安曇野ジャズファンの雑記帳

信州に暮らすジャズファンが、聴いたCDやLPの感想、ジャズ喫茶、登山、旅行などについて綴っています。

デクスター・ゴードン THE TOWER OF POWER

2009-01-11 12:12:41 | テナー・サックス

経済界の新春パーティーに参加してきました。話題は専ら景気のことでしたが、ある電子関連メーカーの社長は、どこも今までが過剰生産だったし、自社でも生産設備部門がさっぱり動いていない、このまま最低2年は我慢しなければならないと仰っていました。パーティーで出された飲み物もアルコールは控えてソフトドリンクだけです。タイトルにパワーが入って、なんとなく元気になりそうなアルバムを聴いてみました。

DEXTER GORDON (デクスター・ゴードン)
THE TOWER OF POWER (PRESTIGE 1969年録音)

 The_tower_of_power

アルバムタイトルを直訳すると「力の塔」ということになり、無骨そうなジャケット写真とあいまって太いテナー・サックスの音が聴こえてきそうです。ところが、メリー・ホプキンの歌で1968年に大ヒットした「Those were The Days」(悲しき天使)が収録されていて、しかもその哀感のあるメロディーをストレートに吹いているので、そのギャップにちょっと驚いた覚えがあります。

メンバーはデクスター・ゴードン(テナー・サックス)、ジェームズ・ムーディー(テナー・サックス Montmartre1曲のみ)、バリー・ハリス(ピアノ)、バスター・ウィリアムス(ベース)、アルバート・ヒース(ドラムス)です。リズムセクションは、実力者を揃えていますが、特にバリー・ハリスはどの曲でも地味ながらメロディアスなソロをとっています。

曲目は、「Montmartre」、「The Rainbow People」、「Stanley The Steamer」というデクスターのオリジナル3曲と「Those Were The Days」の計4曲です。デクスターは太いけどやわらかい音(ソニー・ロリンズとちょっと似てるかもしれません)で、リズムにほんのちょっと遅れ気味に吹いています。やや早いテンポの「Stanley The Steamer」では、スムーズな動きをしています。

「Those Were The Days」はバラードで、デクスターはゆったりとしたテンポで旋律をどっしりと吹いていきます。これがなかなか哀愁が漂っていて、アドリブに入ってもそのイメージが持続します。バリー・ハリスのソロの後、またテーマを奏してくれます。この曲のジャズ・ヴァージョンは、私は他に見かけたことがないので、よくぞ録音してくれたと思います。

ホームページにジェニー・スミス(ヴォーカル)を掲載しました。よかったら覗いてみてください。
モダンジャズやヴォーカルを聴こう ジェニー・スミス


キャロル・スローン Hush-A-Bye

2009-01-09 00:15:36 | ヴォーカル(A~D)

昨年末に長野駅前の書店で、スイング・ジャーナル誌の本年1月号(2008年12月20日発売)をパラパラめくっていたら、キャロル・スローンのポートレートが目に飛び込んできました。記事をみたらCBSソニーから発売されて長らく廃盤になっていた「ボディ・アンド・ソウル/Early Hours」が名前を変えて21年ぶりにCD復刻されたのです。

CAROL SLOANE (キャロル・スローン)
HUSH-A-BYE (SSJ 1959年録音)

 Hushabyecarolsloane_2

さっそく雑誌を元に戻して、タワーレコードに走りました。キャロル・スローンのアルバムは結構持っていますが、とりわけ初期のものが気に入っています。CBSソニーから出たラリー・エルガート楽団在団中の本作品は持っておらず、手に入れたくて仕方がありませんでした。今回復刻されたSSJレーベルに感謝です。

伴奏は、チャック・ウェイン(ギター)、バッキー・ピザレリ(ギター)、ラルフ・パット(リズム・ギター)、ケニー・オブライエン(ベース)、ヴィニー・バーク(ベース)、ビル・フィネガン(チェレスタ)で、曲によりギター2本を中心とした編成です。そのせいもあり、小さなクラブで歌を聴いているようなリラックスした雰囲気が漂います。

1937年生まれのキャロルは逆算すると22歳ということになりますが、ここで歌っているバラードは、もう既に聴いている人を引き込むような実力があるように感じます。曲目は、スタンダード中心で「Hush-A-Bye」、「Wait Till You See Him」、「Guess Who I Saw Today」、「In the Wee Small Hours of the Morning」、「Angel Eyes」、「Body and Soul」、「Summertime」など11曲です。

「Wait Till You See Him」は曲そのものも傑作で、歌も訴えかけてきます。「Hush-A-Bye」で「ルルルルールー・ハッシャバイ」と歌っていくところなどは安らぎにあふれています。「Angel Eyes」など他の曲もよく素晴らしい作品だと思います。ジャケットも綺麗で、近年リリースされた復刻盤の最右翼に挙げられるものでしょう。


ジェニー・スミス FIVE J LADIES SING

2009-01-04 17:45:34 | ヴォーカル(E~K)

天気予報では、長野市内でもたくさん雪が降るとなっていましたが、いいお天気に恵まれ太陽も顔をのぞかせて過ごしやすい三が日でした。東京から帰省した娘も、思ったより暖かいと言って奥さんと一緒に買い物に出かけて行きました。僕は専ら運転手でしたが、二人が同乗していない際のBGMは、ジェニー・スミスの歌が4曲入っているコンピュレイションCDでした。

JENNIE SMITH (ジェニー・スミス)
FIVE J LADIES SING (NORMA  録音データ不詳)

 Fivejladiessingjenniesmith

5人の女性歌手のラジオ放送用音源が収録されたCDです。「J」の頭文字がつく5人が選ばれており、Joanie sommers(ジョニー・ソマーズ)、Jill Corey(ジル・コーリー)、Jennie Smith(ジェニー・スミス)、June Christy(ジューン・クリスティ)、Julie London(ジュリー・ロンドン)の歌が4曲づつ計20曲収録されています。曲目はスタンダードが中心です。

詳しいデータは記載されていませんが、1950年代終わりから60年代初め頃の録音かと思われます。それぞれオーケストラバックの歌で、飛びぬけているのはジューン・クリスティです。しかし、他の4人もなかなかで、なんといっても嬉しいのはジェニー・スミスのボサノヴァが聴けるところです。

ジェニーの4曲は、「I Concentrate on You」、「One Note Samba」、「Quiet Night」、「Nice'n Easy」というもの。息が長いというか、音符の最後までよく伸びる清々とした声で歌っています。「Quiet Night」が、彼女のそのような特質が生かされた好唱だと思います。フランク・シナトラでおなじみの「Nice'n Easy」も、リズムに乗って軽くスイングしています。彼女は同曲をカナディアン・アメリカン盤でとりあげています。

コンピュレイションアルバムは、めったに買いませんが、この5人ともジャズ・ヴォーカルよりの好みの歌手なので躊躇せず購入しました。このうち、ジョニー・ソマーズ、ジューン・クリスティについてはホームページにまとめてあります。よかったら覗いてみてください。近日中にジェニー・スミスについても掲載する予定です。

モダンジャズやヴォーカルを聴こう ジョニー・ソマーズ 

モダンジャズやヴォーカルを聴こう ジューン・クリスティ  


マーティー・ペイチ THE BROASWAY BIT

2009-01-01 09:56:03 | ピアノ

このところ体調が優れず、また仕事が忙しかったこともあって、ブログ、ホームページとも更新する気力がありませんでした。ようやくここにきて回復してきました。2009年は、マイ・ペースでゆるーく更新したいと考えていますので、ときどき訪問をしていただけたら幸いです。お正月なので、ジャケット、内容ともに華やかな作品を取り出してみました。

MARTY PAICH  (マーティー・ペイチ)
THE BROADWAY BIT (WARNER BROS. 1959年録音)

 Thebroadwaybit

ジャズ・ファンの間では「踊り子」の愛称で通じるアルバムです。マーティー・ペイチ(1925~1995)は、西海岸のピアニスト、アレンジャーでスマートな編曲で知られました。また、ビッグ・バンドを編成して歌の伴奏をした録音も多数あります。これはビッグバンド作品ですが、とりわけアート・ペッパー(As)のプレイが聴けるのが本盤の価値を高めています。

「ブロードウェイ・ビット」とはしゃれたタイトルをつけたものです。「ブロードウェイ」と「オーケストラビット」をかけあわせたものなのでしょう。ジャケット写真の踊り子さんの一人が読んでいるのが、ダウンビート誌なのも面白い演出で、これから華やかな舞台が幕開けしそうな雰囲気です。

曲目は題名通りミュージカルのヒット曲を演奏したものです。「It's All Right With Me」、「I've Grown Accustomed to Her Face」、「I Love Paris」、「I've Never Been in Love Before」、「Younger Than Springtime」、「Lazy Afternoon」、「Just in Time」など全9曲です。

メンバーは、ペッパー(アルト・サックス)のほか、ステュ・ウィリアムソン(トランペット)、ビル・パーキンス(テナー・サックス)、ジミー・ジュフリー(クラリネット他)、ヴィクター・フェルドマン(ヴァイブ)、スコット・ラファロ(ベース)、メル・ルイス(ドラムス)、マーティー・ペイチ(ピアノ・編曲)らで、バンドは12人編成です。

いずれの曲も音の強弱や多彩な音色をうまく使った編曲が施されています。ペッパーがのびやかなプレイをしている「I've Never Been in Love Before」が爽快。「I Love Paris」では楽器の音色が注目されますし、「Just in Time」ではスイング感とともに各人のソロが聴き物です。最近紙ジャケットによるCDが発売されました。