明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 

一日  


アダージョ9号の『三島由紀夫と馬込を歩く』は今制作中の作品と並んで難題であった。なにしろ馬込の三島邸付近を歩いても、住宅と商店街があるばかりで、三島を配して画になるところなど何処にもない。そんなとき、山本スポーツアカデミーが開設されたニュースを思い出したのであった。この作品は現役の格闘家、山本キッド選手の存在感が画面に化学変化をもたらしてくれるに違いないと期待し、そのとおりになった。憂○忌運営団体がメルマガで読者プレゼントにしていたのも驚いた。 配布中に、キッド選手の復帰戦があることも私の念頭にはあり、絶好のタイミングだと思ったが、残念ながら直前の怪我で参戦はならなかった。そして26日『DREAM9』で、待望の復帰戦が行われる。是非ともフェザー級最強を証明していってもらいたい。ささやかながらエールを送りたいと、1カットプリントする。
某文学館から秋に人形と写真の展示依頼が来る。こちらには1体展示したことがあり、レセプションで安岡章太郎と並んで写真を撮ってもらったのを覚えている。 拙著『Objectglass12』に書いたことだが、現在は芦屋の谷崎記念館で催される残月祭は、以前は京都の渡辺千萬子さんが経営される喫茶店で催されていた。『瘋癲老人日記』の颯子のモデルといわれる渡辺千萬子さんに、撮影のために持ってきていた人形を、お見せしたらと勧めたのが、この某文学館学芸員であった。概して女性の関係者は点が厳しいのを知っているので、私が渋ると、せっかく京都まで来たのだからという。お見せすると「あら、似てないわね」。そのセリフにツンとくる私も立派にマゾヒストの素養があるようだが、まさに作中の颯子そのものが抜け出たようで、貴重な“文学体験”と感じた私であった。谷崎が自ら老人役になり『瘋癲老人日記』を朗読した録音を聞いた事があるが、颯子役は淡路恵子で、この役ばかりは、大映映画における若尾文子ファンの私も、淡路恵子に軍配を上げたのであった。

01/07~06/10の雑記
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