映画とライフデザイン

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映画「日本春歌考」 大島渚

2015-01-06 16:20:50 | 映画(日本 昭和35年~49年)
映画「日本春歌考」は大島渚監督の1967年の作品
東京の大学を受験しようとする若者が主人公だが、「建国記念の日」設定反対と叫ぶデモなども組み込み社会的批判的な要素をもっている映画である。当時人気の荒木一郎が主演で、伊丹十三(一三)、小山明子、そしてまだデビュー間もない宮本信子、吉田日出子が出演している。



雪の降る東京の大学に、主人公豊秋(荒木一郎)は同窓の広井や丸山たちと共に大学受験のため上京してきた。その試験場には、ベトナム戦争反対の署名をする美しい女子学生がいた。彼女のそばに近づいていくが、女は豊秋の視線を感じ「藤原×××」と署名し立ち去る。


豊秋たちが街へ出ると、建国記念日反対のデモの行列があった。意味もなく行列について行ったところ、かつて彼らの教師で、いま大学のドクターコースに学んでいる大竹(伊丹一三)と彼の恋人高子(小山明子)が連れ添って歩いていた。豊秋たちは高子の跡をつけるが、それに気づいた高子に用件を聞かれるとただ逃げ去るしか無かった。

翌日、クラスメートの女生徒早苗(宮本信子)や幸子と会った彼らは、大竹を訪ねた。大竹は居酒屋で春歌を歌い始めた。大竹を慕う女生徒たちも一緒に歌っていた。その夜、忘れ物を取りに大竹を訪ねた豊秋は、酔いつぶれて寝ている大竹を見たがそのまま帰った。


ところが、翌朝大竹の死体が発見された。その話を聞いて女生徒は泣いて悲しんだ。刑事から検死の結果はガス管の取り扱いをあやまる一酸化炭素中毒と聞かされた豊秋は忘れ物を取りに部屋に行ったことを告げる。刑事が不審がり取り調べを受けたが、やがて解放された。豊秋は、遅れて到着した高子の前で大竹が歌った春歌を歌う。最後に大竹が歌っていたと聞かされた高子は泣き崩れる。

先に帰る早苗たちを上野駅で見送った豊秋たちは、春歌を唄いながら彼女たちや藤原を犯すことを想像する。大竹の葬式の後、豊秋は居残った高子を訪ね、大竹を見殺しにしたことを告白し、一番から十番まで春歌を歌うと十一番目に高子にのしかかるのであるが。。。

なんかわけのわからないストーリーである。
ただ、ロケ中心なので昭和42年の貴重な映像がみれるのがいい。雪がずいぶんと積もっている。当時小学生低学年だった自分にもこの時期にものすごく雪が降って、自宅でかまくらをつくって、休校後小学校で雪だるまをつくった記憶がある。


東京で雪が降るかどうかはその年によって違う。ある意味、運よく雪のロケーションとなってしまったのであろう。

いきなりピラミッド校舎らしき姿が見れるので、学習院大学?と思ってしまうが、よく見ると違うようだ。
そのあと題名である「春歌」が何度も歌われる「一つ出たほいのよさほいのほい。。」高校以降にずいぶんとうたった懐かしい歌だ。自宅から近いところに、2階に宴会場のある飲み屋があった。ある大学が自宅の近くにあり、カラオケがある前は、宴会場で手拍子しながら学生たちが歌っていた。

1.春歌
高校時代、文化祭、運動会などのイベントがあるとそのあとの打ち上げでは、みんなでこの手の歌を歌ったものだ。自分は品川区だったが、大田区から通っている生徒が多く、目蒲線に乗って蒲田によく行った。
「ちんたらかんたら学校サボって蒲田へ行くと、〇女のおねえちゃんが横目で眼とばす。もみたいな、もみたいな。。。〇女のおねえちゃんの肩をもみたいな」
なんて歌うのだ。渋谷へ行くと「館(やかた)」の女の子だったり、目白だったら「ポンジョ」の子だったりするのだ。よく歌ったなあ。

柔道部(うちは班といった)では先輩たちが集まって忘年会をやったりすると、現役の我々は高校1年から酒を飲まされてこの手の歌を歌わされた。一年上の主将が芸達者で先輩たちを笑わせていた。もちろん「一つ出たほいのよさほいのほい。。」もバリバリ歌っていた。今の子たちはかわいそうだ。妙に法令順守になってしまったので、酒も飲めない。こんなことってありえないだろう。
当時、自分たちを飲ませた先輩の中には、日本の財界を代表する方もいるが、どんなふうに思っているのであろう。

2.伊丹十三と宮本信子の出会い
この映画は伊丹十三、宮本信子夫妻の出会いの場であったようだ。伊丹はアメリカ映画「北京の55日」にも出演して、名著「ヨーロッパ退屈日記」も世に出て、このころはある程度の名声を得ていた。宮本信子はまだ無名だ。映画の中で宮本の伊丹を見る視線が熱い。演技だとは思うが、そうは思えないような実感のこもったものだ。


2人の名コンビでヒット作を量産したが、20年後の2人を予測した人はいなかっただろう。ちなみに伊丹、宮本夫妻の媒酌人は作家の山口瞳である。伊丹は山口瞳原作高倉健主演「居酒屋兆治」にも出演している。

3.美しい女優たち
雪の中で出会う女子学生田島和子が素敵だ。映画の中で彼女の自宅だという大豪邸は駒込駅から近い「旧古河庭園」で撮影されている。あとは大島渚夫人小山明子が美しい。「日本の夜と霧」の時も思ったが、その年齢から少し年を重ねたこの映画でも光る美貌だ。ヘンにインテリぶるその口ぶりが嫌味だけど


最後にフォークギターをもった大学生たちが集まる集会が映る。そこに田島演じる学生が参加している。いかにもその当時の主流といった感じだ。正直この時代の左翼学生というのは一番タチが悪い。自分の一番嫌いな人種だ。
でも左翼学生って美女にもてるよね。戦前の美人女優岡田嘉子がアカの演出家杉本と樺太で逃避行するのをはじめとして、大島渚に対する小山明子も1つの例だろう。そういう時代だったのかもしれない。女にもてるというだけでアカに染まった奴も大勢いるだろう。自分と同世代で佐藤優がいて、彼の話だと学生時代京都はまだまだ左翼思想にかぶれた人が多かったようだけど、自分の学校ではありえない世界だった。

美人ではないけど、個性派女優吉田日出子も出演している。この映画に集まっているメンバーのレベルは高い。

コメント (6)
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