家訓は「遊」

幸せの瞬間を見逃さない今昔事件簿

一周忌のツーリング

2011-11-14 09:43:39 | Weblog
中さんが逝って丁度一年が過ぎた。

私は彼と一緒に一泊の旅に出た。

まずはHillman’sでランチ。

店主は合掌してから料理を作った。

赤石温泉という秘湯の宿に到着して間もなく夕食までの間に露天風呂に入った。

薄暗い夕暮れ時涼しい風に吹かれてあったまる。

横に流れる川の少し上流に堰堤があり、そこから流れ落ちる水の音が心地よい。

紅葉の始まっているもの、いまだに青々としているもの、既に落葉してしまったもの。

それぞれに輝く。

歩きにくいサンダルで凸凹道を歩いて旅館に戻る。

立て付けの悪いふすまをガタガタと途中まで開けて運び込まれた夕食。

これまた盛り付けをやり直したくなるような皿に乗せられた山の幸。

みすぼらしくても心は最高に喜んでいる。

4人で夕食を食べ始める前に中さんの名前を出し一緒に乾杯に加えてもらった。

中さんは、いつも「ブレーキを踏む回数が少ないね」と私の運転を評した。

今日も同じような運転の癖を出していたに違いない。

増穂の市街地を過ぎると適度な山道になり飛ばせるところもある。

道路工事があったり対向車とのすれ違いがあって、なかなか思い通りにはゆかないがけっこう楽しめた。

ビールを飲み干しワインを飲んで語る友人との会話は珠玉の時間だ。

部屋にトイレがあろうハズもなく増築を繰り返したであろう旅館のクネクネと繋がる廊下を段差に気をつけながらトイレに向かう。

寒々しいトイレで用を足してそれぞれの部屋の前に脱ぎ捨てられたスリッパを踏まないようにして歩いた。

不便である事が秘湯に来ていることの楽しみを増すような気になった。

こうして一周忌を過ごした私はシアワセに床についた。

中さんのイビキで起こされることがなかったことは彼がいなくなって、たった一つの喜ばしいことだと分かった。