日本男道記

ある日本男子の生き様

徒然草 第二百六段

2023年05月30日 | 徒然草を読む
 


【原文】 
徳大寺故大臣殿、検非違使の別当の時、中門にて使庁の評定行はれける程に、官人章兼が牛放れて、庁の内へ入りて、大理の座の浜床の上に登りて、にれうちかみて臥したりけり。重き怪異なりとて、牛を陰陽師の許へ遣すべきよし、各々申しけるを、父の相国聞き給ひて、「牛に分別なし。足あれば、いづくへか登らざらん。わう弱じやくの官人、たまたま出仕の微牛を取らるべきやうなし」とて、牛をば主に返して、臥したりける畳をば換へられにけり。あへて凶事なかりけるとなん。
「怪みを見て怪しまざる時は、怪しみかへりて破る」と言へり。 

【現代語訳】  
藤原公孝が警視庁官だった時の話である。「ああでもない。こうでもない」と話し合い、決議を取っていると、ノンキャリア官僚、中原章兼の車を牽く牛が逃げ出した。牛は役所の中に入り、公孝が座る台座によじ登り、口をモゴモゴさせながらひっくり返った。その場に居た官僚どもは、「とても不吉である。牛を占い師に見せてお祓いしなさい」と言った。それを聞いた、公孝の父君である大臣の実基が、「牛には善悪の区別がない。脚があるのだから、どこにでも登るだろう。貧乏公務員が通勤に使う痩せ牛を取り上げても仕方がない」と言って、持ち主の章兼に引き渡した。牛がいた場所の畳を張り替えて終わりにしたが、取り立てて縁起の悪いことも無かった。
「不吉なことがあっても、気にしなければ、凶事は成り立たない」と古い本に書いてある。

◆鎌倉末期の随筆。吉田兼好著。上下2巻,244段からなる。1317年(文保1)から1331年(元弘1)の間に成立したか。その間,幾つかのまとまった段が少しずつ執筆され,それが編集されて現在見るような形態になったと考えられる。それらを通じて一貫した筋はなく,連歌的ともいうべき配列方法がとられている。形式は《枕草子》を模倣しているが,内容は,作者の見聞談,感想,実用知識,有職の心得など多彩であり,仏教の厭世思想を根底にもち,人生論的色彩を濃くしている。

Daily Vocabulary(2023/05/30)

2023年05月30日 | Daily Vocabulary
30551.It's a good day for (日和)
It’s a good day for hiking. 
30552.It's a perfect day for(うってつけの日 )
It’s a perfect day for enjoying the great outdoors in Sweden.
30553.vicinity(近傍)in the area around a particular place
There are many parks in the vicinity of the hotel. 
30554.wide-open(広々とした)
He lives in a beautiful home with a wide-open kitchen space.
30555.soak in(味わう )if you soak something, or if you let it soak, you keep it covered with a liquid for a period of time, especially in order to make it softer or easier to clean 
I lived in the countryside for a year and soaked in the nature surrounding me.