阿智胡地亭のShot日乗

日乗は日記。日々の生活と世間の事象記録や写真や書き物などなんでも。
  1942年生まれが東京都江戸川区から。

「いい顔してる人」      荒木経惟の本

2022年12月20日 | 乱読は楽しい

2010年06月24日(木)「阿智胡地亭の非日乗」掲載

街に出ると以前に比べて人の顔付きが険しくなったような気がする。

昔は地方にいくと地方の顔や表情があったが、今は東京でも大阪でも境港でも土佐清水でも、列島人の顔つきはそんなに変わらない。

老いも若きもというが、若きより老いのほうがもっと表情が卑しくてキツく感じる。

55年体制が確立してから、55年間もずっと政権交代がなかったから、いろんなところが中から腐って、そう簡単には顔の皮膚の笑顔細胞も再生しないのだろう。

ここはもう数年、再生するまで待つ忍耐がいるのかもしれない。

 先日も大阪の地下街の曲がり角で、えらく目つきの悪い男に鉢合わせしそうになった。

よく見たら広告の滑らかなアルミの板に自分の顔が映っていた。ガックリきた。

そのことがあったのかどうか、地下街の本屋で目に付いたこの本を衝動買いで買ってしまった。

50年のキャリアの写真家の人間の顔談義は下手な落語よりはるかに面白かった。

引用『内容紹介

「あの人はいい顔してる」と言うことがあります。とても魅力的な表現ながら、どういう顔がいい顔なのかわかりにくい面もあります。

そこで本書では、写真家荒木経惟さんが、いい顔についてあらゆる角度から論じ、いい顔とは何か、どうすればいい顔の持ち主になれるのかについて、徹底的に語りつくします。

アラーキーの呼び名でおなじみの荒木経惟さんは、2010年5月で70歳を迎えます。また、写真家生活も50余年になります。

09年に自身のからだに見つかったガンと闘いながらも、過激な問題作を次々と発表されています。一方で、荒木さんが思い入れをもって撮影してきたのは、“顔”です。

自身の写真家生活は「顔に始まり顔に終わる」と言い切り、いまなお、『日本人ノ顔』シリーズなどを通し、顔を撮り続けています。

顔をテーマにしながら荒木さんのお話は、女性観、男性観、人間観、死生観にまで広がり、この写真家の人間への興味、思索の深さには唸る思いがいたします。

政治、社会、文化、芸能、スポーツ……、あらゆる世界で「いい顔」が少なくなったいま、多くの方に読まれ、この国に「いい顔」があふれることを願う一冊です。』

目次(3,4章のみ小見出しも掲載)

第1章 顔こそヌードだ
第2章 いい顔のつくり方
第3章 女のいい顔

    女よ、男を選びなさい
    シワに誇りを持つ
    心に娼婦を・・・
    アタシが思ういい顔の女
    ストーリーのある顔がいい
    縛る理由
    女のセンパイの顔:若尾文子と浅丘ルリ子
    「母子像」~母という存在はいちばんいい顔をしている

第4章 男のいい顔

    いちばんの裸は顔だよ
    男の顔にはアクと毒が必要
    職業も顔に出る
    先生にもいい顔はある

第5章 顔は見られてこそ磨かれる
第6章 みんなが知ってるあの人の顔
第7章 街が顔をつくる
第8章 死に顔で人生がわかる

☆もう30年ほどフォローしているアラーキーの、今回の本に80%同意しますが、残りの20%は、阿智胡地亭は背中にもいい背中とそうでない背中があると思う・・のです。

というか人の背中は顔よりももっと正直だと思います。しかし背中を撮る写真家はかって見たことはありません。

荒木経惟click

このリンク先で松岡正剛は言う:

附記 荒木経惟の写真がついに全集になった。『荒木経惟写真全集』全20巻(平凡社)である。だからここにはいちいち写真集のことはしるさない。

100冊近くあるはずだ。そこで、もう一言、感心していることを書いておく。

それは荒木経惟の書く字がいいということだ。これはたいへん大事なことである。

土門拳は「気力は眼に出る。生活は顔に出る。年齢は肩に出る。教養は声に出る」と言って、プロフィール写真を相手のこの4つによって撮り分けていたが、

実は「写真は眼に出る、手に出る、腰に出る、文字に出る」なのである。荒木経惟はサングラスを外さないことによって、残りの3つを制した写真家となった。


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