宮崎さんが信長のように高ころびするだろうと予測しているイーロン・マスクの軌跡を書いた本が出たようです。
宮崎さんが書評で取り上げてくれています。果たして、イーロン・マスクとは何者というか本物なのでしょうか。
「宮崎正弘の国際情勢解題」より 令和三年(2021)7月8日(木曜日)
通巻第6978号
書評
猿がAIでゲームを展開し、いずれ人間はAIサイボーグになる?
EV、宇宙開発、太陽光発電で新ビジネスを牽引してきたビッグ・マウス
浜田和幸『イーロン・マスク、次の標的』(祥伝社新書)
IOBが次世代のキーワードだそうな。IOBとは何かは、本書がやさしく解説している。つまり人はAIを搭載してサイボー クとなる。それは幸せなのか、不幸なのか、神の摂理に反するが、倫理はどうなるのかという命題は本書では議論されない。
プーチン露大統領と世界的な有名人で「虚業家的起業家」のイーロン・マスクは気が合うらしい。
「とても」馬が合うと、本書でも浜田氏が指摘する。共通する要素は「柔道」と「道場」。マスクはこれに「切腹」を加え、日本 のサブカルに理解があるという。
プーチンとマスクが柔道で鍛えた理由は、ふたりとも小柄で「いじめられっ子」だったからだ。
陰湿な苛めを克服するには、相手より強くなればよい、太古の昔より人類の鉄則である。
さるにても、プーチンとマスクは世界観を共有しており、それは「AIが第三次世界大戦の引き金を引く怖れがある」というもの だ。
「AIは核兵器より危険だ」とプーチンは警告するが、そんなことは自明の理であり、だから米国は「宇宙軍」を創設したのだ。
マスクは北朝鮮の核兵器はまったく気にせず「金正恩は低脳児だ」と言って憚らない。この点はトランプと異なる。
イーロン・マスクは南アフリカ生まれで、母親がカナダ籍だったので、とりあえずカナダへ移動して苦学、小金を貯めてアメリカ へわたり、起業した。
それがすべて当たってわけではなく、失敗ばかりだが、マスクには強運がついて廻った。その具体的プロセスは本書に詳しい。
マスクは周囲の批判を気にしない猪突猛進型だが、独善的であり、独裁且つ独断を好む。この点ではドナルド・トランプとも、 共鳴しあうのだ。
事実、トランプは一時期マスクを気に入り、中国に圧力を加えていた貿易戦争の過程で、中国政府にテスラの中国進出に百パー セントの現地邦人を認めさせた。
中国の自動車産業は51%が中国、49%が外国資本の合弁形態と決まっていたから、破天荒の扱いだった。優遇をえたうえ、上 海の一等地を譲り受け、EVを製造販売、実績に20万台を中国で販売した。
ところがテスラのEVは事故が多く、中国は昨今、テスラの購買を禁止した。となると変わり身の早いマスクは、インド進出に 目を付けた。
じつにドライである。
いやはやスーパードライで、乾燥しきった心情と行動は、あらゆる方面で敵をつくる。日本で言えば、ほりえもん、孫正義、三木 谷などに似ている。
トランプとは喧嘩別れ、ビル・ゲーツとも大げんか、世論も毀誉褒貶で二分している。
さて本書で浜田氏は断言していないが、評者(宮崎)は、マスクを詐欺的要素の強い、破天荒の起業プランナーと認識してお り、「信長のように高転びに転ぶ」と予想している。
ともかく本書はマスクの人となり、その人生の軌跡を紹介する珍しい書物である。
トランプさんとも喧嘩別れしてしまったとは残念ですね。ところで、この書評への反論を読者の声で宮崎さんが取り上げてくれています。
「宮崎正弘の国際情勢解題」より 令和三年(2021)7月9日(金曜日)
通巻第6979号
(読者の声2)
前号コメントで「評者(宮崎)は、(テスラのイーロン)マスクを詐欺的要素の強い、破天荒の起業プランナーと認識しており、「信長のように高転びに転ぶ」と予想している」と。
聞き捨てならぬ宮崎氏のご意見。全ての起業家は必ず「詐欺師的」な発言をしなければ、何も始まらない。
無から有を産むには、かなりの無理が必要。近年の資産家の特徴は、「電子、デジタル、架空の世界、デザイン、金融」で財をなす者が殆どで、かつての石
油・鉱山、などの資源、重工業、物作り、で活躍する者は殆どいない。そんな中で、ただ一人、マスク氏は「ものづくり」に専念している。かつて本田宗一郎
氏は現場の工場で工員と「機械油、汗と血」にまみれた努力を「私の手が語る」で左手の傷の由来を語っておられた。マスク氏も同様に、工場に泊まり込み、工員と共に製造に関わっている。氏によると、物作りとはデジタル製品の数十倍もの努力が必要だ、とその困難さを指摘されている。だから米国の殆どの企業は、そんな難しいことを支那、朝鮮に下請委託した。それを日本の怠惰な雇われ経営者も真似てしまった。
資産家の多くは、巨大な住宅を世界中で買い込み、個人のジェットや船で「富を楽しむ」が、マスク氏は最近不動産資産を売り払い、ロケット開発現場の小さな貧しい家で生活している。毎日18時間勤務では、遊んでいる暇はない。IT起業家には極めて珍しく、トランプ氏を公に支持していた。それは村八分を意味する。子供六人を自分で家庭学習している。日本と同様に学校に任せていては洗脳される、と。
とにかく、確乎たる目標と稀有なる努力家であり、「詐欺師」でもなく、「転んで」もらいたくない人材と評価する米国人が多く、テスラ車は宣伝費を未だかつて1ドルも使っていない。
全て客の評価と口コミ。新型トラックは発売前の予約が既に100万台を超えた。現物を見たことも乗ったこともない車に、である。
(KM生)
これが本当なら素晴らしい人のようです。もう一度、トランプさんと一緒に世界を変えて貰いたいものです。
さて、実際はどうなのか。