三島由紀夫のオマージュ『男の死』の中、『潮騒または真夏の死』の制作で、海女の画像を随分作った。テーマがテーマであるから、半裸の海女は殺伐感を和らげてくれた。海女の装束は市販されているものではないようで、鳥羽の友人がかつて実際使用されていた物を探し出してくれた。そのとき使用せずに終わったカットがかなり残っている。舞台は南房総である。遠景でかまわないが、その海女を使いたくてしかたがない。そもそも私自身がロシアの文豪から河童の制作で、連休中にもかかわらず、殺伐とはいわないまでも艶はまったくないので、つい考えてしまうのである。しかしいくら考えても結論は同じ。この河童が問題である。着物姿の裾からチラリと見えるふくらはぎにヨロッとくる河童。そして娘の尻を触ろうとして、結果ケガをする。そう考えると、河童は濡れて身体に海女着が張り付いた海女のほうに目がいってしまうだろう。それは近所に住む先日63歳になった河童に聞いてみるまでもないことである。 やはり河童の目の届く場所に配するわけにはいかない。となると、漁師の若者との海辺のシーンなら可能であり、本日試作してみたが、紙面にそのカットをねじ込むスペースはすでになかった。 江戸川乱歩の『盲獣』には海女が惨殺されるシーンがある。私の初出版の『乱歩 夜の夢こそまこと』はすでに廃版であるが、今見ると稚拙に感じる。そのわざとらしさが乱歩に合っていた気もするが、今でも作りたいのを我慢している乱歩であるから、いずれ海女の出番もあるだろう。
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