映画とライフデザイン

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映画「東京家族」 山田洋次

2013-01-20 21:17:26 | 映画(日本 2013年以降主演男性)
映画「東京家族」を劇場で見てきました。

小津安二郎監督の昭和28年の名作のリメイクを松竹の後輩山田洋次監督が撮る。どういう手綱さばきをするかが見モノだった。正直小津得意のローアングルショットにとらわれすぎていると同時に、ペースを無理にスローにしている感じが前半部分では強く感じた。
戦争未亡人であった原節子という存在が、平成の世では考えづらい状況にある。そこでつくられた新たなキャラの妻夫木聡と蒼井優が思いのほかよく見えた。前半の超スローペースも2人の存在で適切な速度になる。徐々にハートに響いてくるようになる。
ストーリー展開の意外性はないが、なぜか泣けてくる部分もあった。

ストーリーは言うまでもないであろうが。。。実にシンプルだ。
瀬戸内海の小島(前回は尾道)から老夫婦(橋爪功、吉行和子)が子供たちに会おうかと東京に上京してきた。二人は品川駅につくが、迎えに来た次男(妻夫木聡)は勘違いで東京駅に行ってしまう。夫婦はそのまま東京近郊の長男宅へタクシーで向かう。長男(西村)は開業医を営んでおり、妻(夏川結衣)と2人の息子と暮らしていた。東京に居住の長女(中島朋子)も長男宅に来ていた。次男も夕方には到着して久々の家族団らんとなる。しばらくいることとなるが、子供三人とも忙しい。長男は両親をゆっくり案内しようとしたら急な往診が入ってしまう。長女も商売が忙しいので面倒見れない。次男は舞台の美術の仕事をしていて、夜が遅い。

そのため兄弟話しあって知人の横浜のベイサイドのホテルにいったらどうかということで夫婦で出かける。しかし、都会のホテルにはなれず、落ち着かない。二泊の予定が一泊で長女の家に帰ってしまった。長女は美容院を営んでおり、近所の寄り合いがその日あるので二人はその日泊れない。夫は昔の同級生のところへ行き、亡くなった旧友のところにお線香をあげに行き、妻は次男の家に泊りに行くことになったが。。。

「東京物語」は小津安二郎の最高傑作に推す人が多い。個人的には小津安二郎作品では「浮草」が一番好きだ。情念あふれる京マチ子と中村鴈治郎の芝居が素晴らしい映画だと思う。しかし、一連の小津作品の常連笠智衆と原節子がいちばん素敵なのは「東京物語」だと思う。それだけに原節子のいない部分をどう補うのかが気になっていた。

前回原節子は早めに登場した。そして忙しい長男、長女の代わりに東京のデパートへ連れて行くシーンがある。昭和20年代の映像自体も貴重だが、情感のあるシーンだった。しかも、戦争未亡人で血の繋がっていない相手の親を非常に大事にする。原節子からは今の日本の若い女性からは感じられない気品が感じられる。ここでしゃべる丁寧語のニュアンスは果たして東京物語を評価する外人に通じるのかと思ってしまう。この役は今ではありえない設定だ。どうするのかと思っていた。

ここでは戦死したと前回設定した次男を美術関係の仕事に従事して、あまり金にならない男に設定した。テンポは現代劇そのままにしている。今回蒼井優が出演することは知っていたので、早めにあらわれてくるのかと思わせて、なかなか姿を現さない。見ている自分を少しだけヤキモキさせる。もしかして、前回のストーリーどうりになると見せかけての迷彩なのかもしれない。蒼井が現れた後の展開は予想通りだが、意外にもジーンとする展開に持っていきやすくした。

あともう一つ、夫が昔の旧友に会いに行った時、それまでずっと飲まないでいたのに急に飲みだすシーンがある。風吹ジュンが小料理屋のママという素敵な店だが、ついつい酔っぱらってしまう。あれこの後どうなるんだろうと思わせて、しばらくその結果を教えない。この焦らしもいい感じに思えた。

でも普通で考えるとおかしいという部分は多々あった。
明らかに東急田園都市沿線と思しき長男の家なのに新幹線を新横浜でなく品川で降りるだろうか?という疑問や品川から神奈川に向かってそんなにすぐタクシーに乗ろうとするだろうか?とか年齢設定が妻が68歳となっているが、もう少し上にしないと不自然ではなかろうか?など。。。
震災で公開を遅らせたというが、そんな必要はなかったのではないか。中に震災に絡んだセリフを組み込むが不自然な感じがする。最初のころは、小津得意のローアングルショットとの比較もふまえてちょっとどうかと思っていた。でも途中からそういうことはどうでもよくなった。


橋爪功や吉行和子が途中からずっと良くなってくる。現代的リアリティが見えてくるのである。そうしていくうちに若い2人がいい芝居を見せてくれるのでいい映画だと思えてくるようになった。蒼井優と橋爪功の最後に向けての芝居は自分にはよく見えた。小津得意の切り返しショットで見せる蒼井優がきれいだ。原節子と笠智衆の歴史的な名演を思い出した。山田洋次監督は寅さん映画などを含め、いろんな映画で瀬戸内海を映し出してきた。今回も海の匂いを感じさせる素敵な映像だった。
中島朋子は前回の杉村春子が見せるせっかちな動きと似ていてこの作品の長女役のキャラをうまく演じていた。西村と林家はちょっとどうかな?といった感じだ。なぜか前回それなりに存在感を示した地元で教職員をつとめる娘役の香川京子の存在が見当たらなかった。でも出演者多すぎない方がいいかもしれないのでそれは仕方ないかも。。。

山田洋次監督はまだまだやってくれると思う。
先輩だけにずっと応援したい。

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