映画「THE NET 網に囚われた男」を映画館で見てきました。
韓国の奇才キムギドク監督の新作、ヘビー級のパンチをくらったような重さがある傑作である。
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系統としてはキムギドクが製作にかかわった北朝鮮の工作員が一般家庭に潜んで活動するという話の「レッドファミリー」と同様に南北朝鮮問題をとりあげている。日本公開では「殺されたミンジュ」に続くが、その間に福島原発事件に関わる話の「STOP」という映画があるらしい。どうもそれは3月に日本公開のようだ。
韓国映画は最終的に「チェイサー」やキムギドク監督作品「嘆きのピエタ」など重い題材で、救いようのない結末に流れることがある。これも同様で、南北関係がこうなっている以上結末がハッピーになりにくい。途中どうなるのかハラハラすると同時に、やるせない感じを思った。映画館で鑑賞している周辺の女性はみんな途中からハンカチで目を押え泣いていた。
北朝鮮の寒村で、漁師ナム・チョル(リュ・スンボム)は妻(イ・ウヌ)子と共に貧しくも平穏な日々を送る.その朝も、唯一の財産である小さなモーターボートで漁に出るが、魚網がエンジンに絡まりボートが故障。チョルは意に反して、韓国側に流されてしまう。
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韓国の警察に拘束された彼は、身に覚えのないスパイ容疑で、取調官(キム・ヨンミン)から執拗で残忍な尋問を受けることに。一方、チョルの監視役に就いた青年警護官オ・ジヌ(イ・ウォングン)は、家族の元に帰りたいというチョルの切実な思いを知り、次第にその潔白を信じるようになる。そんな時、やはりスパイ容疑で捕えられた男が、チョルにソウルにいる娘への伝言を託して、自ら舌を噛み切り息絶える。やがて、チョルを泳がせようという方針から、物質文明を極め人々が自由に闊歩する、ソウルの繁華街に放置される。街を彷徨う彼は、家族を養い弟を大学に入れるために身を売る若い女性と出会い、経済的繁栄の陰に隠されたダークサイドに気付く。何とか探し出したかの男の娘に伝言を告げ、ジヌが待つ場所に戻るチョル。
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ところが、街中のチョルの姿を映した映像が北に流れ、南北関係の悪化を懸念した韓国当局は、チョルを北朝鮮に送還する。資本主義の誘惑を退け、晴れて祖国に帰って来たチョル。だが、彼を待ち受けていたのはいっそう苛酷な運命だった。(作品情報引用)
以下ネタバレありご注意
1.南北の対立
キムギドクは「葛藤を抱える韓国と北朝鮮、その2つの国家のなかでひとりの男が苦痛を受け、非情な運命にさらされていく。状況設定がすでに残酷で恐ろしいもの。」
(作品情報引用)としている。本当につらい立場だ。まったく本意でなく国境を渡ってしまうと、脱北者のレッテルを張られてしまう。
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主人公は北朝鮮よりも発展しているソウルの町を見るまいと目をつぶる。この設定は日本ではないが、もし先の大戦後ソ連の北海道支配を当時のトルーマン大統領とマッカーサー元帥が阻止しなかったら、現状の北方領土問題でもわかる通り朝鮮半島と同じような状況となったかもしれない。アメリカには感謝しなければならない。
2.公安当局の取り調べ
南北の公安当局それぞれに主人公は取り調べを受ける。南側の取り調べには反抗的な態度をとり、暴力もふるう主人公が一転自国の取調官にはいっさい逆らえないのが印象的だ。ご存じのように北朝鮮の幹部が将軍様の逆鱗に触れ、次々射殺されているのは日本でも報道されている。
それでもキムギドクは南北ほぼ同じような手法で取り調べているように描く。
それぞれの国を舞台にした取調室の光景は印象的だ。ナムチョルを尋問する両国の取調官たちが、まるで合わせ鏡のような態度をとることについて「どちらの国の人間にしろ、権威主義的で攻撃的、卑怯な側面を見せたかった」と述べ「シナリオ執筆段階から意識していたこと」とキムギドクは告白。(キムギドクインタビューより)
いずれも背後から話しかけるような設定で意識的にしている。
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南側の取締官が暴力的で何としてでも主人公をスパイに仕立てて自分の手柄にしようというところや南側の責任者が失敗を恐れて強引にスパイに仕立てるのを抑え、マスコミにも注意を払うところが印象的だ。同時に南北両国の取調官にそれぞれ不正がある面を強調する。
3.リュ・スンボムとイ・ウヌ
主人公チョルは映画を見はじめてすぐに以前見たことあることに気づく。「ベルリンファイル」での北朝鮮公安監視員と韓国版「容疑者Xの献身」での主人公の数学者役はいずれもよかった。特に数学者役は日本版が元来二枚目の堤真一を持ってきたのに対し、まさにネクラそのもので福山に対応する探偵役がいない中主人公を巧みに演じた。でもここでの主人公役は南北問題に挟まれ行き場所のない姿になりきっているし、うまい!
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イ・ウヌは「メビウス」の一人二役が印象的だ。最初主人公の奥さんの顔を見て気づかなかった。最後にヌードになり乳房をみてアレあの時の?と感じたが、常連になりつつある。最後に向けてずいぶんと切ないシーンだよね。
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韓国の奇才キムギドク監督の新作、ヘビー級のパンチをくらったような重さがある傑作である。
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韓国映画は最終的に「チェイサー」やキムギドク監督作品「嘆きのピエタ」など重い題材で、救いようのない結末に流れることがある。これも同様で、南北関係がこうなっている以上結末がハッピーになりにくい。途中どうなるのかハラハラすると同時に、やるせない感じを思った。映画館で鑑賞している周辺の女性はみんな途中からハンカチで目を押え泣いていた。
北朝鮮の寒村で、漁師ナム・チョル(リュ・スンボム)は妻(イ・ウヌ)子と共に貧しくも平穏な日々を送る.その朝も、唯一の財産である小さなモーターボートで漁に出るが、魚網がエンジンに絡まりボートが故障。チョルは意に反して、韓国側に流されてしまう。
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韓国の警察に拘束された彼は、身に覚えのないスパイ容疑で、取調官(キム・ヨンミン)から執拗で残忍な尋問を受けることに。一方、チョルの監視役に就いた青年警護官オ・ジヌ(イ・ウォングン)は、家族の元に帰りたいというチョルの切実な思いを知り、次第にその潔白を信じるようになる。そんな時、やはりスパイ容疑で捕えられた男が、チョルにソウルにいる娘への伝言を託して、自ら舌を噛み切り息絶える。やがて、チョルを泳がせようという方針から、物質文明を極め人々が自由に闊歩する、ソウルの繁華街に放置される。街を彷徨う彼は、家族を養い弟を大学に入れるために身を売る若い女性と出会い、経済的繁栄の陰に隠されたダークサイドに気付く。何とか探し出したかの男の娘に伝言を告げ、ジヌが待つ場所に戻るチョル。
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ところが、街中のチョルの姿を映した映像が北に流れ、南北関係の悪化を懸念した韓国当局は、チョルを北朝鮮に送還する。資本主義の誘惑を退け、晴れて祖国に帰って来たチョル。だが、彼を待ち受けていたのはいっそう苛酷な運命だった。(作品情報引用)
以下ネタバレありご注意
1.南北の対立
キムギドクは「葛藤を抱える韓国と北朝鮮、その2つの国家のなかでひとりの男が苦痛を受け、非情な運命にさらされていく。状況設定がすでに残酷で恐ろしいもの。」
(作品情報引用)としている。本当につらい立場だ。まったく本意でなく国境を渡ってしまうと、脱北者のレッテルを張られてしまう。
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主人公は北朝鮮よりも発展しているソウルの町を見るまいと目をつぶる。この設定は日本ではないが、もし先の大戦後ソ連の北海道支配を当時のトルーマン大統領とマッカーサー元帥が阻止しなかったら、現状の北方領土問題でもわかる通り朝鮮半島と同じような状況となったかもしれない。アメリカには感謝しなければならない。
2.公安当局の取り調べ
南北の公安当局それぞれに主人公は取り調べを受ける。南側の取り調べには反抗的な態度をとり、暴力もふるう主人公が一転自国の取調官にはいっさい逆らえないのが印象的だ。ご存じのように北朝鮮の幹部が将軍様の逆鱗に触れ、次々射殺されているのは日本でも報道されている。
それでもキムギドクは南北ほぼ同じような手法で取り調べているように描く。
それぞれの国を舞台にした取調室の光景は印象的だ。ナムチョルを尋問する両国の取調官たちが、まるで合わせ鏡のような態度をとることについて「どちらの国の人間にしろ、権威主義的で攻撃的、卑怯な側面を見せたかった」と述べ「シナリオ執筆段階から意識していたこと」とキムギドクは告白。(キムギドクインタビューより)
いずれも背後から話しかけるような設定で意識的にしている。
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南側の取締官が暴力的で何としてでも主人公をスパイに仕立てて自分の手柄にしようというところや南側の責任者が失敗を恐れて強引にスパイに仕立てるのを抑え、マスコミにも注意を払うところが印象的だ。同時に南北両国の取調官にそれぞれ不正がある面を強調する。
3.リュ・スンボムとイ・ウヌ
主人公チョルは映画を見はじめてすぐに以前見たことあることに気づく。「ベルリンファイル」での北朝鮮公安監視員と韓国版「容疑者Xの献身」での主人公の数学者役はいずれもよかった。特に数学者役は日本版が元来二枚目の堤真一を持ってきたのに対し、まさにネクラそのもので福山に対応する探偵役がいない中主人公を巧みに演じた。でもここでの主人公役は南北問題に挟まれ行き場所のない姿になりきっているし、うまい!
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イ・ウヌは「メビウス」の一人二役が印象的だ。最初主人公の奥さんの顔を見て気づかなかった。最後にヌードになり乳房をみてアレあの時の?と感じたが、常連になりつつある。最後に向けてずいぶんと切ないシーンだよね。
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