安曇野ジャズファンの雑記帳

信州に暮らすジャズファンが、聴いたCDやLPの感想、ジャズ喫茶、登山、旅行などについて綴っています。

篠崎史紀(N響特別コンサートマスター)著「音楽が人智を超える瞬間」(ポプラ新書)と映画「シャイン」。

2024-09-27 19:30:00 | 読書

先日のN響高崎公演(その記事)でコンサートマスターを務めていた篠崎史紀さんが書いた本がちょうど発売になったので、購入しました。

   

(本書の概要)

「マロ」の愛称で知られ26年間務めあげたN響第1コンサートマスターという肩書を超えて、様々な活動で知られる唯一無二のヴァイオリニスト「篠崎史紀」さんが、人生、音楽、教育、多彩すぎる趣味などについて語った本。クラシック音楽愛好家はもちろん、そうでない人も愉しく読める内容です。

(おおまかな目次)

第1章 ウィーンが「音楽の流儀」を教えてくれた
       ヴァイオリン教師の楽譜をこっそり盗んでは練習する日々
       イヴリー・ギトリスとの出会い
第2章 ウィーンで身につけたマロ流妄想力
      「モルダウ」と「新世界」の妄想的背景
第3章 北九州が「人生の流儀」を育んでくれた
第4章 N響が「コンサートマスターの流儀」を確立させてくれた
      サヴァリッシュとの思い出と堀さんの思い
      フェドセーエフを救った「くるみ割り人形」
第5章 偉大なマエストロたちが音楽の流儀を教えてくれた
      シャルル・デュトワ、ウラディーミル・アシュケナージ、アンドレ・プレヴィン
      パーヴォ・ヤルヴィ、ファビオ・ルイージ、ヴォルフガング・サヴァリッシュ
      ヘルベルト・ブロムシュテット、ロリン・マゼール、ロジャー・ノリントン
      トゥガン・ソヒエフ、ネッロ・サンティ、ワレリー・ゲルギエフ
第6章 いま、日本の音楽界に、そして故郷に伝えたい思い

(感想など)

NHK交響楽団のコンサートマスターを26年間務め、現在は同楽団の特別コンサートマスターである篠崎史紀さんが書いた本なので、特に、来日した指揮者とのやりとりや評価が記されている第4章や第5章が印象に残りました。

指揮者について、著者はトゥガン・ソヒエフさんのことを『言葉では説明できないけれど、とにかくすごい』というタイプとして、高く評価しています。僕は一度だけソヒエフの指揮でN響を聴いたことがありますが、また聴いてみたい。

第1章に登場するおじいさんと第4章のフェドセーエフさんの話は、ナチスドイツの行為や戦争の悲惨さを物語るもので、平和の大切さと音楽の力に思いを至らせてくれるものでした。また、映画「シャイン」の主人公「ヘルフゴット」と著者との邂逅が劇的で、篠崎さんの才能を見抜く力がすごいと感嘆。

(文中で印象に残った箇所・写真など)

著者は、ウィーン市立音楽院で、トーマス・クリスティアンについて学んでいます。

スイスで開催されたイヴリー・ギトリスの講習会で、篠崎さんが練習しているところに、突然現れたデイヴィッド・へルフゴット。すぐ才能に気づき、二人は非公開の演奏会を行うことに。ヘルプゴットは、1995年の映画「シャイン」の主人公のモデル。

2015~22年にN響首席指揮者を務め、その後は名誉指揮者になったパーヴォ・ヤルヴィと著者。

2022年からN響首席指揮者を務めるファビオ・ルイージと筆者。ルイージがオペラを振れることも評価していました。僕は、サイトウキネン(セイジオザワ)フェスで、チャイコフスキーの「エウゲニー・オネーギン」を彼が指揮しているのを観ました。

トゥガン・ソヒエフは、2008年10月にN響と初共演。特に2016年以降N響と共演を重ねている。『うまく言葉では言い表せないけれど、とにかくすごい、と思った指揮者のひとりはロシア出身のトゥガン・ソヒエフ。有無を言わせぬハンドパワー・・・を持っている。』と著者は評価しています。

(映画「シャイン」)

   

 (概要)

デヴィッドは、音楽家になれなかった父親ピーターから英才教育を受けて育った。父親の反対を押切って、ロンドンに留学したデヴィッド。だが緊張と父親との対立から、彼は精神を病んでしまう。実在の天才ピアニスト、デヴィッド・ヘルフゴットの半生を描いた作品。アカデミー賞主演男優賞受賞など受賞多数。

著者は、実際のデヴィッド・へルフゴットと、非公開の演奏会で共演しています。このエピソードには驚きました。DVDで一度観たことがありますが、この本をきっかけに、再視聴しました。


真田家関連の7編の小説を収録した「今村翔吾と読む 真田風雲記」(中公文庫)。「真田」人気を今村翔吾さんが解説。

2024-09-18 19:30:00 | 読書

先の連休中(9月14~16日)に、書店を訪れたら文庫の新刊コーナーに「今村翔吾と読む 真田風雲記」(中公文庫)が多数陳列してあったので、興味を覚えて購入。

 

   

表紙

(本書の紹介)

   

(本書に収録されている7編の小説)

(感想など)

地方の小さな戦国大名に過ぎない真田氏を題材にして、7名もの有名作家が小説を書いていることに、驚きました。大作「真田太平記」を書いた池波正太郎さんは格別だと思いますが、他にも多くの作家が真田氏に注目するのは、いろんな意味で真田氏には魅力があるのでしょう。

海音寺潮五郎作「真田昌幸」は、所謂、武将列伝です。海音寺さんは、『昌幸は利に敏い(さとい)、陰険な性格』と記し、ニ男の信繁(幸村)人気があるので、昌幸も評判がいいのだろうと記しています。真田はずるいから嫌いだという人も僕の周囲にいるので、その気持ちはわからないでもないです。

池波正太郎作「信濃大名記」は、昌幸の長男「信之」が主人公で、読み応えがあります。昌幸や信繁(幸村)は、武将という色合いが濃いですが、信之は、智将で優れた政治家だという感じをこの小説からも受けました。

(編者の紹介)

     


マイク・モラスキー著「戦後日本のジャズ文化」(青土社→岩波現代文庫)を10年ぶりに再読。

2024-09-04 19:30:00 | 読書

ジャズ喫茶に対する興味が、最近、復活しつつあります。昨日は、渋川市の「カフェ フロントロード」をアップしました(記事へのリンク)が、ジャズ喫茶への論考を含むマイク・モラスキー著「戦後日本のジャズ文化」(岩波現代文庫)を再読してみました。

   

表紙

(本書の概要)

   

(大まかな目次)

第1章 自由・平等・スウィング?  ― 戦前・終戦後の日米ジャズ再考
第2章 大衆文化としてのジャズ   ― 戦後映画に響くもの
                    黒澤明「酔いどれ天使」、裕次郎と『嵐を呼ぶ男』
第3章 占領文学としてのジャズ小説 ― 五木寛之の初期作品を中心に
                    「さらばモスクワ愚連隊」再考、五木寛之の「ライブ重視」
第4章 挑発するジャズ・観念としてのジャズ ― 1960ー70年代のジャズ文化論(1)
                    フリー・ジャズの出現、二人のジャズ革命論者
第5章 ジャズ喫茶解剖学      ― 儀式とフェティッシュの特異空間
                    ジャズ喫茶の歴史と多面性、わが毒舌的ジャズ喫茶論
第6章 破壊から創造への模索    ― 1960ー70年代のジャズ文化論(2) 
                    ジャズを歌った詩人たち、おわりに〈同時代の音楽〉としてのジャズ
第7章 過去の音楽へ        ― 近年のメディアとジャズ文化
                    映画と文学のジャズ・ノスタルジー時代

(感想など)

ジャズが日本の文化・社会に及ぼした影響を、再読により改めて認識しました。今回、特に第4章と第6章の『1960ー70年代におけるジャズ文化論』が面白かった。白石かずこさんによる詩の朗読が、フリージャズを伴奏としたのは、日本語に内包されているリズムがフリージャズに向いてるからだと述べられており、得心しました。

第5章「ジャズ喫茶解剖学」に描かれているジャズ鑑賞集中型のジャズ喫茶は、今やほぼ絶滅しています。それでも、この6月に訪れた仙台の「カウント」は、その雰囲気を残していて嬉しかった。近年、ジャズ喫茶は閉店が相次いでいますが、形は様々ですが、開店するお店もあって、ジャズ喫茶を訪れてみたい気持ちが回帰してきています。

最近、ジャズ喫茶へ行く動機として、『自宅では大きな音で聴けないから』とか、『レコードそのものを見てみたい』と話す人もいるとあるマスターからうかがいました。理由はともあれ、ジャズ喫茶や、音楽が聴けるお店のお客様が増えることを念願しています。

そんな会話などを行ったジャズ喫茶(広い意味も含めて)へのリンク。

1泊2日で仙台へ(3)。ジャズ喫茶「COUNT(カウント)」

小諸駅前にオープンしたレコードカフェ&バー「CHAYA」でプリンとコーヒー。ジャズのレコードもかかります。

ジャズカフェ「TOSSY」(12月9日 北海道恵庭市恵み野)

 

(参考 第5章ジャズ喫茶解剖学〈レコードジャケット考〉に記載されたジャケット)

   

名盤レコードの代表的ジャケット。ソニー・クラーク(p)は日本では知られているけれど、アメリカではよほどのジャズ狂でない限り、「ソニー・クラーク」という名はだれも知らないそうです。

   

ジャズレコードのジャケット写真史のなかで画期的なものだそうです。マイルス夫人(黒人)が写っていますが、それまでのレコード会社による白人女性掲載方針をマイルス・デイヴィスは非難。

(著者略歴)

   

2024年4月5日付けて、マイク・モラスキー著「ジャズ・ピアノ」(岩波新書)を拙ブログにアップしました。

マイク・モラスキー著「ピアノトリオ」(岩波新書)


岡田大介著「すし本」(ビジュアルだいわ文庫)。面白く、実用的な良書です。

2024-08-22 19:30:00 | 読書

ある書店で、文庫本の棚を見ていたら、すしダネと、そのもとのお魚がセットで掲載されている『すし本」という使えそうな文庫があったので購入。   

   

表紙

(本書の概要)

すしダネを楽しく学べるハンドブックです。「予約必須の高級すし店」や「こだわりの頑固職人」、食事マナーや食べる順番……。たしかにそんな世界もあるけれど、実はもっと気楽で、自由で、幸せな場所が「すし屋さん」。知らないことは聞けばいい。感じたことを素直に発すればいい。それくらい肩の力を抜いて、すしの美味しさを楽しんでいただきたい。そんな思いを大前提に、この本を書きました。(「はじめに」より)

(目 次)

107種類の寿司だねが紹介されていて、それらは、次の7つに分類されています。

1  赤身
2  光り物
3  白身
4  イカ・タコ
5  貝
6  エビ・カニ
7  長物
8  魚卵・ウニなど

(感想など)

僕は、海無し県の長野県出身で、現在もそこに住んでいるので、お魚の種類がさっぱりわかりません。寿司屋さんで訊ねることもありますが、簡便にわかりやすい図鑑のような本があればと、以前から思っていました。

この本は、そんなニーズに応えるものです。すしダネと釣り上げたお魚が、見開きでる見ることのできるのが、特にありがたく、知らないネタを注文するのにも役立ちます。また、美味しい食べ方も記されていて、配慮が行き届いています。

コンパクトな文庫本なので、例えば、札幌旅行に持っていって、その土地のものを注文するのにも良さそうです。著者の岡田さんは、すし職人歴27年、釣りも行っていて、その経歴が反映されている良書です。

(著者の紹介

【著者の岡田大介さん関連のホームページ】

酢飯屋グローバルトップ / 文京区水道、江戸川橋にある寿司、カフェ、ギャラリーの複合店 (sumeshiya.com)

 

(本書のページから)

2024年5月15日第一刷発行となっていて、ごく最近発行された書き下ろしの文庫本です。
 
 
すし界の絶対王者「クロマグロ」から、始まります。

 
左側には、クロマグロの解説も。
 
 
 
サワラ。著者の嬉しそうな顔とサワラそのものが写っています。サワラは「光り物」に分類されています。
 
 
 
ノドグロ。左ページ下段の写真で、ノドグロと呼ばれるわけがわかりました。喉が真っ黒です。高級品ですが、北陸で食べたことはあります。白身の魚に分類されています。
 
 
 
ホッケ。かなり前ですが、札幌旅行で初めてホッケの寿司をいただきました。それまでは、ホッケが生で食べることが出来るとは思ってもみませんでした。白身の魚ですが、濃厚な味わいで、また、いただきたい。
 
 
ハナサキガニのお寿司は、未体験なので、ぜひ、北海道に出かけた際にいただいてみたい。
 
(本書のカバー裏)
 
   

佐々木功著「真田の兵ども」(ハルキ文庫)、池波正太郎真田太平記館「ル・パスタン」で買物とコーヒー。

2024-07-16 19:30:00 | 読書

最近、戦国武将関連の本を読んでいますが、真田昌幸など真田家の武将には特に興味を惹かれます。真田家を扱った小説には、池波正太郎著「真田太平記」がありますが、佐々木功著「真田の兵ども」が出たので読んでみました。

さらに、「真田太平記」を再読したくなり、上田市の真田太平記館に出かけ、喫茶「ル・パスタン」で、その1巻、2巻を購入しました。併せて、購入特典の和紙製ブックカバーもゲット。「ル・パスタン」の珈琲が意外に美味しい。

   

表 紙

(カバーの裏にある本書の紹介) 

   

 (目 次)  

   

(感想など)

真田家に取材した小説は、池波正太郎さんが「真田太平記」をはじめ多数書き、しかも、ベストセラーとなっているせいか、他の作家が手がけた例は、あまりないと思われます。今回、2024年6月18日付け(元は、2021年発行の単行本)で、佐々木功著の本作が文庫化されたことは、歓迎すべきことです。

目次を見ればわかるように、真田家の歴史の中でもハイライトといっていい時代、事象を扱っていて、ストーリー自体に既に魅力があります。創作だと推測しますが、徳川方についた長男の信幸が、父の昌幸、次男の信繁と計らい、大将の徳川秀忠を襲うという計画が書き加えられています。

物語は、史実を下敷きにしていて、その点は、好感が持てるのですが、例えば、273~274ページにかけての仙石秀康の回想など冗長で、ストーリー展開が遅いのがやや残念。また、上田城は「三層の天守」のお城という全く誤った記述(105ページ)があり、細部が疎かになっている気もしました。

(著者の紹介)

   

 

上記の「真田の兵ども」を読んだことを契機に、やはり池波正太郎作「真田太平記」を再読することに決定。以前購入の本は、処分しているので、再購入に、まず上田市の真田太平記館へ。

   

真田太平記館。

   

実は、一冊買うと、オリジナルの和紙製ブックカバーを一つもらえるというので、こちらへ。ブックカバーは6種類あるそうなので、12巻全てここで購入するので、6種類全部集める予定。

購入した池波正太郎「真田太平記」第1巻(新潮文庫)。面白いです。いま2巻にかかっています。

   

第1巻を購入したさいに、購入特典としてもらった和紙製ブックカバー。図柄は、挿絵からです。カバーとしては使わず、飾っておきます。

   

喫茶店「ル・パスタン」。ル・パスタンは、フランス語で楽しみという意味で、池波正太郎さんのエッセイのタイトルでもあります。

池波正太郎さんの絵が飾ってありました。本物かどうかは、聞きませんでした。

    

コーヒーをいただきました。初めていただきましたが、真っ当で値段も安く、上田市街地の穴場だと思いました。まだ真田太平記の文庫本を10冊購入するので、その際などに、またコーヒーを飲みたい。

【池波正太郎 真田太平記館】

住所:長野県上田市中央3丁目7番3号
電話:0268-28-7100 
ホームページ: ◆池波正太郎真田太平記館◆ - 上田市ホームページ (city.ueda.nagano.jp)