映画「悪なき殺人」を映画館で観てきました。
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これは今年でピカイチのミステリーである。
緻密に細部まで設計された映画の構成にはうならざるを得ない。フランスの雪が降る山岳地帯にある小さな農場と遠く離れたアフリカコートジボワールがなぜか1つの出来事に絡んでくるのだ。
「悪なき殺人」の原題は「動物だけが」である。確かに主要登場人物は動物を飼っている。真実も知っている。フランスのドミニクモル監督の作品だ。登場人物にスターは誰もいない。
作品情報には殺人をめぐる黒澤明の「羅生門」形式のスタイルの映画と書いてある。ただ、ちょっとこの書き方は違う。「羅生門」のように殺人の顛末がどうだったかと証言を追うわけではない。前後を揺さぶる構成は「パルプフィクション」をはじめとした時間軸をずらすのが得意なクエンティンタランティーノ作品や誰もが勘違いをしていて誤解が誤解を生む「ブラッドシンプル」などのコーエン兄弟の映画の匂いを感じさせる。
事件に関わるそれぞれの登場人物の視点ということで作品は流れるが、最初のアリスの視点だけ触れてみる。
雪が降り積もるフランスの高原地帯が舞台。共済組合の外交職員のアリスは、変人と周囲から思われている農場を営むジョゼフに接近している。この日もジョゼフを誘惑する。しかし、いつもとは態度が違う。早々に引き上げるアリスは帰る途中、路上に放ってある車を見かける。
自宅に帰ると、TVニュースでエヴリーヌという女性が行方不明になって車だけ残されているのを知る。アリスの夫である牧場主のミシェルは、家でパソコンの画面に向かっていて関心もなさそうだ。やがて、アリスの家に警官が聞き込みにやって来る。仕事柄ジョゼフについて何か知っているか?と聞かされる。どうやら、エヴリーヌの失踪について、ジョゼフに疑惑があるようだ。
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先ほど会ったとき、ジョゼフの様子もおかしかったので、アリスは気になりジョゼフの家に向かう。誰も出てこないので奥へ行くと、愛犬の無惨な死体を見つける。ようやくジョゼフが出てくるが、追い出される。アリスが家に戻ると夫のミシェルの様子がおかしい。電話口で大声を出した後に外出してしまう。
この辺りで第一話が終わる。第二話のジョゼフの視点からは語るのをやめておこう。ここでも真実はわからない。第三話では死んだエヴリーヌとレズの関係にあったマリオンが話の中心になる。この映画では、普通では考えられない異常行動を起こす人と人を欺く人物を数人登場させ普通の人に混ぜる。登場人物の設定はうまい。
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⒈伏線が意味を持つ
この映画の綿密な脚本の設計図の前提に、伏線となるセリフをいくつも散りばめているというのがある。第一話ではアリスがいて,仲の良いのジョセフが疑われていると言う事実しかない。犯人は到底特定できない。でも,アリスやジョセフや夫のミシェルが言った一言一言に最終章に向けての伏線がちりばめられている。思いっきりジョゼフが犯人だと決めつけていきそうな流れをつくった後に、別の流れをつくる。観客に誤解させる伏線と真実への伏線をつくるのだ。
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第二話は,アリスがジョセフの家を訪ねてきた直前のある事実からスタートする。一話とかぶるが、目線が違う。アリスの知らない事実がある。そのような形で、それぞれの登場人物の視点で事件の経過を追う。そして、一部ダブりながら新しい局面、真意が浮き彫りになる。重ね合わせていくと、いくつもの誤解があらわになる。誤解が誤解を生み悲劇につながる構図だ。
⒉つながりがつながりを生む社会
仕事をしていると、まったく関係のない筋が突然つながり上手くいったりいかなかったりする。居住地が数千キロ離れているところとの関係が浮き上がるのは、ネットのおかげだろう。もう100年以上前から無線にしても通信手段でワールドワイドにはなっていたが、身近で金銭的にも気軽ではなかった。ここでは、アフリカコートジボワールの詐欺グループが関与する。まだまだ貧しい国である。そんな国のあんちゃんでも関わりが出てくるのがネット社会の怖さでもある。インチキにはご注意を
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いずれにせよ、ここではこれ以上ネタバレは省きたい。観客を欺きうならせるための脚本の設計図の見事さに身を任せて欲しい。必見のミステリーである。最後の締めもそうくるかと思わず唸った。
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これは今年でピカイチのミステリーである。
緻密に細部まで設計された映画の構成にはうならざるを得ない。フランスの雪が降る山岳地帯にある小さな農場と遠く離れたアフリカコートジボワールがなぜか1つの出来事に絡んでくるのだ。
「悪なき殺人」の原題は「動物だけが」である。確かに主要登場人物は動物を飼っている。真実も知っている。フランスのドミニクモル監督の作品だ。登場人物にスターは誰もいない。
作品情報には殺人をめぐる黒澤明の「羅生門」形式のスタイルの映画と書いてある。ただ、ちょっとこの書き方は違う。「羅生門」のように殺人の顛末がどうだったかと証言を追うわけではない。前後を揺さぶる構成は「パルプフィクション」をはじめとした時間軸をずらすのが得意なクエンティンタランティーノ作品や誰もが勘違いをしていて誤解が誤解を生む「ブラッドシンプル」などのコーエン兄弟の映画の匂いを感じさせる。
事件に関わるそれぞれの登場人物の視点ということで作品は流れるが、最初のアリスの視点だけ触れてみる。
雪が降り積もるフランスの高原地帯が舞台。共済組合の外交職員のアリスは、変人と周囲から思われている農場を営むジョゼフに接近している。この日もジョゼフを誘惑する。しかし、いつもとは態度が違う。早々に引き上げるアリスは帰る途中、路上に放ってある車を見かける。
自宅に帰ると、TVニュースでエヴリーヌという女性が行方不明になって車だけ残されているのを知る。アリスの夫である牧場主のミシェルは、家でパソコンの画面に向かっていて関心もなさそうだ。やがて、アリスの家に警官が聞き込みにやって来る。仕事柄ジョゼフについて何か知っているか?と聞かされる。どうやら、エヴリーヌの失踪について、ジョゼフに疑惑があるようだ。
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先ほど会ったとき、ジョゼフの様子もおかしかったので、アリスは気になりジョゼフの家に向かう。誰も出てこないので奥へ行くと、愛犬の無惨な死体を見つける。ようやくジョゼフが出てくるが、追い出される。アリスが家に戻ると夫のミシェルの様子がおかしい。電話口で大声を出した後に外出してしまう。
この辺りで第一話が終わる。第二話のジョゼフの視点からは語るのをやめておこう。ここでも真実はわからない。第三話では死んだエヴリーヌとレズの関係にあったマリオンが話の中心になる。この映画では、普通では考えられない異常行動を起こす人と人を欺く人物を数人登場させ普通の人に混ぜる。登場人物の設定はうまい。
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⒈伏線が意味を持つ
この映画の綿密な脚本の設計図の前提に、伏線となるセリフをいくつも散りばめているというのがある。第一話ではアリスがいて,仲の良いのジョセフが疑われていると言う事実しかない。犯人は到底特定できない。でも,アリスやジョセフや夫のミシェルが言った一言一言に最終章に向けての伏線がちりばめられている。思いっきりジョゼフが犯人だと決めつけていきそうな流れをつくった後に、別の流れをつくる。観客に誤解させる伏線と真実への伏線をつくるのだ。
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第二話は,アリスがジョセフの家を訪ねてきた直前のある事実からスタートする。一話とかぶるが、目線が違う。アリスの知らない事実がある。そのような形で、それぞれの登場人物の視点で事件の経過を追う。そして、一部ダブりながら新しい局面、真意が浮き彫りになる。重ね合わせていくと、いくつもの誤解があらわになる。誤解が誤解を生み悲劇につながる構図だ。
⒉つながりがつながりを生む社会
仕事をしていると、まったく関係のない筋が突然つながり上手くいったりいかなかったりする。居住地が数千キロ離れているところとの関係が浮き上がるのは、ネットのおかげだろう。もう100年以上前から無線にしても通信手段でワールドワイドにはなっていたが、身近で金銭的にも気軽ではなかった。ここでは、アフリカコートジボワールの詐欺グループが関与する。まだまだ貧しい国である。そんな国のあんちゃんでも関わりが出てくるのがネット社会の怖さでもある。インチキにはご注意を
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いずれにせよ、ここではこれ以上ネタバレは省きたい。観客を欺きうならせるための脚本の設計図の見事さに身を任せて欲しい。必見のミステリーである。最後の締めもそうくるかと思わず唸った。