家訓は「遊」

幸せの瞬間を見逃さない今昔事件簿

技術のない歯科医

2010-03-07 08:21:31 | Weblog
このタイトルを読んで数人の友人たちがドキッとしたことと思う。

それを想像して笑いながら書き込む。

夕食を終えて爪楊枝で食後の満足を体感していた。

「あれ?」

あわてて次の爪楊枝で探った。

どうも爪楊枝の先端が折れてしまったらしい。

次の爪楊枝で奥に押し出そうとしたら、それ故に、先端が歯茎に刺さったようだ。

歯が無理やり押し広げられているような感覚だ。

100円ショップで購入した「のびーるミラー」を持ってきて洗面所の鏡で見てみた。

「あった」

爪楊枝の先端が見えた。

妻に事の次第を告げて「取って」と頼んだ。

即席歯科医の誕生だ。

椅子に座り口を開けて、これまた100ショップで購入したLED懐中電灯で口中を照らす。

先生の左手は私の頭を抱え右手に毛抜きを持って口の中をのぞきこむ。

「とれるかなぁ?」

不安になっているのは先生。

「痛くてもいいからやって」と患者。

毛抜きで爪楊枝の先端を取ろうとする。

だがうまく見えない上に血が出てきて余計に見えなくなる。

ほんの少し取れたような感じがありティッシュに出してみせる。

「これで取れたでしょ?」

だが一向に押し広げられている感覚はなくならない。

洗面所に行って合わせ鏡で見てみる。

「あるよ。やっぱり。こう刺さっているからこちら側から裏側に向けて押し出さないとだめじゃない?」

先生に患者がやり方を教える。

先生はしきりと痛みを気にする。

「まったく痛くないから!」半ば腹立たしくイラついた。

毛抜きを止めて裁縫道具の先端のとがった物で歯の付け根辺りを探った。

「抜けた」

軽くなった感覚が歯茎というより顔を弛緩させた。

唾液で口の中をジクジクやると1ミリほどの爪楊枝の先端が出てきた。

血の色を拭うと水分で膨らんだであろう先端がティッシュに残った。

「ありがとね」  無料だった。