映画とライフデザイン

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映画「満ち足りた家族」ソルギョング&チャンドンゴン

2025-01-21 20:07:05 | 映画(自分好みベスト100)
映画「満ち足りた家族」を映画館で観てきました。


映画「満ち足りた家族」は韓国の人気スターソル・ギョングとチャン・ドンゴンが兄弟役で共演するサスペンスタッチのドラマだ。ホ・ジノがメガホンを持つ。4人並んで食卓を囲む写真からは内容が類推できない。ここのところハズレの韓国映画を観ることが多かった。自分と相性のいいソルギョングがでているので気になり映画館に向かう。想像を超える濃厚でドロドロとした作品だった。

兄ジェワン(ソル・ギョング)は金銭を積まれたら危うい殺人者の弁護も引き受ける敏腕弁護士だ。 再婚した若き美人妻ジス(クローディア・キム)には赤ちゃんが生まれて高校生の娘とともに豪華マンションに住む。一方、弟のジェギュ(チャン・ドンゴン)は良心的な小児科医だ。 老いて認知症気味になった母と同居して年長の妻ヨンギョン(キム・ヒエ)と高校生の息子と共に住んでいる。

兄弟2人は、それぞれの妻を伴って高級レストランの個室でディナーを共にして母親のことなどを相談するが、両親不在の時に兄の娘と弟の息子が夜遊びにでて、酒を飲んでしまう。その時にホームレスの住処で起きた2人の未成年の過ちが両家族の問題になっていく。


韓国映画の久々によくできた傑作だ。
ラストでは思わず映画館の席で驚きの大きな声をあげてしまった。柔道の試合できれいな技で一本決まったような感覚を持つ。良かった。

セレブの食事会的な食卓を囲むスチール写真とは想像もつかないドロドロとした展開になる。韓国映画得意のひねりの効いた脚本は見事だ。

いきなりクルマ同士のトラブルで人が轢き殺される場面が出てくる。いかにも韓国映画らしい強烈な場面だ。主要出演者ではないようだ。結局は金持ちのボンボンが滅茶苦茶な運転をやって逮捕されて、その弁護をソルギョング演じる弁護士が引き受けるということを示すためだ。金の亡者に見せたかったのか。しかも、ソルギョングの妻がずいぶんと若くてセレブっぽい。高校生の娘がいて継母との折り合いは微妙なようだ。複雑な家庭環境だというのを示す。


弟は医師だけど、交通事故に巻き込まれて負傷した女の子の手当てをする。兄が加害者の弁護をして、弟が被害者の担当医師なんて微妙な関係だ。自宅では引きとった夫の母親が痴呆も入っているようだが、ともかく破茶滅茶で嫁の言うことを聞かない。自分の息子に怒られると少し静かになる。嫁の負担が大きい。年下の兄嫁をいびるのは、いかにも韓国らしいネチっこさを繰り返し見せつける。


こんなプロフィールを映画ではそれぞれの子どもたちも含めて掘り下げていく。キャラクターづくりに成功している。しかも、観終わってこの映画のストーリーにピッタリあったキャスティングだなあと感心する。責任感のある医師の弟が善で金のためなら誰でも弁護する兄の方が悪の立場と途中経過までは進む。事件が起きてしばらくした時点でお互い彷徨う。それぞれの妻だけでなく両方の子どももサイコスリラーにも見えるこの映画では全員主人公に近い存在感がある。

どんな話なのかの先入観を持たずに映画館で見て欲しい。


(これからはネタバレに接近)
この映画の主題は、兄の娘と弟の息子が一緒に悪さをしてしまうのだ。具体的にはダンボールで寝ているホームレスの浮浪者を悪酔いして蹴ってしまう。それが行き過ぎで浮浪者は重体だ。2人は逃げて帰る。この行為が防犯カメラに残っていて公表される。2人の行為と気づかれていない。

公表した映像を見て親たちが自分の子供がやった行為だとわかってしまう。警察に自白するべきなのかどうか?子供たちは受験戦争のど真ん中である。事件をめぐる両親4人の葛藤がこの映画のテーマだ。浮浪者は生きるか死ぬかの瀬戸際だ。死んでくれた方がいい。さあどうなる?

そんな心理描写を巧みに誘導する脚本が上手い。しかも俳優がいい。
フルボディのワインにも似た重厚感を感じる傑作だと思う。

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