575の会

名古屋にある575の会という俳句のグループ。
身辺のささやかな呟きなども。

俳人と戦争① 藤木清子

2012年08月12日 | Weblog
  戦死せり三十二枚の歯をそろへ

戦争で死んでいった若者を詠んだ句として有名です。作者は藤木清子。
昭和11年から15年までの一時期に活躍した俳人です。
5年間を俳句でたどってみます。

  亡夫(つま)の額にひざしがぬくくとけてゐる

昭和11年に夫を亡くします。

  ひとり身に馴れてさくらが葉となれり

翌昭和12年。この年、日中戦争始まります。

  兵往けりしろき峰雲ゆるぎなく

昭和13年。

  ひとりゐて刃物のごとき昼とおもふ 

  管制の灯低く垂り秋燈なり

昭和14年。遺骨になって還ってくる兵が増えていきます。

  戦死者の寡婦にあらざるはさびし

  戦争と女はべつでありたくなし

昭和15年。

  壮行歌昂ぶりわれはひそやかに

  ひとすじに生きて目標をうしなへり

俳句誌「旗艦」の15年10月号に「ひとすじに」の句が、
掲載されたのを最後に消息が分からなくなったそうです。
昭和15年は、新興俳句運動が弾圧され、まもなく旗艦も廃刊になります。
研ぎ澄まされた感性の句が、今の私たちの訴えてくるものがあります。
銃後の生活は寡婦には生き難いものだったでしょう。こんな句もあります。

  縁談をことはる畳なめらかに

この後の時代をどのように生きていったのでしょうか?
生年没年も不詳だそうです。

「反骨無頼の俳人たち」より。     遅足



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