趣味として私は世界の民族についてあれやこれやと調べています。特に絶滅しそうな少数民族は現代社会の考えるべき諸問題を提起しています。
そんな趣味で集めたヨーロッパからロシアにかけて住んでいる少数民族をご紹介致します。今回は北方のヨーロッパとロシアの少数民族に限ります。まず写真をお送りいたします。
1番目の写真はマンシ族の住居の夏の風景です。マンシ族はロシアのハンティ・マンシ自治管区の先住民です。ハンティとは近い親戚の意味で現在、およそ12,000人がロシアで暮らしています。写真の出典は、『マンシ、コリャーク、ンガナサヌィ… ロシアの絶滅しそうな少数民族』http://osoroshian.com/archives/37793045.html です。
2番目の写真は街に出て来たマンシ族の家族の写真です。
3番目の写真は昔のサーミ民族の家と民族衣装を着た家族の写真です。このような家には住んでいましたが現在は近代的な家に住んでいます。テントは夏だけ使うトナカイの放牧地の休憩用で、中で焚火をして弁当を食べたりコーヒーを淹れます。このような民族は北ヨーロッパからロシアの西北部のかけて住んでいます。サーミ民族はラップ人とも呼ばれています。
4番目の写真はコリャーク族です。
犬ぞりのマッシャー(乗りて)はイルピリ村の住人です。
カムチャッカの北部に暮らすこの民族は現在6,000人しかいません。世界で最も北に住む民族の一つです。写真の出典は、『マンシ、コリャーク、ンガナサヌィ… ロシアの絶滅しそうな少数民族』http://osoroshian.com/archives/37793045.html です。
5番目の写真はンガナサヌィ族です。
この民族はロシアのクラスノヤルスク州のタイミル地方に住んでいます。ユーラシアの一番北で暮らす民族です。860人です。自称は「ニャ」(友という意味)です。
6番目の写真はロシアのドルガヌィ族です。
テュルク諸語を話す民族の中で世界で一番北に住む民族です。ロシア正教を伝えたコサックたちはドルガヌィ人に自分達の苗字を与えたのです。クドゥリャコフ、ジャルコフ、チュプリン、ポロトフ等でその苗字は今でも残っているそうです。
現在8000人以下でロシアのクラスノヤルスク州とサハ共和国で暮らしています。
7番目の写真はイテリメン族です。カムチャッカ半島の先住民です。「イテンメン」(「ここに住んでいる」)という名前の発音が変化しこの様な呼び方になったそうです。
さてこのような少数民族は豊かな多様な文化を持っているのです。文化の多様性をもたらしている重要な存在なのです。
しかし一方では少数民族は絶滅の危機に瀕しているのです。
私は少数民族のことをいろいろ調べていますが、現実は厳しく、彼等は近い将来絶滅するという悲観的な考えを持っています。
その絶滅する理由は3つあると思います。以下に示します。
(1)少数民族は周りの多数民族に比べて圧倒的に貧しい。
少数民族は孤島や奥深い山岳地帯や北極に近い極寒の地に生き残っています。例えば、オーストラリアの乾燥地にいます。南米のアマゾンなどの深い森の中に孤立しています。アフリカの奥地にいます。
全て辺境な土地で生活条件は過酷を極めます。他国の工業の発達や経済成長に完全に取り残されています。
当然、少数民族は他民族に比べると圧倒的に貧しい状態にあります。
(2)少数民族は自分固有の言語や伝統文化を捨て経済的に豊かな生活をしようとします。
この結果、少数民族の言語や文化は内部から崩壊するのです。
例えばカナダ北部のイヌイット族は英語を勉強しカナダやアメリカの会社に就職します。アザラシ猟で不安な生活を続けるよりも格段に生活が楽になります。若者達はイヌイット族の村を出てカナダ本土やアメリカに移住し、村には老人だけが残ります。
少数民族が少しでも経済的に良くなろうとするのを、誰に止める権利があるのでしょうか?
アメリカに移住したイヌイット族はそこでアメリカ人と結婚して子供をつくります。こうしてイヌイット族は自然に消滅して行く運命にあるのです。
このような貧しさ故の少数民族の内部からの崩壊は世界中で見られる現象です。
これを悲しむのは経済的に恵まれた人々の感傷に過ぎません。迷惑な感傷です。
(3)周囲の多数民族の同化政策と圧迫により少数民族の言語や文化は外部から崩壊させられます。
卑近な例は北海道のアイヌ民族です。江戸時代までは北海道はアイヌ民族の土地でした。南端の松前藩は別でしたが。
それが明治になって政府は北海道のアイヌを差別しながら同化させるために「土民法」という法律を作り、アイヌ民族を日本国民として組み入れる政策を進めたのです。この同化政策にもかかわらず、終戦後まで北海道のアイヌ集落は存続していたのです。
しかし戦後の日本の経済成長に従ってアイヌ民族の数は急速に減少したのです。
有名なアイヌ人の萱野茂さんが(1926年 - 2006年)二風谷アイヌ資料館を創設し、参議院議員(1994年から1998年)になったのは有名な話です。そして参議院の委員会で史上初のアイヌ語による質問を行ったのです。それにもかかわらずアイヌ民族は衰微して行くのです。
このような例は世界中にあります。世界の先進国は自国内の少数民族の保護政策を実施していますがなかなか効果が上がらないようです。
上記の(3)の理由は排除出来ますが、(1)と(2)の理由を排除することは至難の業なのです。
こんな訳で世界の少数民族は絶滅の危機に瀕しているのです。悲しいことです。これも人類の運命なのでしょうか。
それはそれとして、今日も皆様のご健康と平和をお祈りいたしす。後藤和弘(藤山杜人)