映画「海の沈黙」を映画館で観てきました。
映画「海の沈黙」は倉本聰の原作脚本を映画化した本木雅弘の久々の主演作である。映画館で画家を演じる本木雅弘のポスターが気になっていた。共演は小泉今日子、中井貴一に加えて久々に石坂浩二、仲村トオルと清水美沙が脇を固める。監督は若松節朗だ。贋作がテーマだとわかるが、先入観なくストーリーを追う。最後まであきずに観ていける。
東京美術館で展覧会が開かれ、美術界の大御所田村修三(石坂浩二)は大臣も挨拶するオープニングセレモニーに妻安奈(小泉今日子)とともに出席する。そこで田村が自らの絵を見て、これは自分が描いたものではない。贋作だといい張って問題となる。
その絵を保管していた地方都市の美術館長(萩原聖人)が自殺する。通夜に向かった安奈は絵を引き取った中央美術館長(仲村トオル)と出会い遺書に秘められた絵への思いを知る。京都に住む田村には謎の男(中井貴一)から贋作の真相について連絡がいく。
一方北海道小樽では、飲み屋の女将(清水美沙)がバーに行き、彫り師から刺青を彫る事になったバーテンダーの女性(菅野恵)に話しかける。しかし、翌日女将は亡くなって死体で発見される。女将の全身には刺青が彫られていた。その刺青にはかつて安奈の父親のもと田村と同門で有望な画家だった津山竜次(本木雅弘)が絡んでいることがわかっていく。ある事件を機に人々の前から姿を消したのだ。
本木雅弘と小泉今日子の俳優としての存在感の強さに惹かれる。2人が久々に出会うシーンには胸を締めつける感動を覚えた。好きな映画である。事前予想より良かった。
テーマのスケールを大きくしてドガ「踊り子」の贋作話などにも触れたり、どうして元々の作品に手を入れたのかといったのが映画の主題だ。でも、長年キャリアを積み重ねてきた中年の域を越えつつある2人が見つめ合って言葉を交わす。
「見つかっちゃいましたね」「何年ぶりですかね」
若き日からTVや映画の画面で知っている2人のこれまでの人生の軌跡が自分の心に重なるように響いた。若い人が観てもそんな思いはないだろう。でもこの映画で観る年輪を重ねた2人が妙によく見える。
北海道を舞台にして軽い紆余屈折を交えたいかにも倉本聰らしいストーリーである。倉本聰作品はあまりにも久々なので、思わずまだ生きているのか確認したくらいだ。TV作品以外の脚本でも高倉健主演の「冬の華」「駅STAITION」という名作がある。映画の脚本は久々だ。
小学校1年までだけど、亡き自分の父が小樽生まれなので、北海の港や風光明媚な岩場が見える海辺、廃校と思しき校舎をアトリエにして繰り広げられるシーン、小樽独特のオールドファッションな建物にあるバーのシーンなど北海道らしい風景にグイッと引きつけられる。小樽近郊は絵になる。
⒈本木雅弘
映画で出会うのは「永い言い訳」以来久々だ。アカデミー賞作品「おくりびと」はブログを始めて2年目に観た作品で、本木雅弘のしなやかな動きに魅せられた。体調を崩している役なので、若干老け顔でやせている。大きなキャンパスで大胆に描くシーンや海に入っていくシーン、そして彫ることになった女性が裸になり温めてもらうシーンもある。
芸術へのこだわりをもつ男で気むずかしい顔をしているのに、昔の恋人だった安奈に会うときにはやさしい表情だ。安奈と別れるときに軽く手を握るのがいいシーンだった。
⒉小泉今日子
映画で観ることが多くなった。世相に対してのリベラル的言論は正直いただけないが、50代の女性がちゃんと演じられるようになったのがうれしい。TVあまちゃんでの「潮騒のメモリー」からはや10年経つ。草なぎ剛主演「碁盤斬り」では遊郭の女将を演じて貫禄がついた姿を見せたけど、恋愛とは無縁の役だった。TVの「不適切にもほどがある」にも本人役で登場してくれた。
この再会は純愛だ。過去に色々あったけど、やさしい顔をして2人は出会う。小じわも目立つ小泉今日子だけど、アイドル時代をすぎてからいちばんよく見えた。それだけでこの映画を見た甲斐がある。
⒊中井貴一と石坂浩二をはじめとした脇役陣
中井貴一は杖をついた謎のフィクサーのような役だ。サングラスを外してはじめてわかる。東京と北海道を往復して贋作や彫り師としての津山竜次を後援する存在だ。こんな役も演じるんだなと感じる。石坂浩二も映画で観るのが久々だ。もう80を過ぎた石坂が美術界の大御所だけど実年齢より若い役柄を演じる。小泉今日子が妻だけど、京都に女も子供もいる設定だ。祇園のクラブのママ役で三船美佳が出てきてこれが女ということ?でもまさに適役だった。
この2人が出会う場面で実年齢のひとまわり以上の石坂浩二に対して中井貴一が罵倒するのには不思議な気分を感じた。
あとは全身に刺青を入れた清水美沙の挑戦に感動する。今村昌平監督「うなぎ」での美しい裸体を見せてからずいぶんと経つが大したものだ。バーテンダーで彫り物をすることになり主人公に寄り添う菅野恵は初めて観た。倉本聰作品にこれまで出てきたようだ。
映画「海の沈黙」は倉本聰の原作脚本を映画化した本木雅弘の久々の主演作である。映画館で画家を演じる本木雅弘のポスターが気になっていた。共演は小泉今日子、中井貴一に加えて久々に石坂浩二、仲村トオルと清水美沙が脇を固める。監督は若松節朗だ。贋作がテーマだとわかるが、先入観なくストーリーを追う。最後まであきずに観ていける。
東京美術館で展覧会が開かれ、美術界の大御所田村修三(石坂浩二)は大臣も挨拶するオープニングセレモニーに妻安奈(小泉今日子)とともに出席する。そこで田村が自らの絵を見て、これは自分が描いたものではない。贋作だといい張って問題となる。
その絵を保管していた地方都市の美術館長(萩原聖人)が自殺する。通夜に向かった安奈は絵を引き取った中央美術館長(仲村トオル)と出会い遺書に秘められた絵への思いを知る。京都に住む田村には謎の男(中井貴一)から贋作の真相について連絡がいく。
一方北海道小樽では、飲み屋の女将(清水美沙)がバーに行き、彫り師から刺青を彫る事になったバーテンダーの女性(菅野恵)に話しかける。しかし、翌日女将は亡くなって死体で発見される。女将の全身には刺青が彫られていた。その刺青にはかつて安奈の父親のもと田村と同門で有望な画家だった津山竜次(本木雅弘)が絡んでいることがわかっていく。ある事件を機に人々の前から姿を消したのだ。
本木雅弘と小泉今日子の俳優としての存在感の強さに惹かれる。2人が久々に出会うシーンには胸を締めつける感動を覚えた。好きな映画である。事前予想より良かった。
テーマのスケールを大きくしてドガ「踊り子」の贋作話などにも触れたり、どうして元々の作品に手を入れたのかといったのが映画の主題だ。でも、長年キャリアを積み重ねてきた中年の域を越えつつある2人が見つめ合って言葉を交わす。
「見つかっちゃいましたね」「何年ぶりですかね」
若き日からTVや映画の画面で知っている2人のこれまでの人生の軌跡が自分の心に重なるように響いた。若い人が観てもそんな思いはないだろう。でもこの映画で観る年輪を重ねた2人が妙によく見える。
北海道を舞台にして軽い紆余屈折を交えたいかにも倉本聰らしいストーリーである。倉本聰作品はあまりにも久々なので、思わずまだ生きているのか確認したくらいだ。TV作品以外の脚本でも高倉健主演の「冬の華」「駅STAITION」という名作がある。映画の脚本は久々だ。
小学校1年までだけど、亡き自分の父が小樽生まれなので、北海の港や風光明媚な岩場が見える海辺、廃校と思しき校舎をアトリエにして繰り広げられるシーン、小樽独特のオールドファッションな建物にあるバーのシーンなど北海道らしい風景にグイッと引きつけられる。小樽近郊は絵になる。
⒈本木雅弘
映画で出会うのは「永い言い訳」以来久々だ。アカデミー賞作品「おくりびと」はブログを始めて2年目に観た作品で、本木雅弘のしなやかな動きに魅せられた。体調を崩している役なので、若干老け顔でやせている。大きなキャンパスで大胆に描くシーンや海に入っていくシーン、そして彫ることになった女性が裸になり温めてもらうシーンもある。
芸術へのこだわりをもつ男で気むずかしい顔をしているのに、昔の恋人だった安奈に会うときにはやさしい表情だ。安奈と別れるときに軽く手を握るのがいいシーンだった。
⒉小泉今日子
映画で観ることが多くなった。世相に対してのリベラル的言論は正直いただけないが、50代の女性がちゃんと演じられるようになったのがうれしい。TVあまちゃんでの「潮騒のメモリー」からはや10年経つ。草なぎ剛主演「碁盤斬り」では遊郭の女将を演じて貫禄がついた姿を見せたけど、恋愛とは無縁の役だった。TVの「不適切にもほどがある」にも本人役で登場してくれた。
この再会は純愛だ。過去に色々あったけど、やさしい顔をして2人は出会う。小じわも目立つ小泉今日子だけど、アイドル時代をすぎてからいちばんよく見えた。それだけでこの映画を見た甲斐がある。
⒊中井貴一と石坂浩二をはじめとした脇役陣
中井貴一は杖をついた謎のフィクサーのような役だ。サングラスを外してはじめてわかる。東京と北海道を往復して贋作や彫り師としての津山竜次を後援する存在だ。こんな役も演じるんだなと感じる。石坂浩二も映画で観るのが久々だ。もう80を過ぎた石坂が美術界の大御所だけど実年齢より若い役柄を演じる。小泉今日子が妻だけど、京都に女も子供もいる設定だ。祇園のクラブのママ役で三船美佳が出てきてこれが女ということ?でもまさに適役だった。
この2人が出会う場面で実年齢のひとまわり以上の石坂浩二に対して中井貴一が罵倒するのには不思議な気分を感じた。
あとは全身に刺青を入れた清水美沙の挑戦に感動する。今村昌平監督「うなぎ」での美しい裸体を見せてからずいぶんと経つが大したものだ。バーテンダーで彫り物をすることになり主人公に寄り添う菅野恵は初めて観た。倉本聰作品にこれまで出てきたようだ。