新潮文庫の「小澤征爾さんと、音楽について話をする」(小澤征爾、村上春樹著)を読みました。単行本で3年ほど前に出ていたのですが、この7月に文庫化され、しかも村上春樹のエッセイ『厚木からの長い道のり』が収録されていたので買いました。最初から最後まで、興味深い話の連続で、興奮気味に読み終わりました。多くはクラシックに関する内容ですが、音楽づくりの面白さ、たいへんさが伝わってきます。クラシックに少し近いヴォーカリストです。
LESLIE UGGAMS (レスリー・アガムス)
SO IN LOVE (COLUMBIA 1963年頃録音)
レスリー・アガムス(vo)は、1943年ニューヨーク生まれの歌手兼女優ですが、現在も現役でステージに立っています。7歳の時からショー・ビジネス界に入っていますが、有名になったのは、60年にミッチ・ミラー(プロデュサー、合唱団指揮者)に見出されてからです。67年には、「Hallelujah Baby」でトニー賞を受賞しており、ミュージカルの世界でも活躍しています。
このアルバムは、63年の録音で、プロデューサーはミッチ・ミラー、編曲と指揮はグレン・オッサーが担当しています。ストリングスやハープをきっちりと使った豪華な伴奏で、ミッチ・ミラーが相当力を入れて制作に当たったのだろうと思います。このレコードは、よく売れたのか中古市場に出回っているようで、比較的容易に入手できます。
曲は、スタンダードです。「Glad to Be Unhappy」、「Serenade In Blue」、「April In Paris」(パリの四月)、「Smoke Gets in Your Eyes」(煙が目にしみる)、「Tenderly」、「Alone Together」、「Spring Will Be A Little Late This Year」、「Once Upon A Time」、「Someone to Watch Over Me」(やさしき伴侶を)、「Love Walked In」(忍び寄る恋)、「So In Love」の12曲。有名なスタンダード・メロディを聴いてみるのに最適です。
レスリー・アガムスの高音までよく伸びる声による爽やかな歌唱でスタンダードが楽しめます。ジャズ的要素はほとんどありませんが、ヴォーカルものとして秋の夜長に聴くのに相応しい。ミディアム・テンポでサビの部分が魅力的な「Serenade In Blue」、どの音符もしっかりと歌われている「Smoke Gets In Your Eyes」、ドラマティカルな「Alone Together」、流れるようなリズムに乗った「So In Love」といったところが印象に残ります。
【レスリー・アガムス・ホームページ】
ホームページ:Leslie Uggams com
【小澤征爾、村上春樹著 小澤征爾さんと音楽について話をする(新潮文庫)】
村上春樹は、「楽譜を読み込む」ことと「文章を書く」ことの違いはあれ、二人の共通点として、集中して仕事をすることと、その『集中の深さ』を挙げています。『厚木からの長い道のり』では、小澤征爾と大西順子が松本市で開催された2013年のサイトー・キネン・フェスティヴァルで「ラプソディー・イン・ブルー」を共演するまでのいきさつなどを書いています。