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Netflix「極悪女王」ゆりやんレトリィバァ&唐田えりか&剛力彩芽

2024-09-23 19:06:48 | 映画(日本 2019年以降主演女性)
Netflixドラマ「極悪女王」は女子プロレスラーダンプ松本とクラッシュギャルズの長与千種、ライオネル飛鳥の3人を中心に繰り広げられる1980年代の物語である。


監督は白石和彌だ。文藝春秋出身のノンフィクションライター柳澤健「1974年のメリークリスマス」「2016年の文藝春秋」といった名作を書いている。その柳澤に「1985年のクラッシュギャルズ」という1980年代の女子プロレスについてそれぞれの私生活まで踏み込んだノンフィクションがある。これがムチャクチャおもしろい。自分は就職してまもない頃、当時は女子プロレスにまったく無縁だったのに引き込まれる

「極悪女王」は80年代の女子プロレスを描いたドラマで楽しみにしていた。ましてや大ファンの唐田えりかが出演するとなると見逃せない。配信開始後早々に観たが、大興奮しながらほぼ一気に観てしまう。よかった。「地面師たち」に引き続きNetflixはさすがだ。

ジャッキー佐藤とマキ上田ビューティーペアの黄金時代、高校生の松本香(ゆりやんレトリィバァ)は女子プロレスの魅力に取りつかれていた。1980年高校を卒業してパン屋への就職が決まると同時に女子プロレスの新人オーディションがあり挑戦する。そこにはのちにライオネル飛鳥となる北村智子(剛力彩芽)と長与千種(唐田えりか)も参加していた。何とかクリアして3人とも全日本女子プロレスに入門する。

運動神経のいい智子はすんなりプロデビューできるようになるが、長与と松本はプロデビューに至らない劣等生扱いだった。しかも、先輩のイジメも受けて長与は何度も挫けそうになる。やがて、試合に出られるようになっても立場は変わらない。これで辞めようかと思った時、長与千種は智子と観客も熱狂させる迫力ある試合をして認められる。2人はクラッシュギャルズとしてコンビを組む。


一方で松本香悪役として売り出そうとするが、悪役になりきれない試合しかできない。しかも、母親に迷惑をかけっぱなしの父親も放蕩が続き家庭内に面倒をかかえる。もともと、劣等生同士だった2人は仲が良かったのに、雑誌の取材で長与がダンプのことに何も触れないのに発奮して、突如極悪な悪役レスラーに変身してリングに現れる。先輩レスラーの反感もかいながらダンプ松本として悪役に徹するようになる。

すばらしいドラマだった。女優陣の鍛錬を身に沁みて感じる。
猛犬のようなダンプ松本を演じたゆりやんレトリィバァの迫力もすごいけど、ひいき目も若干あるが、唐田えりかにはビックリした。何とバリカンでアタマを刈って丸坊主になってしまうその心意気に敬意を表する。久々に見る剛力彩芽もプロレスファイトに没頭して見直してしまう。

女子プロレスを真剣に見ていなくても、今の50代半ばから上はビューティーペアの歌は知っているだろうし、クラッシュギャルズのファンも多いだろう。ダンプ松本がプロレスだけでなくコメディ番組などでも大暴れをしたのも知っているはずだ。オマケにジャガー横田は医者との間に高齢出産で産んだセガレの進学話で別の意味で有名だ。それぞれの固有名詞には誰もがなじみがあって、初めて出くわす人も少ないのではないか。

それだけにある意味フィクションであってもノンフィクションに近い「極悪女王」のストーリーにはすんなり入っていける。

⒈ダンプ松本(ゆりやんレトリィバァ)
もともとジャッキー佐藤の熱狂的ファンで試合の応援に行っていた。家庭環境は良くない。父親は外に女をつくり金欠の時だけ家に帰ってくる。母親は父親を甘やかして金を渡す。外でできた子にも香とつけてしまい呆れられる。他のプロレスラーも同じように家庭環境は悪い。プロレス界に入門してもなかなか芽が出ない。シーズン5のうち3まではさっぱりだ。それがシーズン4で変貌する。

顔に極悪ムードの化粧をして、竹刀を振り回す。観客席もグチャグチャにする。反則はやり放題。場外乱闘で椅子で相手の頭を叩くのは序の口でハサミで相手の頭を刺す。すさまじい流血だ。普段の生活でも同僚との関係を断つ。まさに猛犬のように荒々しくなる。長与千種との決戦は大流血だけど見ものの一つだ。


⒉唐田えりか(長与千種)
長崎の出身。両親とも家を飛び出して、親戚をたらい回し。小さい頃から空手をやっていた。ダンプ松本同様なかなかプロデビューをさせてもらえなかった。窃盗をしたのかと疑われイジメを受ける。もう辞めてやれと思って、ライオネル飛鳥との試合に気合を入れて臨むと観客から大ウケ。上層部からも見直されてクラッシュギャルズを組むことになり人気はピークになる。

ゆりやんレトリィバァ(ダンプ松本)が主演というクレジットだが、実質的には唐田えりかとダブル主演と言っていいだろう。今やメジャー監督に出世した濱口竜介監督の「寝ても覚めても」東出昌大の相手役になった時からずっとファンだ。不倫話でパッシングを受けたのは悲劇だったけど、よく耐えた。でも、がいても唐田えりかに惹かれる男の哀しい性はよくわかる。

その後映画に出てもカワイイ系ばかりだったけど、このドラマではプロレス技も次から次に繰り出し、かなり鍛錬したのがよくわかる。闘う相手への目つきも鋭いバリカンで丸坊主になったのには心から拍手を送りたい。ちょうどいい具合に東出も結婚することだし、世の女性陣の嫉妬もおさまるだろうからドンドンいい役を回してあげてほしい


⒊剛力彩芽(ライオネル飛鳥)
クラッシュギャルズでも人気があったのは長与千種の方だった。ただ、運動神経が良く、レスリングそれ自体ではライオネル飛鳥の方が一歩上の評価である。クラッシュギャルズとして歌を歌うことに徐々に疑問を感じてくる。もっとレスリングの練習をするべきだと長与千種と考えを異にする。

剛力彩芽がこのドラマに出演してプロレスラーを演じると知った時は意外に思った。そう言えば以前より見ないなあと思ったら、オスカープロモーションを飛び出していたことをすっかり忘れていた。さすがに出番は減るよね。流血シーンは唐田えりかの方が多いけど、剛力彩芽も頑張っていると思う。これをきっかけに飛躍できるといいね。


⒋ジャッキー佐藤とジャガー横田
ドラマがスタートする1980年はジャッキー佐藤がいちばんのスターだ。入門するダンプ松本も憧れていた。ところが、ジャガー横田がジャッキー佐藤との闘いに掟を破って勝ち、ジャッキー佐藤が引退することになる。そんな構図でスターの入れ替えが図られる。

プロレスは全部シナリオができているはずだが、シナリオをはずした真剣勝負に変わることもある。「ブック」という言葉が至る所に出てくる。わかっていて「ブック」を外すこともある。全日本女子プロレスの幹部松永兄弟の中でも意見が分かれて勝負が予定通りにならないこともある。そういった裏話も盛りだくさんなのも見どころだ。

ここで意外に思ったのは、ビューティーペアのジャッキー佐藤とマキ上田とが実はあまり仲が良くなかったシーンがあること。ジャッキー佐藤を演じる長身で美形の鴨志田媛夢という俳優は初めて観る。本物よりきれいだ。マキ上田は直近の出演作も多くおなじみになった芋生悠だ。

ジャガー横田水野絵梨奈が演じてずいぶんとベビーフェイスで現在TVで見せるドスの効いた貫禄ある姿と違うなあと感じる。ところが、昔の写真を見ると意外にもカワイイ系だった。思わず驚いてしまう。


ダンプ松本が主人公だけれども、ドラマを観終わったあとで改めて柳澤健の「1985年のクラッシュギャルズ」を読み直すと、色んな逸話がこの本から引用したような展開だと感じてしまう。本で言えば参考文献で引用元を記載するけど、何も書いていないのはどうかと感じてしまう。
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