久し振りに宮崎さんがChinaの現状の酷さを書いてくれています。何でChinaが崩壊しないのかと疑問を持っているのは宮崎さんじゃないでしょうか。
これも、独裁の強みもあるでしょうが、未だにChinaに資金を投入する金融・産業界などの金の亡者共が多いということでしょう。
「宮崎正弘の国際情勢解題」より 令和四年(2022)5月16日(月曜日)弐 通巻第7335号
中国大都市ロックダウン続き、サプライチェーンはズタズタ
22年度GDP成長は3・9%と親中派の野村證券、IMFは4・3%
有力シンクタンクの中国経済予測が出そろった。
全人代において李克強首相の掲げたGDP成長目標は5・5%だった。親中路線の野村證券が3・9%と最低、UBSが 4.2%,ゴールドマンサックスは4.3%、そしてIMFは4・4%と、いずれも中国の公式目標より低い。
第一はロシアのウクライナ侵攻で西側のロシア経済制裁がじわり、中国に悪影響を及ぼし、ここに原油高、穀物高騰が加わる。 ましてや米国の制裁が継続していて、経済は下降速度を増した。
食品は8%程度の値上がりとなっている。
第二に武漢肺炎の変異株が猛威を振るい、深セン、上海メガロポリス、西安、武漢、東北三省(とりわけ吉林省)の諸都市が ロックダウンされた。
上海メガロポリスだけでも2500万人が不自由な生活を強いられ、六週間に亘るロックダウンは習近平への不満の声となって 静かに市民の胸底に体積した。
流通、商業活動が止まり、食糧不足、係官の横暴、工場休業となって道路はがら空き、逆に上海港などで沖合待ち一ヶ月以上。 対米輸出航路は平均で74日間の遅れを出している。港湾労働者も不足し、膨大なコンテナの処理が円滑にいかない。上海および 無錫、杭州、蘇州などで外国企業の工場閉鎖は七割近く、生産、販売が劇的に落ち込んでいる。
あまつさえ吉林省と国境を接する北朝鮮で発熱が一晩に17万人とか、四月末から五月半ばまで52万人がいきなり感染し、死者 もうなぎ登り、中国製のワクチンは効き目がなく、中国東北地方の経済回復は望み薄となった。
第三がサプライチェーン中断により、部品も調達できず、操業を再開しても、労働者は工場宿泊となるため出社率が悪い。生産 ラインが止まったままである。テスラもトヨタもライン再開はかけ声だけ。
もっとも深刻な影響は95%のスマホを中国で生産するアップルで、納期遅れが2ヶ月。
アップルは上海、昆山、鄭州、成都、重慶、深センにiPhone工場があり、およそ95%が中国生産だ。それも委託生産して いるのは鵬海精密工業(FOXCON)、ペガトロン、広達(グアンダ)電脳、コンパルなどである。とくにグアンダは、六月前 までの生産再開は絶望視されている。
上海都市封鎖は外国企業に深刻な影響だが、中国企業とて例外ではなく、鳴り物入りだった半導体自制のSMIC(中芯国際集成 電路)は納品遅れ、工場の拡張どころで名なくなった。
GAFAMの時価総額は25%の大暴落、世界の株式市場からGAFAMの時価総額360兆円が蒸発した(21年末の10兆ド ルから22年5月11日は7・4兆ドルに)。アップルは世界株式時価総額トップをアラムコに譲ることとなった。小誌が予測し てきたように「さようなら、GAFAM」の季節がやってきた。
四月の人民元建ての銀行貸し出しは17兆円台に留まって、じつに72%減。資金需要も消えたのである。
▲ピョートル大帝を尊敬するプーチンと永楽帝をめざす習近平と
こうした逆境のなかで気を吐くのが中露貿易だ。
制裁に加わらないばかりかロシア支援を強める中国は石油とガスをロシアから安く買いたたき、パイプライン加えて、トラックと 鉄道輸送。また食品や機械、雑貨をロシアへ輸出している。船舶が利用できなくてもユーラシアを横断する陸のシルクロード= 「鉄道」輸送が強みを発揮しており、「コンテナ鉄道」は重慶から2011年にドイツへと開通以来、武漢、成都、鄭州、西安か ら欧州23ケ国をつなぐ。大半がモスクワ経由である。
積み荷は食品、衣料品、医薬品、自動車部品、雑貨などとされるがコンテナに武器を積み込みロシア支援に活用しているようで ある。
とくに機関銃や弾丸、戦車、自走砲の部品などは偵察衛星の監査から漏れる。
プーチンはピョートル大帝とエカテリーナ女帝の再来を夢想するナショナリズムの強烈な帝国主義を目ざす。プーチンはスター リン、レーニンを問題視していない。
一方、習近平は毛沢東に憧れ、中華民族の夢を豪語してやまないが、それは明の永楽帝が築いた最大版図の回復を実現することで あり、台湾ばかりか、尖閣諸島奪取という途方もない野心を研いでいる。
これまで中国はソ連時代からロシアを『兄貴分』としてきたが、ウクライナ情勢で立場を逆転させた。ロシアは弟分、中国が兄貴 分で兄弟の杯は、やり直しとなるだろう。
ロシアのGDPは中国の十分の一以下であり、ロシアが誇った武器、宇宙船なども中国が技術をもぎ取った。
だがしかしプーチンは面子にかけても決して習近平の風下に立つことはない。したがって中国台頭への心理的反作用はますます欧 米への挑発行為をエスカレートさせる危険性がある。
苛立ちとストレスはすでにプーチンの表情からも読み折れるほどにロシアは反動バネで、より挑発的な姿勢に傾きかねないのであ る。
やはり今年の世界はプーチンと習皇帝に掛かっているようです。このウシハクの代表と言える二人の独裁者を放置している世界の覚悟の無さこそが問題なのじゃないでしょうか。
それを許しているのも金の亡者達と言えば単純過ぎるでしょうか。