映画とライフデザイン

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映画「π」ダーレン・アロノフスキー

2024-12-24 20:34:51 | 映画(洋画 99年以前)
映画「π」は1998年日本公開の「ブラックスワン」ダーレンアロノフスキー監督の初期の作品だ。


デジタルマスター化されてAmazonプライムにもラインナップされた。当時日経新聞に紹介されて日本公開時に観ている。PCの前で株価分析する数学者というコメントに惹かれて映画館に行ったのに、画面の状態、字幕もわかりづらく印象が良くなかった。株価分析が単にフィボナッチ数列だけの話だけなのかなと思ってしまった。

Amazonプライムのリストで見つけるとやはり気になる。気がつくと、2回観てしまう。早送りのないAmazonプライムでは珍しい。大画面で堪能するというより、セリフの言葉を理解するために何度も見直す映画もあるだろう。この映画はそのテイストだ。

主人公マックスコーエン(ショーンガレット)はユダヤ系、ニューヨークのチャイナタウンにあるアパートメントに1人で住んでいる。数学者で整数論を研究する。論文を書いてほしい編集者からアポイントも入ってくる。部屋はPCとその配線でごちゃごちゃしている。株価を伝える電光掲示板が流れている。近所づきあいがまったくないわけでなく、中国人の少女から3桁数字の掛け算を頼まれて暗算ですぐ答えたり、おせっかいな黒人女性も話しかけてくる。多国籍な雰囲気だ。


世の中の事象はすべて数字に置き換え理解できる。数式化すれば一定の法則があらわれる。すべての事象には法則がある。株式投資も同様で数字の裏側には法則もあるとマックスコーエンはいう。株式投資の研究もしている。π の研究をしていた老人と碁をうつ。老人は40年研究してπには法則はないと悟る。マックスがPCで株価分析している時に出力された216桁の数字が重要な数字だと老人が言う。でもプリントアウト紙を捨ててしまっていた。

やっぱりこの映画深入りするとおもしろい。
ニューヨークのチャイナタウンを中心に映し出す。治安が悪いといわれる人気のないニューヨークの地下鉄の車内にもカメラをあてる。中国人、黒人、ヒスパニック、ユダヤ人と人種のるつぼでまさしく最近の多様性社会を予言している。ギリギリの低予算で作ったにしては貧相な感じはしない。

PC画面上の文字がひと時代前のものと感じさせる。あらゆる事象を数字に置き換えるというのがCPUの発想だ。Windows95の直後でギリギリiMacは世に出ていない。パソコンが急激に進歩しつつあったが、インターネットのスピードは明らかに遅かった。それでも、株価がネットでも見れるようになっていた。ITバブルと言われるアメリカの株価急上昇前夜だ。日経新聞の記事を見て初めて日本の映画館で観た時はすでにITバブルでの急上昇が始まっていた。


2003年の東大の数学の入試問題π(円周率)が3.05より大きいのを証明する問題が出題された。ゆとり教育になった日本の教育への警鐘と言うべき出題だった。πの研究者が出てきてもπ自体にそんなにこだわっているわけではない。それでもπへの関心を高めるのにこの映画もわずかであるが寄与したかもしれない。

すべてがひと時代前なのにそんなに古い感じがしない。セリフを味わえるし、登場人物のパフォーマンスには何度観ても新しい発見がある。大画面にこだわらず家で何度も観た方がいい。ダーレンアロノフスキー監督は後の「ブラックスワン」ナタリーポートマンの精神が徐々に崩れていく姿を巧みに映し出した。


ここでも主人公マックスコーエン際立った頭脳を持ちながら、止まない頭痛のために薬漬けで精神が錯乱している。予期せぬ攻撃も受けエスカレートするけど、ある時点で吹っ切れる。疲れている人には休息が必要だ。身に沁みる。
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