明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



さっさと仕事を片付けて、遊ぶ時間を作るもんだと、某デザイナーによく言われるのだが、私はなかなかそうはいかない。時間の使い方が下手といえばそうなのだが、あとちょっと手を加えれば良くなるかもしれない、という欲が棄てきれず、時間を一杯に使うのが常である。本日も朝から荷風の座るイグサ製の小さな畳をいかに汚すか考えていた。紅茶で煮ようと思ったが、事故の元という気がするし、搬入当日にする作業ではない。結局、染料系の水性塗料で汚しを入れていった。畳の佃煮にならないよう、裏側の青々とした部分と比較しながら作業をした。おかげでたいしたヤケ具合に。 気になる部分もあったが、とりあえず搬入しようと木場からタクシーに乗る。居眠りしたらしく、あっという間に芦花公園。会場に行くと、『断腸亭日乗』などをスタッフと点検中の永井永光さん。市川の荷風展以来ご挨拶する。永光さんの、荷風の遺品保存に対する姿勢には頭が下がる。おかげで原稿その他、生前と変わらず目にすることができるわけである。 火を使いたかったので、女性ばかりの職員室の奥にある台所に行き、畳に焼け焦げを作る作業。以前は得意だった作業である。中央公論アダージョの手塚治虫のジェット噴射の炎を撮影した蝋燭、線香などを使って焦がす。イグサと線香の混ざった妙な匂い。私はこんなところで一体何をやっているのであろうか。 荷風の遺品など眺めながら展示する。ちょっと足りないものがあった。

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