正月になって植物といえば、この時期必ず活ける万両・千両でしょう。
我が家にも玄関に、食卓に、トイレに千両が唯一正月の風情を演出してくれています。
花言葉も「富・財産」と目出度いのだけれど、良く考えるとお金の単位を植物名にしたものも珍しいことです。 実は万両、千両ばかりでなく、百両・十両というのもあるようです。
植物図鑑風に説明すると、万両。百両・十両はヤブコウジ科ヤブコウジ属の同類で木の仲間。ただし千両はセンリョウ科センリョウ属。 ヤブコウジ(藪柑子)と呼ばれるのは十両だけ。百両は唐橘(カラタチバナ)と呼ばれたりします。
特徴は、万両が一番立派で実も多くて大きく葉の下に垂れ下がっていて落ちにくいのです。千両は実はやや小ぶりで葉の上についていて、キリッとした感じがしますが、実が落ち易いのが欠点です。
百両の唐橘はもっと小振りで万両を栄養不良にしたような感じですからやっぱり百両ほどの値打ちかな。十両の藪柑子は、この仲間の科・属名になっているのに実も二つ三つでもっと貧弱です。ただし林などにはよく見かけてどこにもあるので代表名になったのかも知れません?
彼らが何故こんな名称をもらったのか?
江戸時代はとても園芸が盛んで観賞用の草木が人々の関心を集めていて、命名も権威付けの理由もあって中国の草木図鑑などを参考にしてつけていました。
そこで まず中国書に百両と名づけられた植物と同じ日本のカラタチバナ(唐橘)を百両と命名し、それより立派な千両が決まり、
一番実つきの良い大柄なヤブコウジの仲間を万両となずけてデビューさせた訳です。そして貧弱でどこにもある藪柑子を百両の下で十両と決めました。
さてさて、万・千・百・十とあって「一」の無いのは何とも物足りなくて悔しい、潔癖な日本人には耐えられない。「いじめ」かな?
そこで 可哀想にも「一両」を拝命させられたのが、蔓蟻通(ツルアリトウシ)というアカネ科ツルアリドウシ属の植物でした。でもまあ知られていないのがなによりですね。
写真をご覧になっていただくと「成る程、一両だ」と納得していただけるかも。
蔓性なので林などの地面近くに這っているのをよく見かけます。
今度見つけたら、「一両といえば、首の飛ぶ頃もあったのよ」と慰めてやってください。
千両のこぼれやすさや生きており 飴山 實
万両や暦日めぐること速し 岸風三楼
一両の岩這う道の冬日かな 愚足
※ この仲間の映像は「万両千両」などと入力し検索すれば、お目にかかれます。