灯ともしの翁と、ひれ伏して向かい合う河童の三郎。自分の腕を折った人間どもに復讐して欲しい、と願い出る。岩波だったかの解説では、翁の膝に三郎がすがりつく、というような解釈をしていたが、人間に対しては自分勝手な怒りをぶつけるが、こと異界においては姫神に失礼だ、と案山子の着物を剥いで着て、空を飛べるのにヨロヨロ石段を上がってくるほど礼儀正しい。それにびしょ濡れであるし、もともとベトベトと生臭い三郎である。自己紹介もまだだというのに、いきなり翁に取りすがるはずがない。ひたすらひれ伏す三郎を作る。 左腕は肩から折れて“ぐなり”と削げてしまっている。鏡花は詳細に書いてはいないが、折れた左腕は肩から後ろに折れ曲がり、あさっての方を向いてしまっていることにした。ヒドイ状態である。右腕だけでは身体を支えるのも大変で、身体が傾いてしまいながら翁を見上げている。自分で作っていて哀れである。さらにダブダブでぐしょ濡れのボロをまとわせればさらに哀れさが強調されるであろう。しかしこの三郎、何が哀れといって怪我は娘の尻を触ろうとした結果であり、翁にも、お前等一族は昔から皆そうして怪我をすると苦言を呈される。学習能力が欠如している河童一族である。 近所のやはり学習能力欠如の63歳から、例によって朝から飲んでしまいロレツの回らない電話が来た。 酔っぱらって頭から血をしたたらせ、半ベソかいているところを哀れな三郎のイメージに取り入れさせてもらっている。 私はいつか書いた。この人物、私に河童を造らせるためモデルにせよ、と舞い降りた妖精なのではないか?と。そしてこうも書いた。もう取材は十分なのでとっととお帰り下さいと。しかし妖精界へ帰りもせず、くたばりもせず、ただ私をウンザリさせ続けている。結局その後、飲み屋からつまみ出されたそうである。
過去の雑記
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