毎年、初詣のあとインド料理店に行くことにしているが、今年は出かけようと思った日が寒かったりして行っていなかった。
先日結構暖かい日があって、思い立って昼に「ゲイロード」に出かけた。
震災前に三宮の神戸市役所近くにあった「Gay lord(陽気な殿様)」は、当時ロンドンやパリにもチエーン店があって、
長身のインド人給仕頭が黒服に身を固め、広い店を笑顔で仕切っていた。ボーイも皆インド人で、店の雰囲気は高級レストラン風だった。
その店が震災後中山手通りに移転したのは知っていたが、移転先には行ったことがなかった。
余談ながら 昭和55年ごろ、ボンベイ(ムンバイ)港湾局の施設部長を日本に呼んで四国の工場や神戸港に案内したことがある。
彼は、ベジタリアンの中でも厳密な方の菜食主義者で、東京のレストランで彼のために特注した焼き飯を、
「この焼き飯の前に肉を使った料理に使われたフライパンが、そのまま使われているようだ。米飯に肉の臭いがするから食べられない」と言ったりして、食事では大汗をかいた。
「ゲイロード」にはさすがにベジタリアンメニューが普通にあって、案内したこちらもも施設部長もホットした。
彼は驚くほど沢山食べた記憶がある。成田到着から何日も、腹を減らしていたのかと、少し気の毒だった。
一緒に泊まった三宮のホテルの朝食で、私が和定食の白飯に生玉子をかけて食べだしたら目を丸くして驚いて見ていた。
聞くと生まれて始めてこういう食べ方を見たという。
後でなんかで読んだのだが、世界中でも、玉子をこうして食べるのは日本だけらしい。 玉子の流通の全過程で衛生管理が出来ていないと生食は出来ないのだ。
それにしてもベジタリアンは海外に出るのは大変だなと思った。原理原則なき民である日本人の中でも、阿智胡地亭は、和洋中華印度朝鮮蒙古なんでも、
「うまければどこの料理でもいい」と思ってこれまで各国各地のものを例外なしで食べてきているのだが。
新しい店は、神戸に多いインドレストランの中でも広い方だった。雰囲気は、前の店に比べると気安い感じの店になっていた。
入ってすぐのところのガラス越しに「タンドウール(タンドリ)」窯が置かれてインド人の料理人が二人いる。
接客は若手の男性1人とインドの民族衣装を着た女性が二人がしていたが、皆日本人だった。
ランチタイムメニューには定食が3種類あったけど、久しぶりのインド料理なので、定食ではなく、メニューからいくつか選ぶことにした。
こちらはまず、ボンベイ出張時に良く飲んだジントニック(インドではいいジンが出来る)を頼んで、料理のチョイスは相方に任せた。
奥の方に中年の男女10人くらいが、何かの集まりの昼食会をしているのと、若い二人連れと若い男一人客にサラリーマン風の男二人の客が居た。
オーダーしている間に隣の席に黒人とスーツをぴしっと決めた若い日本人が座った。
黒人は派手なウインドウブレーカーを着て、日本の食べ物では何が食べられるなどと話しだした。
オリックスの新しい外人選手と球団の通訳かも知れない。
オーダーはミックス・タンドリプレート(チキン、マトン、サカナ、エビ)、野菜のサモサ、チキンマサラカレーとドライカレーに決まり、それにプレーンナンを取ることにした。
食べ始めて暫らくすると、近くの窓側の席に大柄な老年のインド人が一人で来て座り、すぐ追いかけて別の同年輩の白髪の一人が来て握手をした後、向きあって座った。
long time no see・・・と話し出して、娘が18になり、ハイスクールを卒業・・と聞こえて来た。
久しぶりに友達どうしが、この店で落ち合い、一緒に食事をしてお互い近況を話しているのだろうと思った。
インドの言葉ではなく、英語で話をしているところからすると、同じインドでも言葉が違う別々の土地の出身者が、神戸に住み着いて知り合ったのだろう。
料理がおいしかったので、相方にブツブツ言われながら、ジントニックを追加でもう一杯頼んだ。
どの皿もスパイシイーでおいしかったが、量がたっぷりあったのでドライカレーは少し残した。
一時間半ほどゆっくり居て、店を出た後どうだったと相方に聞きたら、前より料理が日本化していると言う。
どこが?と聞くとグリーンピースを使いすぎと言う。言われてみれば確かにそうだった。
何かの食材をグリーンピースに代用させているのかも知れないが、女の目は男と違う。
味は多少日本化しているかも知れないが、それなりにおいしく食べた。 前は法人客が多かったが、
今は主として日本人の個人客を主な顧客にしているようだから、多少日本化しないとやっていけないのだろう。
彼女は次回のインド料理は、北野町にある「ガンダーラ」の本店に行ってみようと言った。
いきつけだった阪急三宮駅前の「ガンダーラ」の支店は数年前に閉店してしまっていた。
結局「ゲイロード」は新たなリピーターを作れなかったようだ。
2004.02.24記
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