私は読書家ではありません。しかし高校時代に読んだ『トニオ・クレエゲル』が心に残っています。
私が暗い北ドイツのリューベックを訪れた時に14歳のトニオ・クレエゲルの悲しみや苦悩せを少しだけ実感しました。
『トニオ・クレエゲル』のあらすじと原文の冒頭部分をお送り致します。
あらすじ、
舞台は20世紀初頭の北ドイツの町リューベック。裕福な商人の息子であるトーニオ・クレーガーは、文学趣味を持つ少年である。北ドイツ的な堅実な気質の父の血と並んで、芸術家的な気質を持つイタリア出身の母の血を受け継いでいたからだった。そのため、堅実で実務的な家庭の少年が多いギムナジウムの中では浮いた存在であった。
ある日、同級生の中で好意を寄せていたハンスと帰り道に一緒に散歩をするが、互いの趣味や性格の相違を痛感するだけに終わる。数年後、ダンスの練習をする中でインゲという少女を好きになるが、同じ結果に終わる。
やがて父は死に、母は再婚して町を去る。・・・続きは下記にあります。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%88%E3%83%BC%E3%83%8B%E3%82%AA%E3%83%BB%E3%82%AF%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%82%AC%E3%83%BC
原文の冒頭部分、
冬の太陽は僅かに乏しい光となって、層雲に蔽おおわれたまま、白々と力なく、狭い町の上にかかっていた。破風はふ屋根の多い小路小路はじめじめして風がひどく、時折、氷とも雪ともつかぬ、柔らかい霰あられのようなものが降って来た。
学校が退ひけた。鋪石の敷いてある中庭を越え、格子門を潜って、自由になった者たちの幾群は、潮のように流れ出すと、互いにわかれて右へ左へ急ぎ去った。年かさの生徒たちは、昂然と本の包みを高く左の肩に押しつけたなり、風に向かって、昼飯を目あてに、右腕で舵を取ってゆく。小さい連中は快活に駈け出して、氷のまじった汁を四方にはねかしながら、学校道具を海豹あざらし皮の背嚢はいのうの中でがらがらいわせながらゆく。しかし折々、従容と歩を運ぶ教諭のウォオタンのような帽子とユピテルのような髯ひげを見ると、みんな神妙な眼つきでさっと帽を脱いだ……
「ようやっと来たね、ハンス」と、長いこと車道で待っていたトニオ・クレエゲルが言った。微笑を浮かべながら、彼は友を迎えて進み出た。友は他の同輩たちと話し合いながら門を出て来て、もうその連中と一緒に歩み去ってしまおうとしているところだった。……「どうしてさ」と彼は問うて、トニオを見守った……「ああ、ほんとにそうだっけ。じゃ、これから少し一緒に歩こう」・・・続きは下記にあります。
https://www.aozora.gr.jp/cards/001758/files/55937_58904.htm
写真は兄のハインリヒ・マン(左)とトーマス・マン(右)です。
私が暗い北ドイツのリューベックを訪れた時に14歳のトニオ・クレエゲルの悲しみや苦悩せを少しだけ実感しました。
『トニオ・クレエゲル』のあらすじと原文の冒頭部分をお送り致します。
あらすじ、
舞台は20世紀初頭の北ドイツの町リューベック。裕福な商人の息子であるトーニオ・クレーガーは、文学趣味を持つ少年である。北ドイツ的な堅実な気質の父の血と並んで、芸術家的な気質を持つイタリア出身の母の血を受け継いでいたからだった。そのため、堅実で実務的な家庭の少年が多いギムナジウムの中では浮いた存在であった。
ある日、同級生の中で好意を寄せていたハンスと帰り道に一緒に散歩をするが、互いの趣味や性格の相違を痛感するだけに終わる。数年後、ダンスの練習をする中でインゲという少女を好きになるが、同じ結果に終わる。
やがて父は死に、母は再婚して町を去る。・・・続きは下記にあります。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%88%E3%83%BC%E3%83%8B%E3%82%AA%E3%83%BB%E3%82%AF%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%82%AC%E3%83%BC
原文の冒頭部分、
冬の太陽は僅かに乏しい光となって、層雲に蔽おおわれたまま、白々と力なく、狭い町の上にかかっていた。破風はふ屋根の多い小路小路はじめじめして風がひどく、時折、氷とも雪ともつかぬ、柔らかい霰あられのようなものが降って来た。
学校が退ひけた。鋪石の敷いてある中庭を越え、格子門を潜って、自由になった者たちの幾群は、潮のように流れ出すと、互いにわかれて右へ左へ急ぎ去った。年かさの生徒たちは、昂然と本の包みを高く左の肩に押しつけたなり、風に向かって、昼飯を目あてに、右腕で舵を取ってゆく。小さい連中は快活に駈け出して、氷のまじった汁を四方にはねかしながら、学校道具を海豹あざらし皮の背嚢はいのうの中でがらがらいわせながらゆく。しかし折々、従容と歩を運ぶ教諭のウォオタンのような帽子とユピテルのような髯ひげを見ると、みんな神妙な眼つきでさっと帽を脱いだ……
「ようやっと来たね、ハンス」と、長いこと車道で待っていたトニオ・クレエゲルが言った。微笑を浮かべながら、彼は友を迎えて進み出た。友は他の同輩たちと話し合いながら門を出て来て、もうその連中と一緒に歩み去ってしまおうとしているところだった。……「どうしてさ」と彼は問うて、トニオを見守った……「ああ、ほんとにそうだっけ。じゃ、これから少し一緒に歩こう」・・・続きは下記にあります。
https://www.aozora.gr.jp/cards/001758/files/55937_58904.htm
写真は兄のハインリヒ・マン(左)とトーマス・マン(右)です。