一気に人気上昇した吉高由里子がまだかわいい。潜在的な演技能力を秘めているのがよくわかる。

島原紀子(吹石一恵)は平凡な女子高生。妹・ユカ(吉高由里子)、田舎のローカル新聞記者の父・徹三(光石研)、母・妙子の4人家族。紀子は豊川の田舎でくすぶっている自分に嫌気がさしていた。学校の視聴覚室で自由にパソコンが使えることになり、ネット上で“廃墟ドットコム”という全国の女の子が集まるサイトを見つけた。紀子は「ミツコ」と名乗り、ハンドルネーム「上野駅54」や他の仲間たちと知り合う。彼女たちとなら何でも分かり合えると感じた紀子は、東京に出たいと親に告げるが反対される。結局、家出して東京へ向かう。


東京のコインロッカーで紀子は「上野54」ことクミコ(つぐみ)と出会った。そこには彼女の両親や弟の姿もあった。しかし、それは彼女が経営する「家族サークル」とも言えるレンタル家族だったのだ。そこで紀子は「ミツコ」として「娘」の役割を演じながら、本物の「家族」との関係を実感していく。

2002年5月26日、新宿駅8番線プラットホームから女子高生54人が、ホームへと一斉に飛び込んだ。その謎を解く手がかりを、妹・ユカは「廃墟ドットコム」の中に発見する。女子高生54人が集団で自殺した次の日、54の赤い丸が増えていたことから、姉・紀子が54人の中にいるのではと想ったユカは、「廃墟ドットコム」の秘密をもって東京へ消える。


父親は2人がいなくなったため、仕事への気力を失い新聞社をやめた。そして、2人に関する情報を徹底的に集めた。父は娘たちを何一つ理解していなかったことがわかった。ユカの失踪から2ヵ月後、母・妙子は自殺してしまう。徹三は落胆した。紀子とユカの消息を追ううちに、“廃墟ドットコム”のことを突き止めていた。紀子もユカも彼らの組織「家族サークル」の一員だと知った徹三は、上京する。友人に頼んでクミコを母親役、紀子とユカを娘役だとして指名し、父親はふすま越しに隠れて彼らを見守るのであるが。。。

ここからがヤマ場だ。
紀子もユカも「家族サークル」としの演技(仕事)と、現実の親子関係が交差してくる。そこにクミコが加わる。
「廃墟ドットコム」の男たちが徹三を痛めつけるが、徹三はナイフをもって暴れる。部屋が血だらけになってもクミコは平然として「家族サークル」のまま演技している。このあたりは自分はよく理解できないまま最後に進む。
でも最後に「ミツコ」は卒業で私は紀子だという。これもよくわからん。


園子温監督というとエロティックと残虐というイメージが強い。ここではそうでもない。
予算もその後の作品ほどにはなかったのであろう。

2005年制作というと、今からするとちょっと前の話なんだけど、このころってこういう「家族サークル」ってはやったかなあ?
園子温の話によると、以前「レンタル家族」で副業をする女性と知り合ったことがあるという。それ自体はまさに「秘密クラブ」のようなものだったらしい。そんなネタを元にオリジナルのシナリオをつくる。この後の作品もそうだが、小さなニュースを題材に彼らしい視点で脚本をつくっている。既視感のないストーリーをつくるというのが、園子温のモットーだそうだが、ネタ自体は身の回りの出来事だ。

ある意味、園子温は普通の食材で誰も見たことのない料理をつくるような天才料理人と一緒なのかもしれない。

でも、この映画は2時間40分、結末に向けてのラストスパートが40分程度ある。
長いのはいいけど、もっと短くできるのに長いというので中盤でちょっと飽きてしまうかな。
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韓国映画「殺人の疑惑」 ソン・イェジン

2015-01-03 08:32:37 | 映画(韓国映画)
映画「殺人の疑惑」は2014年日本公開の韓国得意のクライムサスペンス映画だ。


韓国には「韓国三大未解決事件」と呼ばれている事件があるという。その中の一つが「イ・ヒョンホ誘拐殺人事件」である。昨年日本公開の「悪魔は誰だ」はこの殺人事件が題材になっている。別の「華城連続殺人事件」はサスペンスの大傑作「殺人の追憶」で映画化されている。今回は「悪魔は誰だ」とは視点をかえてその誘拐殺人事件を題材にしている。

自分の父親が誘拐事件の犯人ではないかという疑いを抱き、真実を求めて動き出す女性の姿を、「私の頭の中の消しゴム」「四月の雪」のソン・イェジン主演で描く。韓国クライムサスペンスはどれもこれもよくできている。この作品も観客を幻惑させようとストーリーを振りまくる。結末作りもお見事であるが、満点というわけではないなあ。


15年前、韓国全土に衝撃を与えた「ハン・チェジン君誘拐殺人事件」が起きた。世間では、公訴時効を目前に控えて「ハン・チェジン誘拐殺人事件」の話題で持ちきりである。大学卒業を控えた主人公ダウン(ソン・イェジン)は、マスコミ系への就職活動をしている。就職の面接でそのテーマを尋ねられるかもしれないので、「犯人の肉声」を入れ込んだ映画を後輩とともに見にいった。犯人の肉声を耳にしたダウンは、父親スンマン(キム・ガプス)の声とよく似ていることに気づく。しかもしばしば聞いたことのあるフレーズだ。

その後、母親の祭壇の前で父と二人で拝礼している時、突然訳のわからないことを話して家の中を荒し回る男シム・ジュニョン(イム・ヒョンジュン)が現れ、スンマンに対してカネを要求し始めた。横で見ているダウンはあぜんとする。目の前で、「娘に知られてもいいのか?」と父親が脅かされる様子を見て、娘が調べはじめる。警察官志望の後輩ジェギョン(イ・ギュハン)を通じて、警察に自分の父親と死んだ母親の名前を伝えて、何か情報がないかと調査依頼した。


そこで父親が前科三犯であることと、母親がまだ生きていることがわかる。ダウンは驚いた。母親の住所あてに訪ねていくとそこには先日家で大暴れをしたシムがいた。寝たきりになっている母親をシムが面倒見ていたのだ。ダウンは母親の母子手帳を探しだして、自分が生まれた産婦人科の院長のところへ行く。その院長は誘拐された子供の父親だったのだ。そこで院長から犯行時に犯人が書いた1枚のメモをもらう。そこに書いている文字は子供が書いたものだ。しかも、ダウンはその文字に見覚えがあり動揺するのであるが。。。

韓国は熱血刑事が犯人を執拗に追うといったストーリーが好きなようだ。韓国版「容疑者xの献身」も探偵ガリレオが追うのではなく、熱血刑事が追う展開になっていた。この映画でもその後父親が呼ばれて取り調べを受けるが、いつものパターンとは違う。今回の証拠は「犯人の肉声」だ。「声紋鑑定」が「悪魔は誰だ」でもポイントになる。でもどちらかというと、韓国警察のだらしない部分ばかりが目立つ。


誘拐の被害者である父親(産婦人科の院長)が被疑者であるスンマンを警察で殴ってしまう。すると、スンマンは頭を打って意識を失ってしまうのだ。暴力好きの韓国ではこれが是認されるのであろうか?殴った本人は別に傷害で捕まるわけではない。何もなかったような顔をしている。しかも、娘のダウンにもつかみかかる。こんなこと日本ではないでしょう。日本の常識ではありえないけど、韓国では誰も不自然に思わない現象なのかと思った。
他にも昔の日本ならあり得るけど、今はないだろうという暴力描写の場面がいくつもあった。

あとは映画の中で剣道をやっている場面がでていた。これにはビックリした。柔道はともかく剣道を韓国人が今もやっているとは知らなかった。剣道の胴着で名前の書いてあるところは漢字で書いてあった。今の韓国では漢字を見ることが少ない。自分の名前を漢字で書けない人もいるんじゃないかなと思うんだけどどうかな?

それは別として、脚本のゆさぶりが相変わらずうまいのはさすが韓国クライムサスペンスだ。いったん結末をつくっておいても二重三重に観客の目をごまかそうとするのはお見事。残念ながらこのレベルまで日本のサスペンス映画は達していない。

(参考作品)


殺人の疑惑
父親を殺人犯と疑う
悪魔は誰だ
同じくイ・ヒョンホ誘拐殺人事件を題材にしている傑作(参考記事)


殺人の追憶
未解決事件「華城連続殺人事件」を題材


チェイサー
韓国クライムサスペンスの最高傑作(参考記事
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