映画とライフデザイン

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映画「男はつらいよ 私の寅さん」 渥美清&岸恵子

2014-10-28 19:58:07 | 映画(日本 昭和35年~49年)
映画「男はつらいよ 私の寅さん」は昭和48年(1973年)のシリーズ第12作である。
シリーズで最大の観客動員があったとのことだ。


マドンナは岸恵子である。当時フランス在住で、まだヨーロッパに渡航する人が少ない頃、羨望のまなざしで、昭和の日本国民から眺められていた。彼女の兄役が人気の絶頂から転落する頃の前田武彦である。
寅さんや柴又の家族の振る舞いはいつもの通り。

柴又のとらやでは、九州へ家族旅行を計画していた。でもおいちゃん(松村達雄)は浮かぬ顔、おみくじで凶を引いてしまったのだ。もしかして寅さん(渥美清)が帰ってくるのではと一同で思っていたところへ寅さんが帰ってくる。
妹さくら(倍賞千恵子)とおいちゃんはなかなか言い出せなかったが、御前様(笠智衆)が旅行安全のお守りと餞別を持ってきて寅さんにもわかってしまう。
いつものようにドタバタするが、家族は無事大分から熊本への旅をすることができる。
毎日酩酊しながら、寅さんも留守番の役割を果たした。

そんな時、寅さんの小学校同級生デベソ(前田武彦)がとらやを訪ねてくる。医者の息子だったが、今は放送作家のようだ。
早速とらやの2階で酒を酌み交わし、旧交を温める。うちに来いよと言われ、画家である妹りつ子(岸恵子)の住む実家に行く。酔っていた寅は、絵具をつい滑らせ、描いている最中のキャンパスを汚してしまう。ちょうどそのとき、妹が帰ってくる。それを見て激怒したりつ子は寅を追い出すが、その後りつ子が言いすぎたととらやを訪れ、寅はご機嫌になる。


そこに画廊の主(津川雅彦)がりつ子を訪ねてくる。彼は懸命にりつ子を口説こうとしているのであった。それを見てまた振られたのかと思った寅は旅に出ようとしたが、妹にとっては嫌な存在とわかるとまた残ることになり、寅は一気に入れ込んでいくようになるのであるが。。。

1.前田武彦
ちょうど1970年をはさんで68年ごろから73年までの活躍はすごかった。
芳村真理とコンビ司会をしたフジテレビ「夜のヒットスタジオ」は、芸能人ゴシップネタの話題をふりまき続けた。また、大橋巨泉と組んだ「巨泉前武ゲバゲバ90分」は人気司会者のコンビでコント55号やハナ肇の奇想天外のギャグを毎週見るのが楽しみだった。


そんな全盛時を経て、1973年に前田武彦は人気絶頂だけに起こす勇み足をする。
ある共産党議員が当選したら番組で万歳をすると、選挙応援で言ってしまう。実際に当選して本当に万歳をしてむしろ右よりのフジサンケイグループ鹿内オーナーの反感を買う。その後は干されてしまう。
この映画が撮影されたのが、いつなのかはわからない。ただ、ちょうど干された時期だけに同じ共産党支持者である山田洋次監督が前田の起用を図ったと考えてもいいかもしれない。

2.岸恵子
前田武彦演じる放送作家の弟で画家と言う設定だ。当時41歳で古巣の松竹映画に出演する。
フランス人映画監督と結婚して、パリに在住というイメージは今からすると考えられないくらいハイソなイメージであった。
この寅さん映画の前に萩原健一共演「約束」に出演していて、日本での露出度が増えてくる。
三浦友和、山口百恵のゴールデンコンビによるテレビの「赤い」シリーズは当時の中高生はみんな見ていた。そこでの「パリのおばさん」というイメージは普通の日本人からすると手の届かない存在にしか見えなかった。しかし、1975年に離婚。
夫の監督収入では率直なところ食えなかったのではないか?だから離婚前くらいから日本に出稼ぎに来ていたのだろうか。
遠く離れた日本で我々の持つイメージとはちがっていたのかもしれない。


そういう中、撮られたこの作品を見てみると、岸恵子に昭和30年代のような華がない。今の41歳よりはふけている。でもこのあと日本での出演が増え、横溝正史作品を市川崑が監督した「悪魔の手毬唄」での犯人役はすばらしい好演であった。この寅さん映画の出演は彼女にとって重要な過渡期だったのかもしれない。

シリーズ最高の観客動員となると、この2人の出演は当時話題だったかもしれない。中学生の自分はロックや洋画に夢中でまったく見向きもしなかったのであるが今見ると興味深い。
別府、熊本の温泉地帯の雑然とした昭和らしい映像や当時の服装を見ながらもう40年も経ってしまったのかと考え込む。

(参考作品)
第12作 男はつらいよ 私の寅さん
岸恵子に憧れる寅


悪魔の手毬唄
岸恵子の最高傑作


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