ウクライナ戦争で只でさえ混沌とした世界に、今度はパキスタンの大統領交代などますます混沌の種が増えたようです。一体世界はどうなるのでしょうか。
宮崎さんがサウジアラビアの信用供与を解説してくれています。これがChinaにどんな影響を及ぼすのか。Chinaの崩壊に繋がることを期待したいものです。
「宮崎正弘の国際情勢解題」より 令和四年(2022)5月2日(月曜日) 通巻第7318号
破産寸前のパキスタン。サウジアラビアが80億ドルの信用供与
出稼ぎは270万、送金額は320億ドル
パキスタンからの出稼ぎで経済を支えているのがサウジアラビア、ドバイ、アブダビなどの湾岸産油国。サウジだけでも、 270万人のパキスタン人が出稼ぎで来ている。
筆者はサウジには行ったことはないが、イラク、カタール、ドバイ、アブダビなどで夥しいパキスタン労働者を目撃した。空港ロ ビイに集団でたむろし、飛行機の空席をひたすら待っていた。出稼ぎの仕送りは年に320億ドルになるという。
イムラン・カーン首相退陣の後、新首相になったシャリフは、真っ先にサウジへ『挨拶』に行った(4月28日~30日)。日 本の首相が交代するたびに米国へ挨拶にいくようなもので「外交儀式」でもある。パキスタンの保護者だからだ。
帰路に一行はアブダビにも立ち寄って、同様な負債期限延長を要請した。
サウジアラビアは一貫してパキスタンを支援してきた。世界一のモスクをイスラマバードに建築して寄付した。その名も『ファ イサル・モスク』(サウジ国王の名前である。1993年まで世界一だった)。
サウジはカラチに製油所をもつが、中国の一帯一路プロジェクトがカラチへ重心を移行したため、この製油所の規模を二倍とす る。追加で12億ドルを投資するという。
シャリフ一行40名。第一の目的は償還期限がくる負債のジャンプで信用枠を60億ドルから80億ドルへ増額が認められた。
パキスタンの経常収支は悪化しており、105億ドルあった外貨準備は60億ドルに激減、これによりインフレが12・7%、パ キスタン・ルピーは通貨安となって、九月には外貨準備が枯渇する。
カーン前首相は北京にも支援を要請するために訪問したが、中国は『できる限りのことはする』とし、結局、追加支出をしな かった。
そればかりかイランとの国境に近い南西部のグアダール港近代化プロジェクトを中断し、一帯一路の拠点をカラチに移行した。中 国人労働者、エンジニア、中国語教師等が拉致、誘拐、殺人の脅威にさらされ、パキスタン警察の警備に不満を漏らしてきた。工 事現場では中国から派遣されたガードマンが警備に当たった。
43年の租借契約を結び、グアダール港と周辺に大規模なコンテナヤード、倉庫、工業団地、高層ビル、大学にくわえて空港も建 設の途についていた。その途端、カラチ大学の孔子学院で自爆テロ。
▲中国はパキスタンを見放したのか?
中国はCPEC(中国パキスタン経済回廊)を推進し、620億ドルをつぎ込んできた(最近の統計では650億ドルに達す る)が、工事はテロによって各地で寸断され、くわえてパキスタン政府高官らの汚職。その温床がシャリフ首相、その夫人だった のがブッド元首相。そしてシャリフの兄も首相で、このシャリフ~ブッド・ファミリーが経済構造の腐食部分であり国民の怨嗟の 的である。
議会解散による総選挙をカーン前首相が意図していたが、最高裁が解散を認めず、退陣を余儀なくされた。パキスタン経済の過 度なサウジと中国への依存度から脱却し、バランスをとるために、2月24日、カーン前首相はモスクワを訪問し、プーチン大統 領と会見した。ガスパイプラインをロシアからパキスタンへ敷設するプロジェクトが決まりかけていた。
ところが、その日、ロシアはウクライナへ侵攻したため、これが裏目に出てカーン首相退陣に追い込まれた。しかしカーンは根 強い人気があり、支持者は納得しておらず、5月29日に最大のデモ行進を計画している。
さてIMFの査察チームは5月10日にイスラマバード入りする。
直前に財政立て直し案ならびにIMFが要求している補助金廃止など。IMFはGDP成長4%を要請している。
IMFは三月に「コロナ禍にもかかわらず、パキスタン経済は順調な伸びを示している」とし、追加10億ドル融資をきめたばか りだった。
やはり、プーチンの今回のウクライナ戦争は何とも次期が悪かったようです。何を読み違ったのでしょうか。
手術の噂もあるようですがどこまで本当かは分かりません。世界を混乱に落とし込んだ責任を取ることになるのかも。
さて、世界は来年を迎えることが出来るのでしょうか。