孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

パキスタン  頻発するテロ 今後の状況はアフガニスタン情勢とも連動

2012-12-31 22:32:23 | アフガン・パキスタン

(パキスタンでのポリオワクチン接種 こうした活動もテロの標的になっています。“flickr”より By UNICEF Pakistan http://www.flickr.com/photos/unicefpakistan/5590758055/

頻発するパキスタン・タリバン運動(TTP)のテロ
パキスタン北西部のペシャワル周辺のエリアを中心に、イスラム武装勢力「パキスタン・タリバン運動(TTP)」のテロ活動が頻発しているのは今に始まった話ではありませんが、特に最近はそのテロ関連記事が目につきます。
今年10月に女子教育の重要性を訴えていた14歳少女を銃撃した事件でもTTPが犯行を表明していますが、私が目にした記事で、ここ半月ほどのTTPが犯行声明を出しているとされるものだけでも、以下のとおりです。

****タリバンが空港襲撃、6人死亡=パキスタン*****
パキスタン北西部ペシャワルで15日夜、武装勢力がロケット砲などで国際空港を襲撃し、地元報道によれば少なくとも6人が死亡、40人以上が負傷した。反政府勢力「パキスタン・タリバン運動(TTP)」が犯行声明を出した。
少なくとも5発の砲撃で空港の外壁や周辺の住宅街に被害が出た。武装勢力は空港敷地内への侵入を図ったが治安部隊に制圧されたという。【12月16日 時事】 
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****車爆弾で16人死亡=パキスタン北西部****
パキスタン北西部の部族地域カイバル地区で17日、小型車に仕掛けられた爆弾がさく裂し、AFP通信によれば16人が死亡、71人が負傷した。
現場はアフガニスタンとの国境から数十キロの町ジャムルードの市場。付近のバス停にいた人たちが犠牲になった。(中略)反政府勢力「パキスタン・タリバン運動(TTP)」が犯行声明を出した。【12月17日 時事】
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****パキスタンで自爆テロ、州副首相ら9人が死亡****
パキスタン北西部カイバル・パクトゥンクア州の州都ペシャワルで22日夜、政治集会を狙った自爆テロがあり、地元メディアによると、同州のビロウル副首相ら9人が死亡、17人が負傷した。
イスラム武装勢力「パキスタン・タリバン運動」(TTP)が地元メディアに犯行を認めた。

集会は、ビロウル氏が所属する同州の最大与党「アワミ民族党」(ANP)が開いていたもので、同氏を含む同党幹部が多数出席していた。自爆犯は集会の終了後、会場を離れる同氏を狙った模様だ。
ビロウル氏は、TTPをはじめとするイスラム過激派に対する強硬姿勢で知られ、これまでも同氏を狙った暗殺未遂事件が何度も起きていた。【12月23日 読売】
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****タリバン運動、パキスタン兵21人殺害****
パキスタン北西部のペシャワル近郊で30日未明、パキスタン兵21人の遺体が見つかった。イスラム武装勢力パキスタンのタリバン運動(TTP)が犯行を認めた。今月20日に武装勢力に拉致された23人のうちの一部という。1人は脱出し、1人は重体。兵士らはTTPメンバーと同じパシュトゥン人出身で、政府側についたために殺害されたとみられる。【12月31日 産経】
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このほかにも、TTPとの関連はよくわかりませんが、シーア派を標的にしたテロも頻発しています。
****パキスタンでテロ相次ぐ、市民ら29人死亡****
パキスタン南西部クエッタ近郊で30日、イスラム教シーア派の巡礼者を乗せたバスが爆弾テロに遭い、19人が死亡、25人が負傷した。巡礼者は隣国イランに向かっていた。
また、クエッタ市内では29日、警察車両が何者かに銃撃され、警官4人が死亡。南部カラチ中心部では同日、停車中のバスが爆発し、乗客や通行人ら少なくとも6人が死亡、50人が負傷した。【12月30日 読売】
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ポリオ根絶プログラムにも影響
このうちのひとつでも日本で起きれば大騒動ですが、パキスタンでは文字どおり日常茶飯事です。
こうした治安悪化の影響は、ポリオワクチン接種という保健業務にも支障をもたらしています。

****パキスタン小児350万人、ポリオワクチン接種できず WHO****
パキスタンでは今月17日以降、小児350万人以上がポリオワクチンの接種を受ける機会を逃した――世界保健機関(WHO)の関係者が21日、AFPに語った。

感染すれば短時間のうちに手足が弛緩してまひする残酷な病気から子どもたちを守るため、パキスタンでは国連の支援の下でポリオ撲滅計画が実施されている。しかし17日に始まった接種プログラムの最初の週にシンド州の州都カラチと同国北西部でワクチン接種プログラムに従事していた9人が相次いで殺害されたことからプログラムに遅延が生じている。

パキスタンにおけるポリオ撲滅計画のWHOの上級調整官エリアス・デューリー博士は、「ワクチン接種が必要な小児は1850万人だが、実際に接種を受けたのは1490万人。350万人以上がワクチンを受けられなかったことになる」と説明した。

反政府イスラム武装勢力「パキスタンのタリバン運動(TTP)」はこれまでにもワクチン接種チームを脅迫しており、今年6月にはスパイ活動を隠すためにワクチン接種が行われているとして北西部族地域のワジリスタンで接種を禁止した。ただし、先週相次いだ襲撃についてTTPは関与を否定している。

一方、数年前からパキスタンの人々の間でワクチンへの疑念が広がっており、ポリオ根絶プログラムにも影響が出ている。十分な教育を受けておらず他者の影響を受けやすい親の中には、ワクチンに関する「荒唐無稽な陰謀説」を信じ込んでワクチンに拒否感を持つ人も多い。

人口約1億8000万人、イスラム教徒が大半を占めるパキスタンは、感染力が強く、まひの原因となるポリオがいまだに流行するわずか3か国のうちの1つ。2005年には28人だった感染者は、昨年には約200人に急増した。【12月27日 AFP】
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「パキスタン・タリバン運動(TTP)」がポリオワクチン接種に反対しているのは、米軍による国際テロ組織アルカイダ指導者オサマ・ビンラディン容疑者の殺害作戦に先立ち、同容疑者の潜伏先を確認する目的で、米中央情報局(CIA)が肝炎の予防接種を装って家族らのDNAを採取したことがあるためです。
なお、今年5月、アメリカ当局に協力したとの理由で、この計画に携わったパキスタン人の男性医師に国家反逆罪で禁錮33年が言い渡されています。

TTP:アメリカと絶縁すれば政府との交渉も
長年“テロ地獄”の様相を呈しているパキスタンで、その中心に位置している「パキスタン・タリバン運動(TTP)」ですが、政府側との交渉に応じる用意があることを表明しています。ただし、パキスタン政府がアメリカと絶縁すれば・・・との条件付きですが。

****米国との絶縁、政府に要求=パキスタンのタリバン****
パキスタンの反政府勢力「パキスタン・タリバン運動(TTP)」の指導者ハキムッラー・メフスード容疑者は28日、ビデオ声明で、パキスタン政府に対し「米国の奴隷をやめるなら交渉に応じる用意がある」と米政府との絶縁を要求した。米政府は、メフスード容疑者に500万ドル(約4億3000万円)の懸賞金を用意して行方を追っている。【12月29日 時事】
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これに対し、パキスタン政府高官は、「TTP指導部のこうした要求を、真面目に受け入れる事などできない。彼らは組織体ではなく、どの政府も彼らと交渉をすることはできない。彼らは犯罪集団であり、アフガニスタンの『タリバン』とは違う。彼らの要求は、馬鹿げている。」と拒否しているとか。【12月28日 The Voice of Russiaより】

言うまでもなく、パキスタンは核保有国であり、宿敵とみなす核保有国インドと長年の対立を続けています。(インドの方は、最近ではパキスタンより中国の台頭が気になるようでもありますが)
テロが頻発する状況でどのような核管理が行われているのか・・・世界が懸念するところです。

パキスタンが裏切れば、TTPと手を組み当局に脅威を
また、パキスタンがアメリカに協力する姿勢を表向き取りながら、その一方で隣国アフガニスタンのイスラム武装勢力タリバンを支援してきたことは周知のところです。
14年末のアフガニスタンからの外国部隊撤収を控えて、アフガニスタン情勢がどうなるかは、パキスタンの動きに大きく左右されます。
もし、パキスタン政府がタリバンを見捨てれば、タリバン側はTTPと連携してパキスタンでのテロ活動を更に激化させる・・・という話もあるようです。

****今後はパキスタン次第****
・・・・最大の皮肉は、この国の運命がアフガン人自身ではなく、隣国パキスタンの動向で決まる可能性が大きいことだ。
タリバンはパキスタン軍、特に情報機関の軍統合情報局(ISI)の操り人形にすぎないという見方は、一般のアフガン人だけでなくタリバンのメンバーにも広まっている。タリバンが戦い続けられるのは隣国パキスタンから提供される「安全地帯」と援助のおかげであり、それを通じてパキスタン軍は大きな影響力を行使している。

そのためタリバン側には、パキスタンが自国の利害のために裏切りに走るのではないかという不安がある。「13年の最大の懸念は、政府軍でも米軍でもない。01年のようにパキスタンに背後から剌されることだ」と、前出の有力な情報担当者は話す。
パキスタン政府は9・11テロの後、アメリカの圧力を受けて当時のオマル政権をいきなり見捨てた。タリバンはそのことを忘れていない。

タリバンが何より恐れているのは、話し合いによる和平をパキスタンに強要される事態だ。既にタリバンの内部では、戦闘の続行か和平かをめぐり深刻な分裂が生じている。
カタールで始まったアメリカとの和平交渉は、12年3月にタリバンが話し合いを拒否してから停滞している。それでも少人数のタリバン代表団が現地にとどまり指示を待っていると、前出の元閣僚は言う。
「彼らは孤立し、居心地の悪い状態に置かれている。何らかの成果を挙げるか、さもなければ交渉を打ち切るしかない」。いずれにせよパキスタンの許可が出るまでは、代表団にできることは何もない。

ただし、タリバンは完全にパキスタンの言いなりになっているわけではない。それどころか、もしパキスタンが再び裏切った場合は報復に出る姿勢を明確にしていると、前出の有力な情報担当者は言う。
「01年のようにパキスタンが支援を止めても、運動が崩壊することはない。われわれは当時よりずっと強い。(パキスタンの部族地域で治安部隊と戦っている武装勢力)パキスタン・タリバン運動(TTP)と手を組み、パキスタン当局に大きな脅威を与えることもできる」

ただでさえパキスタン政府は多くの懸念材料を抱えている。過去数年間に3000人以上の治安部隊を殺害したTTPに加え、国民は絶望的な貧困と金融危機、慢性的なエネルギーと水の不足にも悩まされている。

権力闘争は5月まで続く
パキスタンの3人の最高実力者、アシフ・アリ・ザルダリ大統領、アシュファク・キヤニ陸軍参謀長、イフティカール・ムハンマド・チョードリー最高裁長官は、いずれも1年以内に退任する見込みだ。しかも前の2人は、既にチョードリーに首根っこを押さえられている。
ザルダリには20年以上前から続く汚職疑惑があり、キヤニも再任の正当性が問われている。

これまで軍とISIは事実上の「治外法権」状態にあり、国家の脅威と見なした人物を自由に逮捕・拘束し、場合によっては抹殺してきた。だが現在では多数の訴訟を起こされている。例えば軍の元弁護士イナム・ウル・ラヒームが提起した訴訟は、既に定年の60歳に達しているキヤニが参謀長ポストにとどまることの是非が争点だ。
軍は自らの権力と特権に対する外部の口出しを好まない。ラヒームは先日、正体不明の男たちにひどい暴行を受けた(軍は関与を否定している)。

パキスタンの政治的混乱によってタリバンは一時的な猶予を与えられ、13年の最初の数カ月を乗り切れるかもしれない。5月に予定されているパスキタン総選挙では、ひどく不人気な与党パキスタン人民党に対し、ザルダリの長年の宿敵ナワズ・シャリフと政治的には未知数な元クリケットの人気選手イムラン・カーンが挑む形になる。

シャリフもカーンも、アメリカのアフガニスタン政策や対テロ作戦をあまり評価していない。オバマ政権が部族地域で無人機による攻撃をエスカレートさせていることには、2人とも公然と反対している。
それでも、パキスタンの次期大統領が決まる前からアメリカの無人機はかつてないほど忙しくなりそうだ。パキスタンの街頭では抗議行動が激化し、部族地域では武装勢力に加わる若者が急増するだろう。しばらくは静かに成り行きを見守るしかなさそうだ。【1月2日号 Newsweek日本版】
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【「ブットを何人殺そうとも、新しいブットはどの家からでも誕生するのだ」】
“ひどく不人気”で、かつ権力基盤の脆弱な(その割には驚くほど長続きしてはいますが)ザルダリ大統領が今の地位にあるのは、暗殺されたブット元首相の夫であることから、ブット家の“家業”的なパキスタン人民党のトップにいるためです。
この不人気な父親を補佐すべく、現在父親とともに人民党共同総裁の地位にある息子のビラワル・ブット・ザルダリ氏(24歳)が本格的な政界進出を表明しています。

“元首相の命日である27日、シンド州ガリ・コダー・バクシュにあるブット家の墓所には、その死を悼む20万人以上の支持者らが集まった。警官1万5000人、治安部隊500人による厳重な警備体制の中、3代連続の政界入りを目指すビラワル氏は初めての大々的な演説を行い、貧しい人々のために「反民主主義勢力」と戦っていくと述べた。”【12月28日 AFP】
よくわかりませんが、「ブットとは、ある1つの感情──愛なのだ」とも。

ただし、“パキスタンの被選挙権は満25歳以上に限られているため、来年4月に行われる次の総選挙には立候補できないが、不人気の父親に代わってPPPの選挙戦を率いると目されている。”【同上】とのことです。

パキスタンの状況も、アフガニスタンの情勢も、動き出すのは来年の総選挙以降のようです。
当分はパキスタンのテロ地獄も続きそうです。
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