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【一口紹介】
内容(「BOOK」データベースより)
周防の村医から一転して討幕軍の総司令官となり、維新の渦中で非業の死をとげたわが国近代兵制の創始者大村益次郎の波瀾の生涯を描く長編。動乱への胎動をはじめた時世をよそに、緒方洪庵の適塾で蘭学の修養を積んでいた村田蔵六(のちの大村益次郎)は、時代の求めるままに蘭学の才能を買われ、宇和島藩から幕府、そして郷里の長州藩へととりたてられ、歴史の激流にのめりこんでゆく。
【読んだ理由】
義兄にすすめられて。
【印象に残った一行】
『日本人を駆りたてて維新を成立せしめたのは、江戸湾頭でペリーの蒸気軍艦をみたときの衝撃であるということは、すでに触れた。
衝撃の内容は、滅亡への不安と恐怖と、その裏うちとしての新しい文明の型への憧憬というべきもので、これがすべての日本人におなじ反応をおこし、エネルギーになり、ついには封建という秩序の牢獄をうちやぶって革命すらおこしてしまった。この時期前後に蒸気軍艦を目撃した民族はいくらでも存在したはずだが、どの民族も日本人のようには反応しなかった。
憧憬は危機心理に裏うちされるときに強烈になるものらしいが、この江戸湾頭で蒸気船をみた日本人たちのうち、島津斉彬、飯島直正、伊達宗城という三人の代表的危機論者がーー自分もあれを作ろう。と、決断したことが、この時機にわきおこったエネルギーのすさまじさを象徴している。』
【コメント】
鎖国から開国へと大きな時代の転換点にあたり、当時の若者を中心とした凄まじい向学心に驚かされたと共に日本人の素晴らしさを改めて感じさせられた。
無骨な村田蔵六の生き方に共感を覚えたが、シーボルトの娘イネとの微妙な関係は艶っぽかった。