映画とライフデザイン

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映画「バカ塗りの娘」 堀田真由&小林薫

2023-09-02 18:44:38 | 映画(日本 2019年以降主演女性)
映画「バカ塗りの娘」を映画館で観てきました。


映画「バカ塗りの娘」は青森県の伝統工芸である津軽塗の職人とその娘の物語である。初めて知ったが、塗っては研ぐを繰り返す手間のかかる手法で完成した漆器は美的感覚に優れている。監督は不思議な映画だった「まく子」鶴岡慧子で、津軽塗の職人に小林薫、その娘が堀田真由だ。弘前で家を借りて撮影された。青森を舞台にした映画は相性がよく、2021年の「いとみち」には特に感動した。津軽の岩木山をバックにした風景が実に美しい。ポスターを見て期待して早速映画館に向かう。

青森の弘前で伝統の津軽塗の工房を営む青木清史郎(小林薫)は、高校を出てからスーパーでパートをしながら仕事を手伝っている娘の美也子(堀田真由)と暮らしている。本来は坂東龍汰)が跡を継ぐのを父が希望していたが、結局美容師になってしまう。元妻も夫に愛想をつかして家を出ていった。美也子が津軽塗を真剣にやりたいと言っても父親は無理だというばかりだ。でも、美也子は廃校になった母校にあったピアノに津軽塗で色づけしようと本気を出して取り組む。


不器用な生き方をしていた23歳の女の子が、父親とともに郷土の工芸品づくりで身を立てようと奮闘する成長物語だ。好感がもてる。

先日観たばかりの「高野豆腐店の春」と物語の構造は類似している。地方の町を舞台にして、職人肌の父と娘が一緒に暮らして家業に取り組む。頑固オヤジの振る舞いに翻弄されながら、娘が父についていく姿を見るのは娘を持つ自分には親しみがある。そういえば、同じ青森が舞台の「いとみち」豊川悦司の父親と娘の物語だった。普通に父娘の交情を描いていくだけかと思ったら、若干意外な題材を組み込む。それがわかった時は思わず「え!」と声が出てしまった。

髙森美由紀の原作「ジャパン・ディグニティ」はあれど、プロデューサーと鶴岡慧子監督が数年かけて現地で津軽塗の世界を追求したのがよくわかる映像だ。小林薫と堀田真由も工房で津軽塗の漆器を実際に製作している。作品情報で津軽塗の解説を見ると、制作者の強い思い入れが感じられる。父娘が仕事する工房も実際に職工が使っている部屋なのでリアル感がある。岩木山はもとより、弘前内のレトロ感覚あふれる建物でのロケが随所に映るのもいい。


堀田真由はもしかして初めて観るかもしれない。映画のスタートで自転車を走らせる堀田真由をカメラが追い続けるシーンがある。さわやかで清々しい。不器用に生きている姿をスーパーでオロオロする場面などで示す。でも、青森の田舎にこんなにかわいい子はそうはいないと思う。普通だったら放っておかないだろう。ちょっとかわいすぎる。想いを寄せる花屋で働く男との関係が意外な展開になるのには自分も驚いた。

小林薫の出演作はよく観ている。今回は津軽塗の職工だ。地方都市の職人肌で熟練を要する仕事に長い間携わった頑固オヤジという役柄が多くなった。「深夜食堂」の店主だけでなく、昨年も「冬薔薇」の船乗りや「とべない風船」の元教師役などに味があった。青森弁の習得に苦労したとは作品情報での本人弁だ。確かに地元民が話す青森弁は普通の日本人が聞いてよくわからないだから気持ちはよくわかる。


美也子が慕うオバさんにこれまた出演作が多い名脇役木野花で、どうも青森県出身らしい。小林薫みたいには苦労しなかっただろう。家を飛び出した兄を演じるのが坂東龍汰だ。つい最近観たばかりの「春に散る」に出ていることを知り、横浜流星が世界戦の前哨戦で闘う相手ボクサー役だと映画が終わって気づきギャップに驚いた。
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